南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

敵は川崎フロンターレではない——鹿島アントラーズ、ラスト4試合へ

 天皇杯ヴィッセル神戸戦も含むここ数試合の“停滞”は、個人的にはさほど驚くことではなかった。連勝中だったアルビレックス新潟戦やガンバ大阪戦の辺りから、チームとしての調子は明らかに下降気味であるように感じていたからだ。

 好調時と比べて、何が違っていたのか。それは「プレー精度」である。

 守備時においては、以前なら数人でブロックを敷いて確実にボール奪取するか、相手にボールを下げさせていたのが、最近では簡単に突破される場面が目に付くようになった。それどころか、自陣であっさりマークを外し決定的なシュートを打たれることも増えた。

 攻撃時においては、強引なドリブル突破やロングシュートが増えてきた印象だ。時間帯や状況によっては、無理にフィニッシュまで持っていかず、一旦下げてプレーを組み立て直した方が良いケースもある。何でもかんでもシュートで終われば良いというわけではない。今は攻めるべきか、それとも守るべきか。このような状況判断は、本来なら鹿島の強みのはずだが、鹿島らしい「知性」が薄らいできているように見える。

 だが、プレー精度の低下が特に顕著なのは、「パス」だと思う。それも縦へのいわゆる“チャレンジパス”ではなく、サイドチェンジパスや横パスで出し手と受け手の呼吸が合わず、あっさりタッチラインを割ってしまう場面がこのところ目立つ。時には横パスを掻っ攫われ、失点につながってしまう。

 勝ち切れないことや、2位の川崎フロンターレに差を縮められたことよりも、こうした「鹿島らしくないプレー」が頻発してしまっていることの方が問題である。

 やはりチームとして、どこか“緩み”が生じてしまっている。

 疲労の蓄積もあるだろうし、他チームの対策が進んできたことも影響しているのかもしれない。一時川崎に勝ち点8差を付けたことで、変な「余裕」を持ってしまった部分もあるだろう。どれか一つということではなく、幾つもの要素が複合的に作用した結果が、今の停滞なのだと思う。

 ここからの4試合は、一つの点が、一つの勝ちが、一つの負けが、一つのミスが……だんたんと重くなっていく。その重さに、どれだけ耐えられるかが勝負だ。そして、その重さをどこよりも知っているのが、鹿島アントラーズというチームのはずである。

 敵は川崎フロンターレではない。ましてや、浦和レッズ柏レイソルといった、残り試合の対戦相手でもない。

 そう。ここまで来れば、敵は“己自身”となる。疲労、慢心、重圧——それらをすべて撥ね退け、今シーズンのJリーグを制することができるか。

 ACLを失い、ルヴァン杯を失い、新たに天皇杯まで失った。ここまでの屈辱を味わってなお、もう一度チームとしてのギアを上げられないのなら、もはや今年の鹿島は勝つべきではない。

 いや、できないはずがあろうか。苦しみを耐え抜いた末の、歓喜の瞬間を……頼むぞ。鹿島アントラーズ