南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

あえて鹿島アントラーズの“死角”を探すなら——さらなる進化を遂げるための改善点

 先日のセビージャ撃破で、昨年のクラブ・ワールドカップ準優勝に続き注目を浴びることとなった、鹿島アントラーズ。リーグ戦では一試合多く消化しているセレッソ大阪と、勝ち点差4の第2位。昨シーズンに続く2連覇も十分射程圏内である。

 特に前半戦のラスト“アウェー3連戦”において、当時首位に立っていた柏レイソルガンバ大阪を立て続けに下し、今季も優勝するにふさわしい力があることを証明した。

 そんな鹿島の、あえて“死角”を探すとしたら、どこにあるだろうか。個人的には——本当に“強いて言えば”という話だが——たった一つ挙げるとすると、「先制パンチの浴びせ方」だと考える。

 鹿島の長所。それは何と言っても、相手・状況への“対応能力の高さ”である。チーム・スポーツの世界では、自分達のスタイルに拘って身動きが取れなくなってしまうケースが多々あるものだが、今の鹿島に限ってそれはほとんど見られない。

 ポゼッションが有効であればポゼッションを、カウンターを狙えると見ればカウンターを、凌ぐしかない時間帯であれば割り切って凌ぎ切ろうとし、好機を見出せば一転して攻めに転じる。純粋な戦力はともかく、これだけ懐の深いチームは、世界中を見渡しても数少ないのではないのではないだろうか。

 ただ、何でもできて、相手・状況をよく把握できるチームだからこそ……ともすれば、所謂“受け”に回ってしまうということがある。その結果、相手のペースに合わせ過ぎてしまったり、リスク覚悟でアグレッシブに攻め込んできた相手の勢いに押されてしまったりして、自分達のリズムを崩してしまうというケースもままあるものだ。

 例えば、第17節の柏レイソル戦。前半は、ホームで戦う相手のハイプレッシャーに押されてしまい、珍しくディフェンスが破られ劣勢を強いられた。

 また、鹿島はJリーグの下位チームとの対戦でも、ロースコアで辛勝するケースが少なくない。下位だからといって舐めてかからず、相手をリスペクトした上で戦うところは“良さ”でもあるのだが、それが原因で試合を難しくしてしまうこともあるようだ。

 そこで、時には“先制パンチ”を浴びせる戦い方も、相手によっては選択して良いのではないかと思う。

 具体的に言えば、試合序盤からドリブル突破やミドルシュート等、個人技で積極的に仕掛けていく。特にこれは、格下相手だと効果的である。

 下位に低迷するチームは、上位と対戦する際には守備に人数を割くことが多いのだが、裏を返せば“一対一の勝負”に不安を抱えているからだと読み取れる。これを個人技で突破されれば、間違いなく動揺する(その意味で、個人技に定評のあるペドロジュニオールを獲得したことは、良い補強だったと思われる)。

 ポイントは、少ない人数で攻めるということだ。直接得点へ結び付けられなくとも、相手のファールやクリアでセットプレーのチャンスを得ることにもつながる。上手くいけば、前半で23点のリードを奪うことができる。そうなれば、後は“流して”時計の針を進めていけば良い。

 ジュビロ磐田と覇権を争っていた9701年頃の鹿島は、この“先制パンチ”も強烈だった。これで幾多のチームが、守備網をズタズタに切り裂かれただろう。

 現チームにも、そのレベルを目指して欲しい。いわば「強い・負けにくいチーム」から、「怖いチーム」へと——これができた時、鹿島は本当に、隙がなくなる。