南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

もう一度ギアを上げられるか——サガン鳥栖1-0鹿島アントラーズ【雑感】

 頼むから、“独走態勢”などというフレーズを使わないで欲しい……と、メディア等の報道を見て思っていた。

 

 勝ち点差8など、まだまだ安心できる数字ではない。現に07年、鹿島アントラーズ浦和レッズと最大勝ち点10の差をひっくり返して優勝を果たしている。

 

 鹿島は「勝負強いから大丈夫」などという楽観も、適当ではない。09年には、結果的に3連覇を達成したものの、八月末から十月初旬にかけて5連敗を喫し、一時川崎フロンターレに逆転を許している(そう、今まさに首位争いを演じている川崎に、である)。たまたま川崎が大分トリニータに取りこぼしたから再逆転できたものの、それがなければ失意のシーズンに終わっていたはずだ。

 

 勝負は下駄を履くまで分からない——使い古された表現だが、それが真実であることは歴史が証明している。長年の鹿島ファンの方であれば、まさに骨身に沁みて痛感してきたはずだ。

 

 残り7試合も残した時点での勝ち点差8など、何の保証もない。こちらが3連敗して、2位のチームが3連勝すれば、ひっくり返る程度の差なのだ。

 

 より重要なことは、チームとしてもう一度「ギアを上げられるか」どうか、である。

 

 ここ数試合を見ていて、近いうちに連勝は止まるだろうと予想していた。もっと言えば、「そろそろ負けた方が良い」とさえ思っていた。

 

 なぜなら、いつ負けてもおかしくない試合が続いていたからである。具体的に言えば、敵陣でのラストパス及びシュートの精度、自陣付近での対人守備といった、まさに「得点に直結する部分」でのプレー精度が、好調時と比べて明らかに落ちていた。

 

 顕著だったのが、前節のガンバ大阪戦である。昌子源の相手FWファン・イジョに対する寄せの甘さ、GK曽ヶ端の判断ミスが絡んで簡単に先取点を献上し、再三チャンスを作るも攻めあぐねた。ロスタイムの劇的な決勝弾でぼやけてしまったが、とても会心の試合と呼べるものではないと感じていた。

 

 迎えた今節のサガン鳥栖戦——やはり、「プレー精度の低さ」が敗因だったように思う。

 

 クロスボールが上げられた直後。福田晃斗は、ほぼフリーでジャンプし、難なくボールを叩き付ける。この日再三の好セーブを見せていた曽ヶ端も、さすがに成す術がなかった。

 

 はっきり言って、最悪である。失点した時間帯も、取られた形も。

 

 両チーム無得点で迎えた、後半35分。この時点で1点勝負だということは、ほぼ確定だ。そんな状況下で、自陣に走り込んだ相手選手のマークを外してしまうなど、大きな失態である。集中力を欠いていたと言われても、仕方がない。

 

 とはいえ、昌子源を始め鹿島のDF陣を責める気にはなれない。おそらく目に見えない疲労が溜まってきているのだろう。だから次節までの二週間はリフレッシュを図って欲しかったのだが、昌子も植田直通も、日本代表メンバーに選出されてしまった。二人のコンディション具合が、終盤へ向けて小さくない不安材料となる。

 

 ただ連勝が止まったことで、少なくともチームの引き締めを図る“きっかけ”は得られた。あのまま勝ち続けていたら、問題点がなおざりにされていた可能性もある。そこを優勝の掛かった終盤戦で露呈してしまうと、もう取り返しが付かなくなる。

 

 繰り返すが、どこかでもう一度「ギアを上げる」必要がある。それを成す力が鹿島にあるかどうかが、今シーズンの結末を決めることとなるだろう。