南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

課題を修正できた沖縄尚学、修正できなかった沖縄水産の明暗分かれる! <2019年 選手権・沖縄県大会>

【目次】

 

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 今日(2019.7.14)の三回戦にて、第2シード・沖縄水産が、今大会はノーシードに回っていた沖縄尚学に敗れる“波乱”があった。これでシード4校のうち、実に3校が敗退。あとは第1シードの興南を残すのみである。

 

 1.昨秋の“ノーヒットノーランの衝撃”に紛れていた、両チームの課題

 

 個人的には、さして驚く結果ではない。

 

 昨年の県秋季準決勝で対戦した際には、沖水の国吉吹(いぶき)が快投。沖尚打線を何とノーヒット・ノーランに抑え、1-0と勝利している。

 

 もっとも、私はその試合を観戦したのだが、国吉がさほど“圧倒的な投球”を見せたという印象はない。それよりも、沖尚各打者の淡白なバッティングが目に付いた。

 

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 結果としてノーヒットだったとはいえ、沖尚にも四死球や失策でチャンスは再三巡ってきた。ここで「一本出れば」という場面で、早いカウントから難しい球に手を出し、あっけなく凡打に……そんなシーンが繰り返される。

 

 国吉の投球がどうのではなく、むしろ沖尚の“自滅”に近かった。だから、次また対戦する機会があれば、さすがに修正してくるだろうと。

 

 また、沖水各打者のバッティングも気になった。沖尚の主戦・仲村渠春悟の緩急を駆使した投球に、タイミングを狂わされた。

 

 翌日の決勝で、沖水は興南の宮城大弥を打ち崩したのだから、けっして弱い打線ではない。

 

 ただ、宮城はどちらかというと速球主体である。さらに、この時の彼は本調子でなく、制球がイマイチだった。沖尚の仲村渠のような、制球力のある“軟投派投手”に緩急を付けられた時、それに対応する術をまだ身に付けていないのだと。

 

 このように、ノーヒットノーランという結果のインパクトが強すぎて、そこにばかり目を向けてしまいがちなのだが……実は沖水、沖尚の両チームともに、それぞれの課題が浮き彫りとなった一戦でもあった。

 

 

2.狙い球を絞った沖尚、また変化球にタイミングを狂わされた沖水

 

 迎えた今日の試合。課題を修正してきた沖尚に対し、修正できないまま臨んでしまった沖水。両者の間に、くっきりと明暗が分かれる結果となった。

 

 Youtubeにて「チバリヨー沖縄高校野球ch」さんがアップされたハイライト動画を見ていただいて欲しい。

 

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 四回表、沖尚が2点を奪い逆転した場面――連続適時打を放った水谷留佳、崔哲口(さい・てつい)の二人は、いずれも「真ん中から内側」のコースを狙い打っている。とりわけ水谷のバッティングは、肘を畳んだコンパクトに振り抜いた、まさに技ありの一撃だ。

 

 さらに九回のダメ押し点は、国吉の制球が甘くなったところを狙い打つ。またも水谷と崔の連続適時打である。

 

 どの球を狙うか。また、狙うと決めたら「迷いなく」振り抜けるか。それを見事に実行することができた。

 

 一方、沖水は幸先よく一点を先取したものの、その後は昨秋と同様、仲村渠の変化球にタイミングを狂わされ、簡単に打ち上げてしまったり、引っ掛けて凡ゴロに仕留められたりといった場面が目立つ。

 

 この辺り、まだまだ沖水は“新興チーム”なのだと感じた。能力の高い選手を擁し、彼らの力を生かす打順なりポジションなりを敷いてはいるのだが、細かい部分での詰めが甘い。この細部の詰めこそが、「最後の夏」には勝敗を大きく左右する要素となる。

 

 もっとも、それはどのチームも通る道ではある。沖水が今後も“古豪復活”への挑戦を続けるのか、あるいは「たまたまこの世代だけ良い選手が集まった」となるのかは、秋以降の彼らのチーム作り・戦い方に掛かっている。

 

 3.一気に面白くなった、沖縄“令和初の大会”

 

 前述したように、個人的にはさほど驚く結果ではない。ただ……いささか不謹慎な言い方だが、これで一気に「面白くなった」とは思う。

 

 下馬評通り沖水が順調に勝ち進むようなら、最後に迎え撃つであろう興南の優位は動かなかった。戦力の豊富さ、戦術の細やかさ、大舞台における経験値。……それらをすべて乗り越えるには、最近強くなり始めた沖水では、少々荷が重いように感じていた。

 

 しかし、ここに来るのが沖尚であれば、話は変わってくる。

 

 ここ数年は結果が伴わなかったとはいえ、沖尚の全国での経験値は、興南に匹敵する。さらに、沖尚には興南にない“強み”がある。

 

 すなわち、“一振りの精度”である。

 

 ここ十年来の傾向として――沖尚は、ファールで粘ったり四球を選んで何とか出塁したりといった“泥臭いバッティング”をあまり得意としていない。代わりに、甘く入った球を一振りで仕留める“精度の高さ”が、彼らの最大の強みだ。

 

 沖尚と対戦したチームのバッテリーは、競った展開で終盤にもつれ込むと「甘く入ればやられる」と力み、かえって制球を乱してしまう。

 こうして四死球で走者を出してしまい、焦ってストライクを取りにいくと、今度はそれを狙い打たれる――それこそ、沖尚の野球が一番強さを発揮できるパターンだ。

 

 興南の宮城大弥-遠矢大雅のバッテリーは、沖尚と対戦すれば、この「甘く入ればやられる」というプレッシャーと戦わなければならない。

 

 味方打線が大量点を奪っていれば別だが。しかし沖尚の主戦・仲村渠は、沖水戦の投球を見る限り、簡単に得点を許すような投手ではない。……このように考えていくと、勝負は案外分からない。

 

 少なくとも、これだけは言える。

 

 Twitterでも書いたことだが、昨秋1年生大会の戦いぶりを見る限り、沖尚復活は近い。問題は、それがいつになるか……ということだったのだが。

 

 今日の“シード校・沖水撃破”により、沖尚は復活のキッケケを掴んだ。次戦以降、彼らはさらなる自信と勢いを纏って、他校に襲い掛かっていくだろう。それだけは、確信を持って言える。

 

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