前回に続いて、今回も「プレバト!!」【冬麗戦】の結果分析について、自称・スーパールーキー「南風の記憶」が、(自分の俳句キャリアの浅さも弁えずに)好き放題に語っていく。
(※前回記事は、以下のリンクより。)
今回は、下記③~⑤の項目となる(なお①・②については、上記リンクを参照されたし)。それでは、再び「南風の記憶」氏にご登場いただこう。
②覇者・東国原英夫の底知れぬポテンシャル ③安定して昇格・昇段していきそうな芸能人俳人 ④今後がやや心配な芸能人俳人 ⑤今年大ブレイクしそうな芸能人俳人 |
準備が整ったようだ。それでは読者諸君、どうか(「コイツ何言ってるんだ」等のツッコミはご自由に)最後までお付き合いいただければ幸いである。
③安定して昇格・昇段していきそうな芸能人俳人
3位に入ったフルーツポンチ・村上健志は、さすがの技術力であった。夏井先生が「この人はホンモノです」と認めただけのことはある。ワタクシも彼の句を見た瞬間、「やっぱうめぇな」と呟いてしまった。
「まだ白い明日の並ぶ初日記」(村上健志:第3位)
→添削ナシ
何気ないようだが、かなり難しい技を使っている句である。これは“初日記”という季語のことだけを詠んでいる――そう、「一物仕立て」という型だ。
さらに、「明日が並ぶ」という比喩――あの梅沢も失敗するほど、俳句において比喩を用いることは難しい。それを村上はサラリとやってのけている。
比喩があまり前に出すぎると、くどい句となってしまうのだが、あくまでも何気なく、それでいて明日への期待感が感じられる表現に仕上げているのが、彼の俳人としてのチカラを示している。これはもう、お見事と言うほかない。
もう一人、Kis-My-Ft2横尾渉の句にも、安定した技術力を感じさせられた。
→添削ナシ
ご覧の通り、「季語+や」で上五を作り、後半はカットを切り替えて別の情景を描写し、取り合わせる――まさに俳句の“基本の型”を忠実に守った、とりわけ俳句初心者にとってお手本となる句である。
もちろん、ただ基本に忠実というだけではない。中七・下五の「エース区間の九人抜き」という描写も丁寧かつ具体的だ。
驚異的な走りを見せるランナーの躍動感だけでなく、周囲の観客のどよめき、実況アナウンサーの興奮した声さえ聴こえてくる。こちらも、文句なく巧い句である。
村上・横尾の両者に関しては、多少の停滞はあるだろうが、概ね安定的に昇格・昇段を重ねていけるのではないかと思う。
特に村上は、後述する“ある理由”も相まって、年内には確実にトップ3を争う位置にまで食い込んでくると思われる。もちろん横尾君にも期待しているが、彼の場合はKis-My-Ft2の活動状況・スケジュール具合にもよるだろうか。
ただし、二人はどちらかと言うと“アベレージヒッター”タイプである。安定して巧い句を作るチカラを持っているし、大崩れはしないのだが、タイトル戦のような一発勝負となると、どうしてもインパクトで負けてしまいがちなのが悩ましい点だ。
④今後がやや心配な芸能人俳人
下位に沈んだ三人のこと……では、ない。三人に関しては、順位が低かった理由はそれぞれハッキリしている。
7位の中田喜子は、単純な「助詞の選択」のミス。8位のミッツ・マングローブは、「発想の平凡さ」と「語順」のミスだ。
そして、最下位の千賀健永に関しては、指摘されて初めて「これも季語なのか!」と気付くパターン――そう“季重なり”だ。
千賀の句について、もう一言付け加えるとすれば――巧い句を作ろうと力み過ぎである。「椰子の実」「露」「冬の虹」「花瑠璃(ホノルル)」……あまりにも言葉を詰め込み過ぎた。これでは、何が主役の句なのか分からない。
まぁ、三人とも“初心者あるある”なのだ。キャリアの浅い時期には、誰しもやってしまいがちなコト。だがこういうミスは、練習を積めば自然に改善していく。めげることなく、次の俳桜戦でのリベンジを期待している(笑)。
このワタクシが、本当に心配した――「ちょっと重症かも」と思ってしまったのは、6位のフジワラ・藤本敏史である。
「ごんぎつね聴きいて寝落つ雪模様」(藤本敏史:第6位)
→<添削後>「ごんぎつね聴きつつ眠る雪模様」
いや、内容そのものは彼らしい、身近な材料を使った「優しい句」ではある。
らしい句では、あるのだが……「聴きいて」「寝落つ」の言葉の選択ミスにより、金秋戦に続き今回も上位を争うことができなかった。
ついでに言わせてもらうと……夏井先生からの指摘はなかったが、個人的には、下五の「雪模様」も気になった。
指摘されなかったということは、言葉自体に問題はないのだろうが、今までの具体的な描写の句を作ってきた彼にしては、曖昧な気がする。フジモンらしくない。例えばだが、ここは「雪しずか」と置いてみた方が、句の優しい雰囲気に合っていると思うのだが、いかがだろうか。
<推敲例>「ごんぎつね聴きつつ眠る雪しずか」
いずれにしても、「どうしたのだ」と言いたい。
「難しい言葉」を使わず、それでいて内容にあった言葉を選び取るセンスは、むしろ彼の長所だったはずではないか。
どうもこの頃、細かい部分での言葉の精度が、かなり落ちてきているように感じる。
フジモンといえば、次の二作品だろう。どちらも語の細やかな選択が見事な句だ。
「羊群の最後はすすき持つ少年」
「節分のセンサーライトが照らす闇」
赤に色を変えた部分は、いずれも夏井先生から絶賛された箇所だ。
こうした一語・一音を選択する感覚の鋭敏さが、昨年からあまり感じられなくなった。この点が、最近では村上や横尾に順位で上回られることが増えてきた要因だろう。
まぁ人気芸人として多忙な日々を送るフジモンのこと、あまり俳句にエネルギーを注ぎ込む時間的・精神的余裕がないのかもしれない。ワタクシも彼の句のファンの一人として、俳人・藤本敏史の復活を期待したいのだが、果たして。
⑤今年大ブレイクしそうな芸能人俳人
まず取り上げたいのが――今回は助詞のミスにより下位に沈んだが、ミスさえなければ「1位、2位を争っていた」と夏井先生に言わしめた、中田喜子である。
「節の香の光る結露や甘きこと」(中田喜子:第7位)
→(添削後)「節の香に光る結露の甘からん」
この句が画面に出た瞬間、ワタクシ(ある程度俳句をかじった方なら同じ反応をなさったのではないか)思わずこう叫んでしまった――「何でそこで“切る”んだよ!」と。
切れ字の“や”は、すぐ上の語を強調するだけでなく「カメラのカットを切り替える」時に使う。
しかし、「結露が甘そうだ」と言いたいのに、「結露」と「甘きこと」を別々のカットにしてしまったら、意味がつながらなくなってしまうではないか!(笑)
生意気を言うようだが(汗)、この時のワタクシの気持ちは夏井先生と一緒だった――「ああ、何てモッタイナイ」と(苦笑)。
が……ここまで惜しまれるというのは、それだけ大きな可能性を秘めていたということ。より具体的には、“発想力”の豊かさである。
発想力は素晴らしいのだが、技術が伴わずなかなか良い評価が得られない――このパターン、どこかで聞いたことがないだろうか?
そう……この【冬麗戦】の覇者・東国原と似たような変遷を辿っているのだ。
キャリアの浅い頃は、発想に技術が追い付かず、失敗を重ねてしまうことがあっても仕方がない。だが東国原がそうであったように、発想力の豊かな人は、技術が追い付いてきた時に“スゴイ句”を生み出す可能性がある。
さらに 、もう一人……
早くから発想力を夏井先生に認められながら、当初技術が伴わず失敗を繰り返してきた。ところがここへ来て、急激にチカラを付けてきたと目される人物がいる。
その人物こそ、ワタクシが「今年は来るんじゃないか」と最も注目している芸能人俳人である。
奇しくもその人物は、先の【金秋戦】にて「東さん(東国原)の句に似てきた」「侮れない」と、あの梅沢から最大級に警戒されている。
ワタクシと同様の感想を、おそらく多くの視聴者が抱いたことと思う。
そう、千原ジュニアである。今回の【冬麗戦】において、最も鮮烈な印象を受けたのは――彼の今まさに加速しつつある、俳人としての成長度合いだった。
「皸に窓の結露を吸わせけり」(千原ジュニア:第2位)
インパクトの差で、僅かに東国原には及ばなかったものの、技術レベルでは同等かそれ以上ではないかと思う。
一見、何気なく書いているように思われるかもしれない。しかし、夏井先生が2位に選んだだけあって、かなりハイレベルな句である。一読しただけで、すぐさま光景が立ち上がり、さらにその背景を色々と想像してしまう。
番組内で語られていたが、ただの水では「沁みて痛いだろうから、結露でそっと癒したかった」とか。ちなみにワタクシは、皸(あかぎれ)を「結露を吸わせ」るという行為から、その人物の心情の孤独さを思い、何ともいえない気持ちになった。
もちろん人物の心情までは書かれていないが、つい想像を膨らませてしまう……それが、この句のチカラなのだろう。
映像をきちんと描き、なおかつ読み手に色々と想像させるチカラを持つ――梅沢名人じゃないが、“これが俳句”だとワタクシは思う。
現状の地位こそ「特待生3級」だから、もしかしたら実力はすでに、梅沢や東国原に迫る所まで来ている気さえする。事実、優勝した東国原も「これは強敵」だと認め、さらに以前梅沢も「(千原ジュニアの)この感性は侮れない」と警戒し始めていた。
元々“発想力”では、夏井先生にも一目置かれていた。最近では、そこに俳句の“技術”が伴ってきたことで、秀句を連発するようになった――この変遷、実は東国原とまったく一緒なのである。
今年の「プレバト!!」は“ジュニアの年”と呼ばれるのではないか。そんな予感さえ漂う大躍進ぶりであった。
ココがポイント! ~ 「プレバト!!」【冬麗戦】総括 ~ ①絶対王者・梅沢富美男の敗因は、難しい「比喩」を用いて失敗したこと。しかし、そのチャレンジ精神は讃えよう! ②覇者・東国原英夫の、時事用語をキチンと詩の言葉とし、人々の心を揺さぶる一句に仕上げた力量・まさに恐るべし。 ③村上健志・横尾渉の安定した技術力の高さは「さすが」の一言。 ④下位の中田喜子、ミッツ・マングローブ、千賀健永のミスは“初心者あるある”。めげることなく次へのチャレンジを! ⑤細部の言葉の精度が落ちてきている藤本敏史が、少し心配。 ⑥千原ジュニア・中田喜子の二人は、発想力の豊かさという点からして、期待大。特に俳人としての成長度合いが加速してきたジュニアには、要注目! |