——後半は勇気づけられた。後半だけを見れば我々が勝っていた。そう考えなければいけない。
このハリルホジッチ監督のコメントが、完敗に打ちひしがれているであろう選手達の、メンタル面を考慮してのものであることを祈る。もし本気で思っているのだとしたら、はっきり言って救いようがない。
後半の日本代表が、なぜ“見た目上は”盛り返すことができたのか。それは日本が良くなったからではない。3点のリードを得たブラジルが、ギアを落としたからである。
前半17分までに喫した2失点が、すべてだった。
VARによりPKがブラジルに与えられてしまったことは、多少不運だったかもしれない。しかし、映像を見れば確かに吉田麻也の手が相手に掛かっており、審判が見ていればその時点でファウルを取られていたはずだ。
それにしても、なぜあんな簡単に「手を使って」しまうのか。ペナルティエリア内での競り合いである。相手がファウルを誘ってくることもある……そんなことは、彼ほどのキャリアを積んだ選手であれば、当然分かっているはずなのだが。手で掴んだり押さえたりして、相手を倒してしまえば、高確率で笛が吹かれる。それを立ち上がり10分でやってしまうなど、プレーがあまりにも青すぎる。
この試合に限らず、吉田は前回W杯以前から、度々失点に直結するミスを犯してしまうことが目立つ。これだけのキャップ数を重ねても改善されないのであれば、一旦レギュラーから外すべきだと思う。
さらに呆れてしまったのは、2失点目のシーンだ。クリアボールが小さくなり、マルセロに渡ってしまったのは仕方がない。しかし、体を投げ出してシュートを防ぎにいく選手が一人もいなかったのだ。マルセロはダイレクトで右足を振り抜き、いとも簡単にゴール左隅へ突き刺す。日本の選手達は、ただそれを傍観していただけだった。絶対に点をやらない、シュートは打たせない……そういう気迫が伝わってこない。こんなことは、戦術以前の問題ではないか。
ブラジルは、確かに強かった。とりわけスピードに乗ったパスワークは、敵ながら「これが世界のトップレベルなのだ」と感嘆させられた。しかし、それはもう“分かりきったこと”だろう。実際にどんなプレーをするのかも、南米予選等のVTRを見れば把握できたはずだ。
このスピードに乗ったパスワークは、簡単には止められない。であれば、優先すべきは「スピードに乗せない」ことだろう。例えば中盤を厚くして、相手が縦に行くコースを切る。あるいは無理にボールを奪いにいくのではなく、しつこく纏わりつき、少しでもスピードダウンさせる(昨年のCWCで、鹿島アントラーズがレアルマドリード相手にやったように)。強い相手に勝機を見出すためには、こういうことを積み重ねていくしかない。表面的な戦術論ではなく、その判断と覚悟こそが、サッカーにおける“知性”である。
チームとしての気迫も、知性も持ち合わせていない。指揮官までもが「後半は勝っていた」などと嘯く——相手が後半、控えのGKを試すなど、明らかに日本を“ナメていた”という現実に目を背けて。
できることを全部やりきって、それでも敗れたのなら仕方がない。たとえスコアは同じだったとしても、精一杯抵抗したのであれば伝わるし、結果も受け入れられる。
昨日は、そういう敗戦ではなかった。そもそも本当に精一杯抵抗した結果であれば、まず「負けて悔しい」という言葉が口をつくのではないか。指揮官が本心で「後半は勝っていた」ことに満足しているのなら、彼はブラジルを倒すつもりで試合に臨んでいなかったということではないか。
これでは、勝てるはずがない。