南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

にわかファンの叫び——鹿島アントラーズ、”復讐の年”来る

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 自分自身のことを、鹿島アントラーズの“にわかファン”だと思っている。

 居住地が遠く離れた沖縄のため、鹿島の試合はおろか、Jリーグを一度も現地観戦した経験がない。完全なテレビ(ネット)限定サポーターだ。

 そんな“にわかファン”の私ですら、こんな有様である——正直、サッカーが嫌いになりそうだった。とりわけテレビで「川崎フロンターレ優勝」の映像やテロップが流れると、反射的にチャンネルを変えてしまう。

 鹿島ファンではないがサッカー好きな家族からは、「いつまで引きずっているんだ」と言われたりする。自分でも、みっともないかもしれないとは思う。

 それでも——ファンであれサポーターであれチーム関係者であれ、心の中に鹿島の“血”が流れている方ならば、きっと共感していただけるのではないかと想像する。この“血”を宿す者であれば、この“一敗”の痛みが、重さが、言葉にできないほど強く生々しく感じられるはずだ。

 来季にリベンジすれば良い? それは綺麗事だ。

 ほぼ手中に収めていた20冠目のタイトルを、土壇場で逃した。この事実から目を背けてはならない。涙を流してピッチに座り込むのではない。厳しいようだが、泣くのは単なる現実逃避だ。もちろん、時には泣き叫ぶことも必要かもしれないが、それだけでは足りない。

 どうして負けたのか、何が足りなかったのか……それを突き詰めて考える。この「答え」をおぼろげでも見つけ出し、ようやく前へ進める。

 そう、この敗戦を正しく真正面から“受け止める”ことである。苦しくとも、まずは、ここから始めるしかない。

 間違っても「勝ち点72取れたのだから、よくやった」などと慰めを求めてはいけない。全34試合のうち、たとえ33連勝したとしても、残り一試合で敗れて優勝を逃せば何の意味もない……そう考えるのが、鹿島というチームだったはずだ。

 リベンジを期す2018シーズン——個人的には、少しも楽観視できない。

 昨季、川崎との“2強独走”は、浦和レッズガンバ大阪といった「従来の」ライバルチームの不調によるところが大きい。しかし、今季はそういうわけにはいかないだろう。さらには柏レイソルセレッソ大阪といった新興勢力も、昨季以上に戦力を整えつつある。

 翻って鹿島はどうか。

 攻撃陣は、現状ではまだまだ金崎夢生頼りである。助っ人外国人は、レアンドロは活躍したが物足りないし(肝心のラスト2試合では無得点)、ペドロジュニオールは怪我もあり不完全燃焼。生え抜きの土居聖真は、明らかに伸び悩んでいる。遠藤康も、攻撃陣の中核を担うには力不足だし、鈴木優磨もスタメンで使うには不安な部分がある。

 守備陣は、相変わらずレギュラーと控えの差が大きい。もっと言えば、レギュラーの植田直通もまだまだ安定感に欠ける。昌子源も成長したとはいえ、かつて鹿島のCBとして活躍した秋田豊中田浩二ほどの凄み、存在感はまだ感じられない。

 最も問題なのは、中盤だと思う。小笠原満男を除いて、誰も中盤でゲームメイクをすることができない。パスが上手いだけ、ボール奪取に長けているだけの選手はいても、ゲームそのものを“動かす”ことのできる選手が、現時点で誰も育っていないのだ。レオシルバも、三竿健斗も、永木亮太も、ボランチとしての能力は高いが「司令塔タイプ」ではない。

 多くの方が指摘しているように、私もラスト2試合で小笠原を起用しなかった大岩剛監督の采配は、はっきり言ってミスだったと考える。しかし、意図は分かる——おそらく「小笠原抜きでも優勝できた」という事実を手に入れたかった。そうすることで“結局は小笠原頼み”という現状から脱却し、チームとしての底力を上げたかったのではないかと想像する。

 だがそれは、監督がするものではない。単に他の選手を起用したり、システムを変更したりして、意図的に行えるものではないと思うのだ。

 我こそは小笠原満男の“魂”を受け継ぐという自負と覚悟を持ち、周囲にもそのことを認めさせるだけの力を見せ付けられる存在が、自然に現れなければ。かつて日本代表で、中田英寿本田圭佑が、その実力とパーソナリティの強さを以って、チームの主役の座を掴み取ったように。もっとも……それだけの可能性を感じさせる選手が、レギュラークラスの中には見当たらないが。

 個人的には、かなりの苦戦を予想している。昨季あれだけ勝ち点を取れたのは、川崎以外のチームが早々に優勝争いから脱落したことと、無関係ではない。ここにあと数チームが絡んでくれば、そう簡単に勝たせてはもらえまい。もっと勝ち点を削り合う展開になるのではないか。そんな“神経戦”に、今の鹿島が耐えられるだろうか。

 勝ちきれない試合が続けば、最悪の場合——シーズン前半で監督解任もあり得る。その場合、大岩監督を続投させたフロントは、どう責任を取るのか。まさかと思うが、もう「内部昇格」というのは止めるべきだ。昨季の失態で、“二匹目のドジョウ”がいるものではないと分かったはずだろう。

 楽観はできない。それでも、再び立ち上がらなければならない。

 鹿島がタイトル数で他の追随を許さないのは、どこよりも「強かったから」ではない。どのチームよりも“負け”を正しく受け止めてきたから、その悔しさと教訓を、次へエネルギーに変えることができた。

 そう、鹿島の歴史は“栄光の歴史”などでは決してない。手痛い敗戦を幾度も味わった、苦い記憶の積み重ねである。だが、その度に這い上がってきた。

 このエントリーを書いている最中、日付が変わり、年が明けた。時はすぎてゆく。しかし、この敗北の苦さを忘れてはならない。

 さぁ、いよいよ2018年——鹿島アントラーズにとって“復讐の年”の始まりである。