南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

<考察>谷原に、意外な”死角”あり!?――ちばあきお原作『キャプテン』『プレイボール』関連コラム④

 

 原作『プレイボール』において、墨谷“最後の”相手となった強豪・谷原。

 

 作中には、他にも川北や東実、専修館等が強豪校として描かれている。しかし、谷原はその彼らをも凌ぐ、さらに別格の存在だ。

 

 なぜなら、他の強豪校が「シード校」ないし「甲子園にちょくちょく足を運ぶ」程度の描写であるのに対し、谷原は「甲子園でかつやくした」(文庫版『プレイボール』第11巻より)と書かれている。

 

 つまり、谷原は単に甲子園常連というだけでなく、甲子園で「優勝を狙える」レベルの、まさに全国屈指の名門校なのだ。

 

 ところが……その谷原に、実は“死角”がある。しかも、かなり分かりやすい部分に。

 

 試合経過を、今一度振り返ってみよう。後半の谷原の猛打ばかりが印象に残るが、それまでは墨谷が優勢だった。相手が補欠だったから? それはそうなのだが、少し視点をずらせば、次のような事実が浮かび上がる。

 

 つまり、谷原は「レギュラーと控えの差が大きい」ということが言える。

 

 念のため原作を読み返してみたが、やはりこの試合に先発したのは「補欠」だったと書かれている。青葉のように「二軍」ではないのだ。もしレギュラー陣に故障者が出れば、当然「補欠」から宛がわねばならない。

 

 とりわけ致命的なのは、投手陣だ。

 

 エース村井は、もちろん手強い本格派投手として描かれているが、問題は“二番手”の野田である。墨谷の上位打線に搔き回され、監督に「どうりで野田ではつうじんわけだ」とハッキリ言われている。

 

 おまけに、頼みの村井にしても、そこまで完全に墨谷打線を抑えられたわけではない。対戦した島田には「けっしてミートできねえタマじゃねえ」と言われているし、イガラシには(アンラッキーとはいえ)ヒットを打たれている。

 

 結果的に大差が付き、余裕がある中での投球だったので、六回以降は「0」に抑えたられたが……もっと緊迫した展開の終盤なら、分からない(だから選抜甲子園も「優勝はできなかった」のだと、個人的には思っている)。

 

 だから、谷原を「一発勝負で倒す」というだけなら、もちろん困難ではあるものの、そんなに夢物語ではないと思う。よく研究し、粘り、最後まで諦めず……つまり“墨谷らしく”戦うことができれば、十分可能だろう。

 

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