南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第19回「野球の練習に、長距離走って必要なの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.他に方法があるかどうか
  • 2.どんな練習も、自分のチームの実態に合わなきゃ意味がない!
  • 3.野球の実力は”目に見えるモノ”だけじゃない!!
  • 4.イガラシから、読者の皆様への問いかけ
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今回は、野球の練習に関してよく言われる疑問に、ぼくなりの解釈を話すことにします。ちょっと難しい話かもしれませんが、結構大事な話だと思いますので、是非とも最後まで聞いて下さい。

 

 ということで、今回のテーマは……

野球の練習に、長距離走って必要なの!?

 

 

1.他に方法があるかどうか

 

 先に、ぼくの答えを言いますね。ぼく自身はやる必要がないのなら、別にやらなくていいと思っています。

 

 意外ですか? でも、ぼくは目的を先に考えるので。墨二中のキャプテンだった時も、長距離走が必要だと思ったから取り入れてただけで、必要ないと思えばメニューから外してましたよ。

 

 あ、そうそう。念のために聞いておきたいんスけど、この質問をしてきてる人達って、ぼくら墨高野球部と同じ“真剣に甲子園出場を目指している”か、それでなくても上位進出を目標にしてるチームなんですよね?

 

 まさかと思いますが、“初戦突破”とか“せめて九回までもたせたい”とか目標の低すぎる連中だとしたら、「どうぞご勝手に」とテキトーにあしらいますよ。

 目標が低すぎる、つまり真剣に試合で勝つ気がないんじゃ、どんな練習をしようが意味がないじゃありませんか。そんな連中は、最初から問題外ですよ。

 

 で……ぼくらと同程度かそれ以上の目標を持っているチームだと仮定するとですね。

 長距離走には、色々な意味があるんスよ。練習最初のウォーミングアップだったり、精神力の強化だったり、練習終わりのクールダウンだったり。

 

 これって野球に限らず、どんなスポーツでも必要でしょう?

 

 

2.どんな練習も、自分のチームの実態に合わなきゃ意味がない!

 

 ちなみに、野球には長距離走が必要ないっていう意見には、こんな理由があります。

 

・野球はバッティング時のベースランニング以外、自分の所に打球が飛んでこない限り、ほぼ動かない。

・野球には長距離走よりも“ダッシュ短距離走”が重要である。

 

 あのですね、どちらも「正解」だと思いますよ――炎天下の中で、体力も暑さに耐える忍耐力も身につけていないのに、必要な動きができるならね!

 

 でもね。ぼくら、ロボットじゃないんスよ(苦笑)。炎天下で強敵と戦うプレッシャーに晒される中じゃ、日々のトレーニングの積み重ねがないと、いざって時に動けません。

 

 あ……でもぼく、毎日の練習でランニング(長距離走)をメニューに入れないっていう強豪校の話、聞いたことありますよ。

 

 といっても、その学校はランニングを省くかわりに、ウォーミングアップを一時間以上かけて行うそうです。なんでも監督さんの方針で、アップの段階から実践の動き――例えば背走や斜めの動き等――を取り入れているんだとか。

 

 もっともこの動き、ある程度体を温めておかないと、キツそうですよね。なので……簡単なストレッチとかランニングは、自分でやれと言われるそうですよ(笑)。

 

 話を聞いて、率直にスゴイなあと思いますけど。でも同じことが、果たして墨高や墨二中の野球部でできるでしょうかね(汗)。

 

 ま、できるならやっても良いかもしれませんけど……うちのレベルじゃ、その前にちゃんとランニングをした方が無難じゃありませんか。残念ながら、自分でウォーミングアップを完ぺきにできるには、まだまだ程遠いでしょう。

 

 ただ……そうは言っても、ぼくも今の墨高の練習メニューが「絶対正しい」とは思ってませんよ。三年生が引退すればメンバーも入れ替わるし、チームのレベルも変わってきます。それに合わせて、最適な練習法・練習メニューを考えていくしかないと思いますよ。

 

 

3.野球の実力は”目に見えるモノ”だけじゃない!!

 

 ああ、そうだ。さっきの実践の話と絡むんですけど……野球の実戦で長距離走はないから、やっぱり練習に必要ないんじゃないかって意見も結構聞かれます。

 

 でもね、ぼく思うんです。野球の実力って、目に見えるモノだけじゃないんですよ。

 

 よく心・技・体って言いますよね。この三つのうち、「技」……技術は目に見えやすいんスけど。試合のレベルが上がったり、厳しい展開になったりすればするほど、残りの「心」と「体」(体力)が大きく左右するんですよ。

 

 みなさんも高校野球の試合、特に地方予選を見ていて、思うことありません?

 チカラは甲子園常連校とそう引けを取らないのに、なかなか“ここ一番”で勝てないチーム。そういうチームって、ちょくちょく大事な場面でミスをして、それが原因で試合を落としたりしますよね。

 

 ぼくはこれ、さっき言った「心」と「体」がかなり関係してると思うんですよ。

 

 そうですね……例えば、二点リードの終盤。ノーアウト一・三塁のピンチでセカンド正面のゴロ。バックホームするか、ダブルプレーをねらうか、1点やっても一塁か二塁で確実にアウトをもらうか、結構迷う場面ですよね。

 こういう時、しっかりと状況を見極めて適切なプレーができるのは、やはり「心・技・体」の三拍子が揃ってないと、難しいじゃありませんか。

 

 

4.イガラシから、読者の皆様への問いかけ

 

 最後に――今回はぼくから、みなさんにお聞きしたいことがあります。

 

 知ってのとおり、ぼくら墨高(墨二中)は、けっして野球の名門校と呼ばれる学校じゃありません。それでも“打倒・谷原(やはら)”と“甲子園出場”という目標を掲げて、日々の練習に打ち込んでいます。

 

 ただ、やっぱり格上のチームに勝とうとすれば、傍から見れば目を背けたくなるような厳しい練習、過酷な特訓を自分達に課さなければならない時もあります。また、野球専門のコーチもいないので、時に理に適わないこともやってしまうかもしれません。

 

 でも、それって……オカシイことなのでしょうか? さほど勝ち負けにこだわらず、常識の範囲内で“フツーの部活”をやり通すべきなのでしょうか

 

 読者のみなさんは、どう思われますか?

 

 

 

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イガラシくんの野球講座<第18回「イガラシくんが注目する、他作品のキャラクターたち【前編】」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.両親の死、利き腕の故障……様々な試練を乗り越えた“不屈のサウスポー”
  • 2.厳しさと優しさを兼ね備えた“理想的な指導者”
  • 3.野球をするのは「最高のボールを投げるため」と言い切る、孤高の天才投手!
  • <次回予告>
  •  【関連リンク】

 

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※本エントリーは、ちばあきお「キャプテン」「プレイボール」連載時の時系列をまったく無視しております。あらかじめ、ご了承ください。

 

<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 日本のプロ野球、そして海を越えてメジャーリーグでは、オールスター戦が盛り上がっていますね。それにあやかって……というわけでもないのですが、この講座でもちょっとお祭り的な企画をやってみたいと思います。

 

 というわけで、今回のテーマは……

イガラシくんが注目する、他作品のキャラクターたち【前編】

 

(注:筆者自身、それほど多くの野球を題材にした作品を知っているわけではないので、選に偏りもあるかと思いますが、ご容赦ください。)

 

 

1.両親の死、利き腕の故障……様々な試練を乗り越えた“不屈のサウスポー”

 

 一人目は、『MAJOR』満田拓也作)の主人公・茂野(本田)吾郎です。

 

 彼の何が凄いかって、その不屈の闘志ですよね。ぼくもケガは繰り返しましたが、さすがに利き腕が使えなくなるほどの重傷は、経験したことがありません。普通なら、その時点で野球を諦めても不思議じゃないですよ。

 でもそこで挫けることなく、サウスポーに転向。その上ジャイロボールなんて凄まじい威力の速球を生み出し、強豪・海堂高校と激闘を繰り広げた末、海を渡ってメジャーにも挑戦。

 

 ほんとに……こうして記述するだけでも、改めて凄い男ですよね。人並外れたバイタリティと闘争心、何より逆境に負けない不屈の心がなければ、あのような生き方はできないと思います。

 

 えっ、ぼくと対決したらどうなるかって? 打ち砕いてやるに決まってるじゃありませんか(笑)。彼の生き様は称賛するにしても、打席での勝負は別ですから!

 

 

2.厳しさと優しさを兼ね備えた“理想的な指導者”

 

 二人目は、同じくMAJORより、横浜リトル監督の樫本修一です。

 作中では厳しさと優しさを兼ね備えた理想的な指導者として描かれていますが、ぼくはとにかく、主人公側のチーム・三船リトルと戦った時の、樫本監督の言葉が、とにかく印象に残ってるんですよ。

 

 まず初回にカーブを多投して大量失点した先発投手には、「なんだあの幼稚なピッチングは。おれは全力で叩きのめせと言ったはずだが」と痛烈な一言。

 

 格下チームに打たれたから、じゃないんです。カーブを捉えられていると分かって、それでも余計なプライドでカーブを多投したからこその叱責。キツイ言い方ですが、きちんと理に適った“指導”です。

 ま……ぼくなら、ベンチに引っ込めるだけじゃ済まないでしょうけどね(ボソッ)。

 

 さらに最終回(六回裏)、まさかの同点打を浴びたことを完全な俺の采配ミスだ。申し訳ないと、選手達に素直に詫びてましたよね。あれ、カンタンにできることじゃないんですよ。やっぱり自分のメンツとか考えちゃいますから。

 

 またそれに対して、選手達も「いいんですよ、すんだことは」「監督が弱気になってどうするんですか」と、逆に樫本監督を励ましてましたよね。何気ないですけど、日頃の信頼関係が伺えるシーンでした。

 

 そして何より忘れられないのが、敗戦後の帰りのバスのシーンです。

 格下と目されていた相手にまさかの敗戦を喫し、ショックでうなだれる選手達に、次の言葉を掛けるんですよ。

 ここはもう、ぼくの感想を挟むのも野暮な気がするので、そのまま載せておきます。

 

―― いい試合だったな。よかったよ。最高のゲームを見せてもらった。

 恥じるな、胸をはれ! 今日の悔しさを忘れず、明日からまたがんばろうぜ!!

 

 

3.野球をするのは「最高のボールを投げるため」と言い切る、孤高の天才投手!

 

 三人目は、児童小説バッテリーあさのあつこ作)の主人公・原田巧(はらだたくみ)。学年は、ぼくが『キャプテン』に初登場した時と同じ中学一年生です。

 ピッチャーとしては、ものすごい才能を持ってます。なにせ真っすぐだけで、強豪野球部への進学が内定している二つ上のスラッガーを、三振に仕留めるほどの実力ですから。

 

 ただまあ、ぼくが言うのもなんですが、けっこうクセのある性格で(笑)。野球部のルールである丸坊主を拒否したり、顧問の先生に「全国制覇の監督にしてやる」とか大口を叩いたり。

 

 いやほんと、ぼくもよく“生意気”だの“血も涙もない”だのって色々言われてきましたが、さすがに彼ほどの自己主張はしたことありませんよ。だってぼく、墨二中野球部に入部した頃、ブツクサ言いながらも、ちゃんと草むしりやバット磨きをしてたでしょう(笑)。

 

 えっ、けっきょく似た者同士だろうって?

 ま……それは否定しませんがね(笑)。ただ、原田とぼくとでは、性格は多少似通ってたとしても、決定的にベクトルがちがってるんですよ。

 

 みなさんも知ってのとおり、ぼくは「チームが勝つこと」を最優先に考えます。

 一方、この原田は「(自分が)最高のタマを投げること」が大事……というか、それしか考えてないようですね。

 

 もちろん原田とて、負けることはイヤなようですが、彼の場合は「自分が最高のタマを投げさえすれば負けはしない」と思ってるようです。確かにピッチャーが点をやらなければ、負けはないわけですから、その通りなんですが……しかしスゴイ自負ですね。

 

 ただ思えば、あの近藤も原田ほどではないにしても、チームの勝ちより自分の投げたいタマを投げることを優先しがちでしたよね。井口も……あの決勝戦で、点差を広げられるリスクを承知で、最後はぼくとの勝負を選びましたし。

 

 そんな原田達の気持ち……ぼくにはちょっと、理解しがたい部分があります。

 

 ぼくも小中とピッチャーをしてましたけど、極端な話、自分がノーヒットに抑えたとしても、味方のエラーで点を取られて負けたら、やっぱり悔しいですし。試合後にはピッチングのことより、どうして点を取れなかったかを考えちゃうでしょうから。

 

 ただそれは、ぼくが強く望んでピッチャーをしたわけじゃないからかもしれません。ぼくは“ピッチャーもできたから”チームにとって必要な時にピッチャーをしたという感じなので。根っからのピッチャーというわけじゃありませんし。

 

 たぶんこの原田は、ほんとうに“ピッチャーをやるため”に生まれてきたヤツなんでしょうね。それが彼にとって幸せなことなのか、それとも重荷なのかは、それは分かりませんがね。

 

 で……ぼくがこの企画で取り上げた人物は、ほぼ「戦ってみたい」と思う相手なんスけど。この原田巧だけは、同じチームでプレーしてみたいですね。ぼくが上級生になった時の後輩でもいいですし、もっと歳を重ねて指導者になってからの生徒でも面白いかもしれません。

 

 別に彼を指導してみたいとかじゃなく、彼と同じ時間を過ごした時、どんな景色が現れるのか見てみたいんスよ。墨二中や墨高のメンバー達と過ごす時とは、また違う景色が見られそうで。それもまた面白そうじゃありませんか。

 

<次回予告>

  長くなりましたので、今回はここまで! 次回は、高校野球漫画の代名詞ともいえる“あの漫画”や、近年のリアル高校野球漫画の金字塔とも言われる“あの作品”の登場人物まで、バラエティ豊かなキャラクターが登場します。どうぞお楽しみに!

 

 

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イガラシくんの野球講座<第17回「イガラシくんは、自分の進路をどう考える!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.イガラシの“野球選手”としての覚悟
  • 2.イガラシの大学進学の可能性は!?
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今回も、読者の方からの疑問・質問に……って、早すぎる? もう少しオープニングトークが欲しい? それは、ちとカンベンして下さいよ(苦笑)。ほぼ毎日やってると、さすがにネタもなくなってくるので(汗)。では、さっそく(笑)。

 

 以前もお便りを下さった方ですね。ペンネーム:MWTNBさんより。

―― 現在高1のイガラシ君には少し早い質問かもしれませんが・・・高校卒業後の進路について聞いてみたいです。もちろん甲子園で活躍してプロ野球へ、というのが一番夢があっていいのですが、今回はあえて・・・

 「大学へ進学するなら、どんな基準で大学を選ぶのか?そしてその基準で選んだ場合の具体的な大学名(+学部名)」を教えて欲しいです。

 野球を続けてプロや社会人野球を目指す場合とそうでない場合で基準も大学名等も変わってくると思います。

 両方聞ければ嬉しいですが、どちらかだけでもいいです。そこはイガラシ君にお任せします。

 

 ま……ぼくの進路に関する質問は、読者の方だけでなく、周りからもよく聞かれることではあります。なので話すのは全然かまわないんですが、おそらくMWTNBさんが期待するような答えじゃないと思うので、そこはご了承ください。

 

 ということで、今回のテーマは……

イガラシくんは、自分の進路選択をどう考える!?

 

 で、実はですね。ぼく……大学進学はほとんど考えてないんですよ。

 

 

1.イガラシの“野球選手”としての覚悟

 

 理由は二つあります。

 

 まず両親に学費とかの負担をかけたくないというのがあります。まあ四年間の学費全額免除とかなら、ちょっと心が揺れるかもしれませんが(笑)、そもそもそれぐらいの実力があれば、プロに拾ってもらえるはずですから。

 うーむ。何だかいい子ぶってるみたいで、なんかむず痒いですね(笑)。

 

 で、もう一つの理由ですが……ぼくたぶん、野球選手としてはそんなに長くプレーできないと思ってるんですよ。

 

 もちろん自信がないとか、体格的にどう……とかではなくてね。

 みなさんも知ってのとおり、ぼくはテキトーに手を抜くことができない性分なので(苦笑)。これまでも何度かムチャをやって、少し間違えば選手生命に響くかもしれないケガをやらかしてきてるでしょう。

 

 この性分、たぶん直らないと思うんですよ(笑)。

 だからこそ、高校卒業後も野球をやらせてもらえるなら、なるべく回り道せずに、プロもしくは近藤のオヤジさんのようにノンプロ・社会人へ。そこで自分がプレーヤーとして必要とされなくなったら、この時点で野球からは離れるつもりです。

 

 ついでに言うと……コレ、将来に限った話じゃありません。

 

 今だって、練習や試合で何らかのアクシデントに巻き込まれたら、それが原因で野球をやめざるを得なくなる可能性だってあるんですよ。特にぼくみたいに、後先考えずムチャしちゃう人間はね(苦笑)。

 

 だからぼくは、いつだって全力でプレーするんです。

 いつか野球から離れる時になって、「一切の悔いはない」と言えるように

 

 

2.イガラシの大学進学の可能性は!?

 

 あ、すみません。なんだか重い話になっちゃいましたね(笑)。

 

 えっと……それでも、もし大学進学を考えるとしたら。やっぱり何らかの資格を得たいと思った時でしょうね。ま、これは必ずしも大学へ行かなきゃいけないってわけじゃありませんけど。

 

 具体的に言うと、いつかスポーツトレーナー関係の資格を取りたいと思ってます。

 

 あのですね。ぼくが墨二中のキャプテン時代、チームメイト達に猛練習を課したもんで、よく誤解されるんスけど(苦笑)。ぼくだって、同じ結果が得られるなら、なるべく負担の少ない練習メニューでやりたかったんですよ!

(会場ざわつく「ウソだろ!?」「特訓三倍とか言ってたくせに」

 

 いや、ほんとですって(笑)。

 

 ただ残念ながら、当時のぼくにはチームを全国優勝させるために、あの方法しか知らなかったんですよ。ぼくはムダなことが嫌いなので、もっと効率的な良い方法があれば、そっちを選びたいに決まってるじゃありませんか!(笑)

 

(会場、まだざわついている)

 

……あんのー(苦笑)、そろそろ話をまとめたいんスけど。まあいいや。

 

 要するに、ぼくは目的を先に考えるので。

 何となくプロに行きたいとか、大学へ進学したいとかではなくて。プロや社会人で活躍して少しでも両親を楽にしたいとか、大学で資格を得たいとか。そういうふうに目的が先にあって、それを達成するにはどんな方法がベストなのかってね。

 

 まあ……そうは言っても、ぼくはまだまだ世間知らずの高校生なので。今後もっと色々なことを調べたり体験したりして、さらに自分の見聞を広めたいと思っています。

 

 うーむ、ちと優等生的なまとめ方になっちゃいましたが(汗)。

 

 ただ一つ言えるのは、今後の墨高次第で、ぼくの進路も変わってくることは確かなので。ぼくだけじゃなく、墨高がこの夏大きく躍進できるように、みなさんの応援をよろしくお願いします!

(小声で)あちゃー、やっぱり優等生的すぎたな。おれらしくもない……

 

 

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イガラシくんの野球講座<第16回「体は小さくても、プロ野球選手として活躍できるか!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.“小さな名選手”なんていくらでもいる!
  • 2.自分の体に合わせたスイングを!
  • 3.偏見という”もう一つの敵”
  • 4.誰にも負けない突出した武器を身につけよ!
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今日も読者の方からのお便りを紹介します。今回は特に、多くの野球少年達に伝えたい話なので、どうか最後まで聞いて下さい。

 まずお便りを読みます。

 

ペンネーム:たかしさんより

―― イガラシさん、はじめまして。ぼくは今中学2年生で、野球部に所属しています。新チームからレギュラーに選ばれ、3番ショートを任されています。

 ぼくの将来の夢は、プロ野球選手になることです。でも、ぼくは身長が165センチしかありません。同級生に身長を次々に追い越されたり、どこかで「体の小さい子は、体の大きい子よりも伸びしろがない」という話を聞いたりして、時々自信がなくなってしまうことがあります。

 体つきで負けても、野球の実力で負けずに、夢を叶える方法はあるでしょうか。

 

 ということで、今回のテーマは……

体は小さくても、プロ野球選手として活躍できるか!?

 

 うーむ。ぼくにとっては、何だか懐かしい話ですね。

 ぼくもかなり最近まで、さすがに味方には言われませんけど、相手チームとかに「あのチビ」だの何だのって言われてましたから。

 ま……そう言ったヤツら全員、叩きのめしてやりましたけど。え……あっ、もちろん“物理的に”じゃないスよ(汗)。野球の実力でってことです(笑)。

 

 それはともかく、たかしくん。キミの夢である、プロ野球選手として活躍することができるかどうかという質問ね。結論から言えば――活躍できますよ!

 

 

1.“小さな名選手”なんていくらでもいる!

 

 ぼくがまだ高校生だから、そう断言されても説得力がないって思うかもしれないけどね。でも事実して、現役のプロ野球選手に、“小さな大打者”とか“小さな大エース”って言われてる人、結構いるだろう。

 いやプロ野球だけじゃない。もっと体格差がモノを言いそうな大相撲の世界だって、活躍してる小兵力士も少なくないじゃないか。

 

 ただね……やっぱり、体が小さいことのハンデはある

 キミはおそらく、小学校の低学年の頃からスポーツ万能で、同級生の中では誰にも負けなかったはずだ。ところがそんなキミでも、体格の大きい上級生には、さすがにケンカしたら勝てなかったはずだ。やっぱり体が大きいというだけで、どうしても腕力はちがってくるからね。

 

 だから誰よりも知恵を絞って、工夫しなきゃいけない。

 

 もう一度、プロ野球の話に戻そうか。

 各チームには、助っ人外国人選手が何人かいる。体格だけなら、日本人より外国人の方が大きいから、毎年ホームラン王は外国人選手が獲っててもおかしくないだろう。

 でも、現実はそうじゃない。

 ちゃんと自分の体をよく知って、自分の体に合ったスイングの仕方をすれば、日本人だって外国人よりもたくさんホームランを打てるんだ。

 

 たとえばぼくも、自分の体が小さいことは自覚してた。

 でも自分なりに研究して、一番ボールをミートしやすくて、なおかつ一番ボールを飛ばせる打ち方を身につけたんだ。

 165センチの体で、チームの3番打者を任されたキミなら、きっとぼく以上の努力ができるはずだよ。

 

 

2.自分の体に合わせたスイングを!

 

 あ……ついでに言うと、ぼくは墨二中のキャプテンだった頃、チームメイトには基本的に「わきをしめてシャープに振る」というアドバイスしかしないようにしてた。

 

 もっと細かく言えば、両足の幅とか、バットの構え方とか、タイミングの取り方とか色々あるんだけど、それはもう一人一人の体つきとか感覚によるから、そこまで口を出すべきじゃないと判断したんだ。みんな身長も体つきもちがうからね。

 

 だから、ただ一点「わきをしめてシャープに振る」ことだけを、チームとして徹底した。万人すべてに当てはまる理想のスイングはないけれど、やはり押さえなければならない基本というものはあるからね。

 

 話を戻すと、要するに体が大きい人には大きい人なりの、そして体が小さい人には小さい人なりのスイング・打ち方がある。キミは今までそれを追求してきたのだろうから、その努力をこれからも続けて欲しい。

 

3.偏見という”もう一つの敵”

 

 ただね……もう一つ、キミには戦わなければならない“敵”がいる。

 

 それは、キミ自身も耳にしたように、「体の小さい選手は大きい選手に敵わない」という偏見だ。ぼくのように、そういう声を鼻で笑える人間ならいけれど(笑)、真面目な子ほど気にしちゃったりするからね。

 

 問題は、そういう考えを指導者が持っている場合だ。

 体の小さい選手はダメだと思っている指導者のチームなら、試合でアピールするチャンスすら与えてもらえないかもしれない。

 

 見分け方は簡単だ。実際に、そのチームの試合を見に行けばいい。ただし練習試合じゃなく、公式戦を見るんだ。公式戦で、体の小さな選手も活躍しているチームなら、そのチームの指導者はちゃんと体つきでなく実力で選手を見ている証拠だ。

 

 

4.誰にも負けない突出した武器を身につけよ!

 

 とは言っても……指導者が、体の大きな選手を起用したくなる気持ちは、分からなくもないんだ。

 

 ぼくはピッチャーもしているから分かるけれど、体の大きなバッターというのは、それだけで威圧感があるからね。打率が同程度なら、ぼくでも体の大きな選手を起用するかもしれない。

 

 だから最後に、キミには厳しいことを言わせてもらう。

 

 打撃でも、守備でも、脚力でも何でもいい。そのチームじゃ誰にも負けない、それも突出した武器を身につけて欲しい。キミのその武器で試合の流れを変える、チームを勝たせられるくらいのモノを習得するんだ。

 

 だいぶキツイことを言ってしまったかもしれない。でも、それぐらいの気迫と覚悟がないと、厳しい勝負の世界で生きていくことはできない。

 

 さて、たかしくん。お便りによると、キミはぼくの二つ下だ。ということは、お互い甲子園に出られたら、そこで対戦することがあるかもしれないね。

 たかしくん。キミが、キミのチームが手強いライバル校として、ぼくら墨高の前に立ちふさがることを、楽しみにしているよ! もちろんその時、勝つのはぼくらだけどね。

 

 道のりは険しいかもしれない。だけど、キミならきっと大丈夫。いつか同じグラウンドで、ともに戦おうじゃないか!!

 

 

 

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イガラシくんの野球講座<第15回「イガラシくんは、キャッチャーの倉橋さんをどう思ってるの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.倉橋のおかげで、イガラシは“いい子”になった!?
  • 2.倉橋のスゴさは行動力と判断力!
  • 3.倉橋の判断が、墨高野球部の分岐点となった!
  • 4.倉橋よりイガラシへのメッセージ
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今日はですね……先日、どっかの誰かさんが、アンケートなんて余計なことをやっちゃいましてね。ま、協力してくださった方もいらっしゃるので、ちゃんと答えようと思いますが。ただ勝手なことをしやがったあのヤロウは、この御礼にぼくの千本ノックを三時間受けてもらうことにします(笑)。

 

 ということで、今回のテーマは……

イガラシくんは、キャッチャーの倉橋さんをどう思ってるの?

  

1.倉橋のおかげで、イガラシは“いい子”になった!?

 

 そういやぼく、谷口さんや丸井さんのことは話しても、倉橋さんのことはあまり話したことがなかったですね。

 ま、うちの正捕手なので、やっぱり頼りになる先輩だと思いますよ。しかもうちの部で唯一、キャプテン谷口さんにも対等に意見を言える存在ですよ。

 個人的に、谷口さんに対してほとんど文句はないんスけど。強いて言うとすれば、ちと人に気を遣いすぎるトコがあるので。自分が正しいと思ったら、遠慮せずハッキリ言えばいいのにってたまに思います。で、その辺を倉橋さんがカバーしてくれてるので、ほんといいコンビですよね(笑)。

 おかげで、みなさんも気づいてるでしょけど、墨高に入ってからのぼくは、素直で礼儀正しくて、いい子になってるでしょう?(ニコニコ)

 えっ、猫かぶってるのが丸分かり? もうすでにメッキが剥がれかけてる? 薄気味悪いから、早く本性を表せ?

 ちょっとみなさん(汗)。ぼくのこと、一体なんだと思ってるんですか!

 ぼくのこと、生意気で言いたいことをズケズケ言って、勝つためには手段を選ばない冷血人間だと思ってるっておっしゃりたいのですか!?

 

会場の客一同:(心の中で)その通りじゃねえか!!

 

2.倉橋のスゴさは行動力と判断力!

 

 まあまあ、ぼくの話はこれぐらいにして(汗)そろそろ入りましょうよ。

 ええとですね。ぼくが倉橋さんのことをこれまで見聞きして、特にスゴイなと思ったのは、あの人の行動力と判断力ですね。

 

 聞いた話ですと、倉橋さんが入部した頃の墨高野球部って、練習中に焼き芋を始めちゃうくらい、それはそれはヒドイ有様だったそうじゃないですか。んなもんで、それにスパッと見切りをつけて、自分のやりたい野球に合うチームを探して転々としてたわけでしょう。

 結果として、その過程で川北高野球部キャプテンの田淵さんと知り合って、その縁でうちの野球部とも練習試合できたわけですし。

 

 む、ぼくならどうするかって? そうスね……ぼくなら真剣に野球部をやりたいと思うメンバーを募って、新しくチームを作りますね。で、旧チームと対決でもして、勝った方が“真の野球部を名乗る”と。ま、ぼくのやり方に、付いてこれるヤツがいればの話ですが(会場、引きつった笑い)。

 

 

3.倉橋の判断が、墨高野球部の分岐点となった!

 

 ええと、何の話でしたっけ?(笑)

 あ、そうそう。倉橋さんの行動力と判断力。後から思えば、それが墨高野球部の重要な分岐点にもなってるんスよ。

 川北との練習試合いしても、直前の夏の大会で東実に善戦して、悪く言えばちとイイ気になってた当時のメンバーに、強豪校の“本当の強さ”を実感させて、チームの意識改革につなげていったんですから。

 

 それに最近だって、谷原高からの練習試合の申し込みがあって、倉橋さんの判断ですぐに対戦することになったじゃありませんか。結果はちと……というか、だいぶショッキングなものになりましたけど、それはぼくらが“本気で甲子園を目指す覚悟があるのか”を強く自分達自身に問うことになりましたし。

 

 え、ぼくスか? うーむ……悔しいというより、呆れましたね。あそこまでコテンパンにやられると(汗)。なにせ、あの谷口さんのタマが、いとも簡単に次々と弾き返されていったんですから。

 ただね。みなさんが気づいてたかどうか分かりませんけど……あの試合、谷口さんは本調子じゃなかったんスよ。コントロールが定まらなかっただけじゃなく、四回辺りから微妙にフォームも崩れてたので、ひょっとして、どこか傷めてたかもしれません。

 

 それから、負け惜しみに聞こえるかもしれませんけど……実際やってみて、なんとなく谷原の弱点も見えてきたんです。それは今ヒミツにしておきますが(笑)、二度も同じやられ方はしないということだけ、約束しておきます!

 

 

4.倉橋よりイガラシへのメッセージ

 

 さて。うーむ……どうしようかな。実はですね、倉橋さんに関して、ちと苦い思い出があるんスよ。ま、せっかくなので。会場のみなさんにだけ、こっそりお話ししますね(笑)。

 

 みなさんも知ってるかと思いますけど、ぼくが墨二中の一年生の時、倉橋さんのいた隅田中と、地方大会の準決勝で対戦してるんですよ。

 その試合で、倉橋さんの巧みなリードと、松川さんの重い速球と正確なコントロールを前に、かなり苦しめられまして。あの大会で、たしか唯一ノーヒットに抑えられちゃったんスよね。四死球とか敬遠で出塁はしましたけど、ヒットを一本も打てなかったというのは、あの時以外ちょっと記憶にないので。

 

 え……なんです? 倉橋さんからメッセージが届いてる? へえ、忙しいはずなのに。なんでしょうね、わざわざ。

 

―― おいイガラシ。おまえ、いつまで猫かぶって、おりこうチャンのフリをしてるつもりだ。こちとら、薄気味悪いったらありゃしない。

 もうメッキは剥がれかけてんだよ。元々おまえを知ってる連中はともかく、ほかのヤツらは一年だけじゃなく上級生も含めて、みんなおまえにビビッてんだよ。半田なんて、おまえを見るとコソコソと隠れやがる。一体なにしやがったんだ。

 

 それと中学ン時、おまえはおれのリードにしてやられたと言ってたが、逆だよ。

 忘れもしねえ。一打席目はインコース低めを打ってショートゴロ。二打席目は、外角高めを打って、あわやホームランかというライトライナー。その後、墨二打線は松川の高めのタマをねらい打ちしてきやがった。あれはおまえが、松川の高めは球威が落ちることを、他のメンバーに耳打ちしやがったんだろ。

 

 しかもその後、おまえは記録上はノーヒットだが、ファールで粘るわバスターの構えで揺さぶるわ、疲れの見える松川の前にわざとバントを転がすわ。メンドウだと思って歩かせりゃ、今度は脚で搔き回してくるわ。

 

 まったく……おれも長いこと野球やってきたがよ、。おまえほど意地の悪いバッター、見たことなかったぜ。そんなおまえと今チームメイトになれたのは、運が良かったのか悪かったのか。

 

 ま……とにかく、夏の大会では、おまえの意地の悪さを良い方向で使ってくれることを期待してるぜ。はっきり言や、可愛げのない後輩だが、試合になれば、まちがいなくおまえは頼りになる男だからな!!

                    墨高野球部三年 倉橋豊より

 

 うーん、ホメてるんだかケナしてるんだか、よく分からない内容スね。まあいいや。

 

 とにかく……ぼくにとっちゃ、高校生になって初めての大会なので。高校球児らしく、さわやかに、ひたむきに白球を追って、何よりも仲間を大切に、正々堂々とプレーしようと思います!(両眼キラキラ、表情ニッコリ、しかし棒読み)

 

(あまりに不似合いな発言に、会場が凍り付く)

 

 あれ、みなさん顔が青ざめてますよ。震えてる人も多いし、寒いんスか。どうもこないだから、クーラーが効きすぎてるみたいですね。後で業者の方にちょっと見てもらおうと思います。

 

―― 会場の客一同:(心の中で)寒いのはクーラーじゃなく、おまえの発言だよ!!

 

 

 

 

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