南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

無敗が途切れた次戦・ 試された“修正力”——鹿島アントラーズ2-0清水エスパルス【雑感】

 個人的には「無敗が途切れた次戦」ということで、この試合を注目していた。

 

 連勝が止まった途端、調子を崩しずるずると順位を下げていくケースは少なくない。鹿島アントラーズもそうなってしまうのか、それともここで踏み留まれるのか。ある意味、今後を占う一戦になるのではないかと。

 

 結果は、2-0。完勝といってよい試合内容だろう。

 

 清水エスパルスは、元々の相性の悪さに加え、首位を争うセレッソ大阪を逆転で下している。ここまで下位に沈むとはいえ、決して与しやすい相手ではなかった。

 

もつれる展開になると嫌だなと思っていたが、90分間を通して、清水にチャンスらしいチャンスを与えなかった。そして助っ人とエースが一発ずつ。欲を言えばもう少し追加点が欲しかったが、そう思ってしまうほど終始圧倒していた。

 

 さすがに五日間もあれば、きっちり修正してくる。そう簡単に揺らぐチームではないと分かってはいたが、ひとまず胸を撫で下ろした。いくら百戦錬磨の鹿島とはいえ、前節のライバル相手の完敗は、多少なりとも尾を引くのではないかと案じていたから。

 

 確かに「あれ?」と思った。川崎フロンターレ戦、あの3バックへの布陣変更のことである。結果的に13と完敗を喫したことで、この大岩剛監督の采配に対して、多くの批判が寄せられたようだ。

 

 私も、あの采配は失敗だと思っている。試合後、大岩監督の“積極的な采配”を評価する旨の記事も見かけたが、それは鹿島アントラーズというチームにそぐわないだろう。「目の前の試合に勝つ」ということに全力を注ぐのが、彼らの基本姿勢だからだ。

 

 結果論でもなく、スコア上でも内容的にも完敗だった。であれば、あの采配も間違いである——大岩監督本人も、おそらくそう捉えているのではないか。試合後に「慢心があった」と語っているように。

 

 往々にして、力のあるチームが陥りがちなパターンだ。良くない流れになった時、強引に変えようと“動きすぎて”しまう。それでますます、自分達のペースを見失うというケースである。

 

 前節に関して言えば、もう少しどっしり構えて戦った方が良かった。守勢に回る時間が続いていても、「どうせ90分は続かない。相手の動きが少しでも鈍ったところを、カウンターで……」というふうに考えながらプレーしていれば、それが相手にもプレッシャーを与えることになる。今までそうやって、幾度も逆転勝ちを収めてきたはずだ。

 

 ただ私は、こうも考えていた——どこかで負けるなら、2・3点差を付けられる敗戦がいいだろうなと。惜敗ではなく、こういうショッキングな形の方が、自分達の課題を見つめ直す良い契機になる。また、かえって後にも引きずらないのではないか。

 

 どっちみち……近いうちに、負けていただろうと思うから。

 

 ヴィッセル神戸戦、もっと言えば再開初戦のヴァンフォーレ甲府戦の辺りから、チームの調子は下降気味なように感じた。鹿島にしては珍しい凡ミス、マークのずれが、ちらほらと目に付くようになっていたからだ。これでは、いずれやられていたはずだ。

 

 どこかで、気を引き締め直す必要があるように感じた。それが勝っている時は難しいということも、分かる。ただこのまま結果だけは残して、課題を放置したままリーグ終盤の負けられない試合に臨んでしまうと、痛い目に遭う。

 

 敗因が、指揮官の明らかな選手起用・采配のミスによるものであれば、指揮官自ら謙虚な気持ちで修正を施そうとする。そんな指揮官の姿を見れば、選手達も気を引き締めて練習に取り組むことになるだろう。

 

 そういう“修正力”が今のチームに備わっているかどうかを、私は見たかった。

 

 少なくとも、この清水戦の結果を見れば——あの敗戦から五日間、やるべき事はしっかりできていたと言えるのではないだろうか。

 

 “負けは次につながらない”というのが鹿島の哲学だが、下降しかけた状態からチームを再び上昇気流へと乗せられたのなら、その経験がさらに彼らを強くするはずだ。ちょっとやそっとの逆風ではびくともしない、真の強者へと。まるで大木が、地中に頑強な根を張っていくように。