恥じることはない。胸を張って沖縄に帰ってきて欲しい。
スコア上では0-7、完敗である。しかし終盤まで、内容では互角に渡り合えていたし、ほんの少しツキがあれば流れが変わっていたかもしれあい。幾つかミスもあったが、それを補ってあまりある好プレーも、随所に見られた。
何よりもゲームセットの瞬間まで、バッテリーを中心に勇気を持って戦っていた。結果的に大差となったが、腰の引けたプレーで相手のパワーに呑まれてしまった昨年とは違う、力を出し切った充実感のある敗戦だった。
持てる力を出し切り、それでもなお望む結果が得られるとは限らない。時には、相手の力に屈し、涙を飲むしかないこともある。これが勝負の世界の厳しさだ。
それでも……どんな結果に終わろうと、結果として大敗を喫してしまったとしても、やるべき事をきちんとやり切り、臆せず最後までプレーすることができたのならば、素直に讃えたい。私は君達を、心から誇りに思う。
だからどうか、顔を上げて欲しい。その上で――宮城大弥ら1,2年生のメンバーには、考えて欲しい。どうして負けてしまったのか。決して悪いパフォーマンスでなかったにも関わらず、なぜ1点も奪えず大差を付けられてしまったのかを。
一言で表現すれば、それは“プレー精度の差”である。
興南は、本塁のクロスプレーで二度タッチアウトとなった。一方、相手の木更津総合はいずれも生還し、着実に得点を重ねていく。甘く入った球を相手は広角に打ち返していたのに対し、こちらは何度かミスショットもあった。さらに、相手がホームランなど長打で効率よく得点を奪ったのに対し、こちらは外野の頭を越した打球が一本もなかった。
投手陣についても、同じことが言える。木更津総合の先発・野尻幸輝は、少々高めに入っても球威で押し切っていたが、興南は宮城と藤木琉悠の両投手とも、厳しいコースを突いても相手の巧みなバットコントロールに捉えられる場面が多かった。
すわなち、チーム戦術だけでは賄いきれない部分。個人能力の差が、そのまま要所でのプレー精度の差となって表れてしまった。ならば……今後取り組むべき事は、一つしかない。
個人でも強豪校の選手と対等に渡り合えるように、レベルアップする。かつて春夏連覇を達成した先輩達が「島袋頼み」からの脱却を図り、冬場のトレーニングを経て、まるで別のチームへと生まれ変わったように。
悔しさをバネに……とは、よく言われることだが、実際に成し得る者はそういない。だが興南ナインは、昨年の逆転負けのショックから立ち直り、再びの甲子園の舞台で、昨年とは違う成長した姿を見せてくれた。だから彼らには、リベンジを誓う資格がある。せっかくだから、夢はもっと大きく。
そう……2010年春夏以来の、三度目の全国制覇を。今年の悔し涙を、来年は喜びの笑顔に変えてもらいたい。