南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

“誰を選ぶか”よりも重要なこと——サッカー日本代表・メンバー発表について

 誰を招集するか・しないかということは、さほど重要だと思わない。問題は、ワールドカップ出場が懸かるオーストラリア、サウジアラビアとの二連戦を如何に戦い、勝利を手にするのか。そのプランニングがしっかりできているかということである。

 個人的には、負傷上がりの大迫勇也を招集するのはリスクが大きい気がする。また、金崎夢生のゴール前でのキープ力と闘争心は、大一番向きだとも思う。

 しかし、今回のプランニングにおいては、この人選が適しているということなのだろう。私のような素人には分からない、相手との相性や戦術その他諸条件を勘案した上での、今回の27名の選出だったと願いたい。

 一つ皮肉を言わせてもらうなら——金崎を招集しなかった理由が、まさか「所属チームで前監督に逆らったから」などという理由でないことを祈る。金崎の実力がまだ代表レベルではなかった、もしくはこの二連戦での戦術には合わなかったからなのだと。

 もっともそうであるなら。今後は記者会見の場で、特定の選手を招集外にした理由について、うだうだと述べるべきではない。選手の所属チームをいたずらに動揺させるだけでなく、「私は(金崎のように)クセのある選手を指導する力はありません」と自ら口外するのに等しいからだ。この監督、意外に気が小さいな……と、招集した選手さらには対戦相手にまで、舐められてしまう。

 ハリルホジッチ監督に期待したいのは、オーストラリア戦・サウジアラビア戦の二試合とも、「90分間を通したゲームプラン」をしっかりと練ることだ。それさえできれば、プランニングに適した選手起用・交代メンバーのシミュレーションまで行える。

 はっきり言って、私はハリルホジッチ監督のゲームのプランニング能力に、大きな疑念を抱いている。その根拠は、11の引き分けに終わったアウェーのイラク戦だ。

 猛暑で、選手達の動きが鈍るのは分かる。さらには怪我上がりで、数人の選手のコンディションが万全でないことも不運だった。

 だが、それならなぜ……あんな何度もボールを前へと蹴り出し、いとも簡単にボールを相手に渡してしまったのか。ディフェンスラインでじっくりボールを回したりして、極力体力の消耗を避けるプレーをどうして選択しなかったのか。

 ビハインドを負っていたのなら、まだ分かる。しかしあの試合、日本は先取点を奪い、1点リードしていたのである。焦る必要はなかった。おいおい、少しは頭を使えよ……と、正直かなり呆れてしまった。

 オーストラリアにしても、サウジアラビアにしても、楽に勝てる相手ではない。

 だからこそ、「耐える時間」「やり過ごす時間」「仕掛ける時間」というふうに、チームとして意思統一を図ることが不可欠である。どうしても押されてしまう時間、上手くいかない時間が出てくるからだ。

 想定さえしていれば、どんな状況でも落ち着いて対処できる。怖いのは、上手くいかないことで慌ててしまい、チーム全体が浮き足立ってしまうことだ。無理に流れを変えようとすれば、失点のリスクが高まる。

 極論すれば、「間違った戦術」というものは……ない。ポゼッションもカウンターも、守備的サッカーも攻撃的サッカーも、すべて正しいといえば正しい。

 

 問題は、その戦術が相手と状況に適しているか。それだけである。

 記者会見で正直に話すわけにもいかなかっただろうが、ハリルホジッチ監督とサッカー日本代表コーチングスタッフは、次のような問いに答えられるだろうか。

・オーストラリアのストロングポイントとウィークポイントは、それぞれ何か。

・特に注意すべき相手選手は誰で、その選手を抑えるためにどのような策を講じるか。

・試合は、立ち上がりから積極的に仕掛けていくのか。それとも序盤は様子を見るのか。

・先取点を奪ったら、選手交代も含めどのように試合を終わらせるのか。

・もし先取点を奪われたら、選手交代も含めどのように点を取りにいくのか。

・なかなか点が奪えなければ、選手交代も含めどのように点を取りにいくのか。もしくは引き分けでもOKと考え、サウジアラビア戦で決めるようにするのか(スコアレスの時とビハインドを負っている時では、同じ“点を取りに行く”のでも状況が違う)。

 大まかに考えただけでも、これぐらいは想定できる。素人の意見だが、しかし……上で挙げたようなことは、どれも実際に過去の日本代表の試合で見られた状況だ。というより、力の拮抗した相手との対戦であれば、どこの国でも起こりうる事態である。

 “プロの監督”ならば、もっと細かい点まで気付き、想定しているに違いない。「吉田(麻也)と昌子(源)のどちらかがけがをした場合、経験がないセンターバックを出すのは危険では?」という、W杯経験者である秋田豊の至極真っ当な質問に対して、「それは非常に悲観的な見方である」「日本では若手を信頼して使う部分が、少し足りないのかもしれない」と皮肉混じりにも聞こえる答え方をしたハリルホジッチ監督なら、こちらが心配するような事項の解決策は、すでに持っているのだろう。

 まさか本当に怪我人が出たり、事前に想定されていた“困ったこと”が起きた場合、何も打つ手がなく指揮官自ら慌てふためく……といったような間抜けな事態には、絶対に陥らないと信じたい。

 私のような意見も、指揮官に言わせれば「非常に悲観的な見方」ということになるのだろう。悲観的すぎたのだと、是非とも証明してもらいたい。オーストラリアとサウジアラビアを堂々と打ち破り、W杯の出場権を手にすることができれば、批判する周囲を見返すことができる。

 できることなら、言わせて欲しい——ハリルホジッチは名将だと。やはり“プロの目”には、素人には分からない部分が見ていると。そして、前回W杯で結果を残した手腕は本物だったと。

 ここまでの流れを見ていると、正直難しいだろうと感じているのだが。