南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

あまりにも明らかなサッカー日本代表の“攻略法”——「歴史」から見えてくる、戦い方のポイント

 サッカー日本代表の“戦術論”が、今でもよく取り沙汰される。曰く、やれデュエルだパスサッカーだ、ポゼッションだ、いやカウンターだ……などと。

 これは例えるなら、野球において「速球派投手がいいのか・軟投派投手がいいのか」と不毛な二者択一で悩んでいるようなものではないか。そんなもの、どちらも長所と短所があり、“相手打者や試合の状況によって変わってくる”としか言いようがない。

 メディア等でサッカー日本代表を巡る議論を見ていて、度々思うことがある。どうして「歴史」に学ばないのだろうと。

 初出場だった98年のフランスW杯から数えて、五大会連続出場。もはや日本は“W杯常連国”と言って良い。通算で17試合を戦い、勝利の喜びを味わったことも、敗北の悔しさを味わったことも、その両方を経験している。

 過去の試合から、日本の勝ちパターン・負けパターンをそれぞれ分析していけば、自ずとどんな戦い方をすれば良いのか見えてくるのではないだろうか。

<フランス大会>

対アルゼンチン  01(負け)

クロアチア   01(負け)

対ジャマイカ   12(負け)  ※グループリーグ敗退

   <日韓大会>

対ベルギー    22(分け)

対ロシア     10(勝ち)

チュニジア   20(勝ち)

対トルコ     01(負け)  ※ベスト16

   <ブラジル大会>

対オーストラリア 13(負け)

対クリアチア   00(分け)

対ブラジル    14(負け)

   <南アフリカ大会>

カメルーン   10(勝ち)

対オランダ    01(負け)

デンマーク   31(勝ち)

パラグアイ   00(PK負け)  ※ベスト16

   <ブラジル大会>

コートジボワール 12(負け)

ギリシャ     00(分け)

対コロンビア    14(負け)   ※グループリーグ敗退

通算成績:4勝9敗4引き分け(PK負け一回含む)

 注目すべきは、グループリーグで敗退した大会である。この3大会で7敗しているのだが、このうち実に5試合が、複数失点を喫してしまっている。

 一方で、アルゼンチンやオランダという強豪国を相手に、最少失点で凌いだ試合もある。だから、慢性的に守備が悪いというわけでもなさそうだ。

 実は、日本代表が複数失点を喫して敗れた試合には、共通点がある。チーム全体が前掛かりになり、再三カウンターを浴びる展開になったというものだ。

 今後、日本と同グループになった相手チームの監督は、“わざと”ボールを持たせようとするかもしれない。さらには意図的にディフェンスラインを下げ、さほどプレッシャーもかけない。その代わり、守備に人数をかける。

 そうして日本の重心がじりじりと前へ傾き、後ろが手薄になった頃合いを見て……カウンターを仕掛ける。ビハインドを負い、さらに前掛かりになった日本の攻撃をいなしながら、ディフェンスの背後を突き追加点を奪う。……見覚えがある方も多いのではないだろうか。

 そう、もはや日本代表の゛攻略法は、明らかなのである。日本を弱小だと舐めてくれる相手ならいいが、そうでないチームは、この攻略法を確実に仕掛けてくるものと考えた方が良い。

 特に格上チームと当たった時、なぜかさほどプレッシャーもなくゴール前で攻め込むことができている場合……それは“罠”だと疑うべきだ。

 だが、そもそも「ポゼッションだ、いやカウンターだ」などと、自分達の“形”にばかり拘っているチームが、そうした相手の狙いを見破れるはずがない。それどころか、罠に嵌っていたことさえ気付かず、試合後には「負けはしたが、“自分達のサッカー”はできていた」などと能天気なコメントを残し、また同じ失敗を繰り返す。これまた、どこかで目にした光景だろう。

 だから、ボールを持てても“あえて攻めない”という選択肢だってある。この場合は、ポゼッションが有効になるだろう。ディフェンスラインでボールを回しながら、相手の出方を探る——観客には、お互い消極的でつまらない試合に見えたとしても、である。

 こういう駆け引きができて初めて、ベスト8以上を狙える。

 以上のことから、サッカー日本代表の取るべき戦い方として、少なくとも次のようなことは言えるのではないだろうか。

前掛かりになりすぎない(攻撃にあまり人数をかけすぎない)

※特に、格上と思われるチームが自由にボールを持たせてくれた時は、要注意!

少ない人数でも得点できる形を作る

※「セットプレー」は大事。またドリブル、ミドルシュートが得意な選手(個人技で得点できる選手)を重用する。

「あえて攻めない」ポゼッションも覚える(相手の出方を探るため)

 W杯は如何に相手の長所を消し、弱点を突いていくかというレベルの戦いである。だから、相手も見ずに「どんなサッカーをすべきか」などと絵に描いた餅を並べているようでは、話にならない。

 どんなサッカーをするか、ではなく……どんなサッカーが「この相手・この状況では効果的なのか」ということ。

 そう、サッカーには“相手”がいる。このあまりにも当たり前なことを、くれぐれも日本代表には忘れないようにしてもらいたい。