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第5話「わざと……」の巻
小気味よい音が響いた。それから数秒も経たないうちに、白球がレフトフェンスの遥か上を越えていく。
「ツーラン。これで一点差か」
倉橋が、吐息混じりに呟いた。
「さすが専修館。そう易々と負けるわけないか」
三塁塁審が、右腕を大きくグルグルと回す。専修館の打者が、二塁まで進んでいた走者に続き、ゆっくりとダイヤモンドを一周する。
「でも……倉橋さん、見て下さいよ」
マウンド上を凝視しながら、イガラシは言った。
「明善のバッテリー、ニヤニヤしてますよ。あれって……まるで堪えないんじゃ」
「イガラシの言う通りだな」
ベンチの右端に座った谷口が、大きくうなずく。三人の視線の先には、明善バッテリーがマウンド上で、何か話しながらくすくす笑っていた。
「見ろよ。ホームランに堪えてないどころか、気にもしていないって顔だぞ」
「うむ、確かにそうだな。ありゃ、たまたま失投を打たれて『やっちまった』ってツラか、もしくは」
その先を促すように、倉橋がこちらに視線を向ける。イガラシは即答した。
「何か新しい変化球を試して、すっぽ抜けたのか」
「ご名答。さすが中学選手権の優勝投手だな」
「からかわないで下さいよ。前に、近藤が……中学の後輩が、時々やってたので」
図体のわりに、どこか締まりのない顔つきの後輩を思い起こす。
近藤茂一(しげかず)。後任キャプテンとして、イガラシが自ら指名した男だ。消去法で選んだとはさすがに言えないが。それでも今となっては、やはり悪くない人選だったと思う。
内心さほど期待していなかったから、近藤率いる“新生”墨谷二中が、二年ぶりの中学選抜大会でベスト8と健闘した報を聞いた時は、さすがに驚いた。
だが、それ以上にイガラシを感心させたのは、近藤のチーム作りの手法だった。
――なぁ兄ちゃん、聞いてくれよ。近藤さん、選抜まであと二週間もないってのに、まだ正式なレギュラーを決めないんだよ。兄ちゃんなら、絶対あんなやり方しないだろう。
弟の慎二が、よく愚痴っていたのを思い出す。どんな話を聞かされても、イガラシは「今のキャプテンは近藤なんだから、好きにさせてやれよ」と取り合わなかった。その度、慎二は「まさか兄ちゃんが、近藤さんのやり方を認めるなんて」と目を丸くした。
認めるも何も……俺だって、本当はそうしたかったんだよ。
丸井から新チームのキャプテンとして指名された時、イガラシは「自分達の代の目標は“全国優勝しかない”」と覚悟した。
前年、青葉の不正による“繰り上げ決勝戦”を制し、記録上は全国優勝校となったものの、イガラシも他のナイン達も、たった一試合の勝利でそれを誇る気にはなれなかった。
ところが、翌年の選抜大会では初戦で敗れ、夏の大会では都大会決勝でリベンジに燃える青葉を死闘の末下したものの、故障者が続出し全国大会を棄権。次代で全国優勝を果たすことは、もはや墨二中野球部の“悲願”であり、目指すことが必定の流れとなった。
だから、多くの犠牲を払い、それを掴みにいった。
犠牲にした諸々の中で、最も内心の葛藤が大きかったのは、「育成」である。入部して間もない一年生を、一日も早くレギュラークラスに引き上げるため、練習に付いてこられない者には容赦なく“失格”を言い渡した。
それでも、内心「もっとじっくり教えてやれれば、後で伸びてくるかもしれないんだがな」という思いがよぎることが、幾度となくあった。
結果として、ずっと欲しかったモノを手に入れることはできた。
だが、後継の者にまで同じことをさせたいとは思わなかった。栄光と引き換えに、犠牲にした諸々の大きさを感じずにはいられなかったのだ。
もう勝たなくて良い、とまでは言わないが、そこだけに固執する必要もない。そう、次の者には、もっと長い目で、もっと広い視野で以て、チームを作り上げて欲しい。
こちらの思いを、近藤がどこまで感じ取っていたかどうかは分からない。というより、おそらく何も考えていなかっただろうが。それでも結果的に、近藤はイガラシの内心望んだ方向で、チームの舵取りを行っているようだ。
頼むぞ近藤。俺の野球とは違う「正解」もあるってことを、おまえが見せてくれ。
「うわっ、簡単に打ち上げちまった」
倉橋の嘆くような声に、現へと引き戻される。
三人の視線の数十メートル先で、明善の二塁手がグラブを頭上に構えていた。凡フライを難なく捕球し、スリーアウト・チェンジ。
「無死からツーランで追い上げた時は、一気に畳み掛けられると思ったのに。その後はたった五球でスリーアウトか……なぁ倉橋、覚えているか?」
谷口が腕組みをしながら、問うている。
「あの“ナチュラルカーブ”だろ、忘れるもんか。打てると思って打ちにいったら、そこから小さく曲がって引っ掛けたり、打ち上げたりしてしまうんだ」
「えっ、本当ですか」
思わず声を上げていた。途端、倉橋に睨まれる。
「何だよイガラシ。急に大きな声出して」
「あのピッチャー、去年から明善のエースを?」
「うん? あぁ、そういうことになるな。キャッチャーは代わっているが……悪いがイガラシ、うちは明善と対戦したものの、実際のところ、詳細はよく知らないんだよ」
倉橋が、吐息混じりに言った。
「知らない? 墨高……というか、谷口さんらしくないですね。谷原とも接戦を演じるほどチカラのあるチームに対して、何の対策もせず臨んだっていうんですか」
「そうイキリ立つなよ。言ったろ、去年の俺達は専修館を倒した時点で、もう限界だったんだよ。何せうちは、俺と谷口が入部するまで、万年“初戦負け”のチームだったんだからな。準々決勝まで進めただけでも、奇跡ってモンさ」
「……なぁ、イガラシ」
しばらく沈黙していた谷口が、おもむろに口を開く。
「おまえが、そんなに明善にこだわるのは……さっきの記者さん達の話を聞いたからか? あの、明善が『夏のダークホースになるかもしれない』っていう」
「へぇ、そんな話までしていたのか」
興味を引かれたらしく、倉橋が目を見開く。
「それもあるんですが、もう一つ。清水さんっていう記者の人が、言ってたじゃないですか。『今の明善は、墨谷にとって何かしらのヒントが得られるかもしれないチームだ』って」
「ほうっ、なかなか面白いことを言うじゃねぇか。その、何とかっていう新聞の記者さんは」
「『大東京新聞』の清水さんです」
倉橋の口調が可笑しくて、イガラシは笑いながら言った。
「よく名前まで覚えていたな。いくら、前にも取材を受けたことがあるからって。けどよ……いくら大手新聞社の記者だからって、見た感じまだ三十手前の“兄ちゃん”だろ。しかも童顔だし」
「おい、顔は関係ないだろ」
谷口が苦笑いを浮かべる。
「それに、高校生が三十前後のオトナを捕まえて“兄ちゃん”だなんて」
「なぁ谷口。ツッコミはもうちょっと、テンポよくやるもんだ。これじゃ後輩の手本になんねぇぞ」
「よしましょうよ、倉橋さん。元々……キャプテンにそういうことは、期待してないので」
「き、期待してないって。そんな」
「イガラシ、それでフォローのつもりかよ。谷口の奴、余計へこんじまったぞ」
「……違うぞ倉橋。イガラシの場合、絶対わざと」
「ちょっと二人とも、いい加減にして下さいよ。話が全然進まないじゃないですか」
辛うじて笑いを堪え、イガラシは先輩二人の会話に割り込んだ。
「スマンスマン。けどよ、イガラシ。そもそも記者なんて連中は、あることないこと言い立てるし、書きたがるもんだ。いかに大手だからといって、鵜呑みにするもんじゃない」
「分かってます、倉橋さん。ただ……あの清水さんっていう記者、野球を見る目は、確かだと思います」
「へぇ……随分、その人のことを買ってるんだな」
谷口は、物珍しそうに言った。そこに倉橋が相槌を打つ。
「丸井の奴は、さっきボロクソにけなしてたけどな。おまえが取材に呼ばれた後も、『墨谷二中じゃなく和合の優勝だと予想して、見事に外しやがった』とか何とか言って、しつこく吼えてたぞ」
「予想の当たり外れは、別に問題じゃないと思います。実際、辛うじて勝てたとはいえ、和合はかなり手強かったですから。それに……あの人だけなんですよ」
快音が響く。明善の先頭打者が、初球を引っ叩いた。鋭いライナーがレフト線を襲い、フェンス手前でワンバウンドする。打者走者は、楽々二塁を陥れた。
「……あの人だけって、何が?」
「僕らが、何かと批判を浴びながらも、猛練習を続けた理由ですよ」
谷口の問いに、イガラシは専修館バッテリーの余裕なさげな動きを目の端にしつつ、淡々と答えた。
「他のところは、みんな“努力が実を結んだ”だの“悲願の優勝”だの、美談仕立ての記事ばかりで。でも……清水さんの記事には、ちゃんと理由が書かれてたんです」
――準々決勝以降の三試合、墨谷二中はいずれも苦戦を強いられた。
しかし、彼らの本領は、むしろ消耗の激しい試合終盤に発揮される。疲労から相手にミスが出始める一方、墨谷二中ナインは逆にそれまで以上のベストプレーを見せた。
それを可能にしたのは、過酷とも思える連日の猛練習である。おそらくキャプテンのイガラシ君以下、墨谷二中ナインは、大会終盤のこういう展開を予測した上で、それを乗り越えるためには並外れた体力が必要だと判断したのだろう。
記事を読んだ時、へぇ……と呟いていた。その内容は、イガラシが考えていたこと、実際に常日頃ナイン達に言っていたことと、ほぼ同じだったのだ。
その旨を話すと、谷口は「なるほど」とうなずく。
「確かに、見る目あるな。ああいう練習をすると、大体めちゃくちゃ褒めて、イガラシの言う“美談仕立て”にするか、逆に“無意味なシゴキ”だの“非人道的”だのってムチャクチャ叩くか、両極端に分かれる。そうじゃなく、ちゃんと意図を理解してたってわけか」
「感心してる場合じゃないぞ、谷口」
からかうように、倉橋が口を挟む。
「練習の過酷さでは、おまえもイガラシに引けを取らないからな。何か事故でも起きてみろ、責任取らされて出場辞退なんてことも」
「ばかっ。やめろって倉橋」
谷口が慌てて、倉橋の言葉を遮る。
「ん、何ムキになってんだよ。俺、何かマズイことでも言ったか」
どうやら倉橋は、イガラシ達が「練習中の事故」により、本当に中学選抜大会の「出場辞退」に追い込まれていたことを知らなかったらしい。
今さら気にしませんよ、という意思表示のつもりで、イガラシは軽く右手を振った。伝わったらしく、谷口が安堵のため息をつく。
「何だよ、今の妙な間は。気持ち悪いな」
倉橋がわざとらしく、不機嫌な声を発した。
「……別に。倉橋さんて、意外と抜けてるトコあるんですね」
「んだと? おまえ、先輩をからかうたぁ、いい度胸じゃねぇか」
「からかってません。ちょっと抜けてるくらいの人の方が、親しみやすいじゃないですか」
「けっ。鉄仮面みてぇなツラのおまえに、言われたかぁないね……って、マジかよ」
ふいに倉橋が、顔色を変えて立ち上がった。その直後、バァンという衝撃音が響く。
スコアボードを直撃した白球が、センターバックスクリーン下へ落下していく。三塁塁審が、再び右手を大きく回した。六回の表裏の枠に、数字の「2」が縦に二つ並ぶ。
マウンド上では、専修館の現主戦投手・加藤が両手を膝についている。専修館の捕手が、アンパイアに何か告げる。ほどなくして、投手用グラブを嵌めた背番号「11」の選手が、マウンドへと走る。入れ替わるように、加藤はベンチへと退く。
被本塁打という結果は同じにも関わらず、直後の光景は、明善バッテリーとあまりにも対照的だった。
「あーあ、だらしねぇな」
ふいに後方から、聞き覚えのない声が降ってきた。振り向くと、端正な顔立ちをしたウインドブレーカー姿の青年が、バックスタンド上段へと続く階段を下りてくる。かなりの長身だ。見た目でも180センチメートルは、優に超えている。
イガラシは知らない顔だったが、谷口と倉橋はすぐに反応した。帽子を取り、深く一礼する。
「百瀬さんじゃないですか」
イガラシも慌てて、二人に倣う。頭を上げ、傍らの倉橋に尋ねた。
「誰です?」
「昨年うちが戦った、専修館の主戦投手だった、百瀬さんだよ。現役の頃は、都内で三本の指に入るとも言われた本格左腕だ」
「よく言うぜ、そのキャッチコピーを台無しにした張本人のクセによ。嫌味にしか聞こえないぞ、倉橋……っと、そちらの初々しいボウヤは、墨高の可愛い新入部員クンかい?」
小ばかにする言い方にカチンときたが、努めて平静な口調で答える。
「……イガラシです。初めまして」
「はぁい、こちらこそ。さすが後輩教育が行き届いてるじゃないか、お二人さん。にしても……わざわざ偵察にまで連れてきたってことは、さぞ有望な新人なんだろうな。もっとも入学時点で騒がれたものの、モノにならず消えていった新人も数知れないが」
「僕なんかに構ってないで、百瀬さんは今すぐベンチ裏に行って、後輩教育の“補習”をなさったらいかがですか」
「なにぃ?」
きつい眼差しを向けられるが、構わず言った。
「チームの主戦投手が、膝に手をついて『もう限界です』なんて態度を見せちゃダメじゃないですか。僕のチームメイトは、主戦でなく控え投手であっても、マウンド上でああいう態度を取る者はいなかったですよ」
怒り出すかと思ったが、百瀬は小さくため息をついただけだった。
「こらっイガラシ」
谷口の方が、珍しく強い口調で窘めた。
「他校の先輩に、失礼じゃないか」
「……やめろよ谷口」
百瀬が、谷口の叱責を遮る。
「先に挑発したのは俺だ。俺を打ち負かした墨高の“期待の新人”が、どれほどの奴なのか、確かめたかったんだ。こっちの新人でもなく、とっくにチームの主軸になってなきゃいけない後輩が、あの通り情けないザマだからよ」
むしろ穏やかな目になり、百瀬は言った。
「ビビッて先輩の影に隠れたり、我を忘れて逆上するようなら、『おまえらの後輩も大したことねぇな』って、嘲り笑ってたんだけどよ。まさか、こっちの一番イタイところを突いてくるとは」
こちらに視線を戻し、百瀬は自嘲の笑いを浮かべる。
「イガラシとか言ったな。おまえの言う通り、マウンドでああいう弱っちい態度を見せちゃいかんな。残念ながら、俺の後輩教育は失敗したらしい」
「まだ本調子ではなかったんじゃないですか。夏の大会まで二ヶ月近くありますし、今は調整中だったんじゃ」
「調整? ははっ、そんな悠長なこと言ってられる状況じゃねぇよ、あいつらは」
谷口の助け舟さえ、きっぱりと拒んだ。
「昨年の俺みたいに、絶対的な主戦投手がいるわけじゃないからな。今日先発の加藤も含めて、三人で競争だよ。まっ俺に言わせれば、どいつもこいつもドングリの背比べだが。んなわけで、今日のような定期戦はエース獲りへ向けて、絶好のアピールチャンスってわけよ」
「それじゃあ、明善は“本気”の加藤から、五点も奪ったのか」
倉橋が、驚いた顔になる。百瀬は「やれやれ……」と、首を横に振った。
「本気も本気。調子自体は、別に悪かねぇよ。スコアボード見てみろ、前半の三回までは『0』が並んでるだろ。パーフェクトピッチングだったんだ。それが四回以降、ばたばた崩れて」
「ってことは、やっぱり明善が強いってことに」
イガラシが口を挟むと、百瀬は束の間考え込むような顔になった。
「うーん……そりゃあ、都内では明善も“強い”部類には入るだろうな」
どうやら、説明の言葉を探すのに苦労しているらしい。何度か間を挟みながら、ゆっくりと話した。
「ただ、強いっつっても、戦力的にはうちと同等か、うちの方が上だろうよ。まぁ確かに、あちらは昨年のレギュラーが多く残っているから、経験値では上回っているだろうが……はっ。だとしても、この結果は言い訳できねぇよ」
吐き捨てるように、百瀬は言った。
「四回だよ。四回の先頭打者と次の打者に、ボール球を続けて引っ叩かれたところから始まったんだ。ったく、“外す”球でも気ぃ抜いて投げるなって、あれほど言ったのに」
「なにっボール球を?」
倉橋が強く反応する。イガラシも、思わず息を呑んだ。
「なんだよ墨高諸君。対戦しといて、あいつらの特徴を掴んでいないのか」
百瀬は、呆れたようにため息をついた。
「まぁ昨年対戦した時は、そこの谷口君が疲労困憊で、わざわざボールに手を出さなくても打ち頃の球がぽんぽん来てたからな」
谷口が「面目ない」と、苦笑いを浮かべる。
「それなら気付かなかったのも無理はないか。とにかく、これが奴らの特徴……というより、“戦術”なんだよ。奴らは、わざと“ボール球を狙い打つ”んだ」
「なんだって」
「わざと、ボール球を……ですか?」
イガラシと谷口の声が、重なる。その直後、周囲から「おおっ」と歓声が上がった。
鋭いライナー性の打球が、右中間を深々と破る。満塁になっていたらしく、三人の走者が次々にホームベースを踏んでいった。加藤をリリーフした背番号「11」の投手が、ベースカバーも忘れて打球の行方を呆然と眺めている。
打者走者は、楽々と三塁を陥れた。三点タイムリースリーベースヒット。
「は、八対二……」
イガラシが呟くのとほぼ同時に、百瀬は天を仰いだ。
「あちゃー。こりゃ、今年もうちは八強に残れそうにないな」
背を向けると、百瀬は「邪魔したな」と言って歩き出した。そのまま、スタンドの出入り口の奥へと消えていく。
グラウンドに視線を戻す、すでにプレーが再開されていた。背番号「11」が、なお続投するらしい。その初球が、ホームベース手前でバウンドする。
思いのほか高く跳ね、捕手が後逸した。バックネット付近まで転々とする。これを見て、三塁走者はスライディングすることもなく、ようやくボールを掴んだ捕手の眼前で、悠々とホームに駆け込んだ。
「専修館投手陣、ボロボロだな」
倉橋がそう言って、頭を抱える。
「いくら練習試合とはいえ、こんな崩れ方をしたら……当分立ち直れねぇぞ」
眼前の信じ難い光景を凝視しながら、イガラシは必死に思考を巡らせた。
明善高が侮れないのは、よく分かった。谷原が苦戦を強いられたのも、専修館が圧倒されているのも、何となく分かる。
けど……それが俺達のヒントになるって、どういう意味なんだ。
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