南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

<過去記事紹介>”夏に勝てない沖尚”からの脱却なるか!? (2019年 沖縄の高校野球)

【目次】

 

 

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0.はじめに

 

 沖縄尚学が、5年ぶりに夏の甲子園大会に帰ってくる。

 

 平成以降の沖縄高校野球を牽引してきたチームの一つが、この沖尚であることは、論を待たない。夏8回、春6回の甲子園出場。

 

 象徴的なトピックスを挙げるだけでも、99年・08年の選抜優勝。13年の明治神宮大会優勝。14年の春夏連続8強。

 まさに沖縄勢“躍進”の象徴とも呼べる存在である。

 

1.“夏”に勝てない沖尚

 

 ただ、この沖尚……なぜか“夏”に勝てないと言われ続けてきた。

 

 正確には、高確率で初戦突破は果たすのだが、どういうわけか「二勝目」の壁が高かった。選抜初優勝を果たした99年、“タレント軍団”と言われた05年、いずれも夏は二戦目で敗退。

 

 二度目の選抜優勝を果たした08年は、今度こそ夏も……との期待が掛かったが、県大会決勝で浦添商業との“世紀の一戦”に敗れ、千載一遇のチャンスを逃してしまう。久々の出場となった13年夏にも、やはり二戦目で惜敗。翌14年夏、ようやく初の二勝目を挙げたが、そこで力尽きたのか準々決勝で完敗。

 

 私は、沖縄の高校野球ファンの一人として、長年なぜ沖尚が夏に勝てなかったのかを考え続けてきた。その途上で、スポーツナビ+時代に記事を書いた。今と考えが多少違っている部分もあるが、以下に紹介する。

 

 

スポーツナビ+時代の過去記事より

 

<【選手権大会二回戦】沖縄尚学3-4弘前聖愛 戦評――“強者らしく”戦い、敗れた沖尚>

 

www.youtube.com

 

 

 

 前半五回を終了した時点で、私はほぼ負けを確信した。

 3点ビハインドを負っていたからではない。相手投手に、全くと言っていいほどダメージを与えられていなかったからだ。

 それでも、甘く入った球を狙い打って2点を返したのは、さすがの個人能力の高さである。だが、単発の攻撃で勝てるほど、「全国」は甘くなかった……

 

 沖縄尚学の敗因は何だったのか。それは、「外角の変化球にほとんど対応できなかったこと」に尽きる。

 

 弘前聖愛の主戦・小野憲生のベストボールは、外角低めに決まるスライダーである。特に右打者にとっては厄介な球だ。「真っ直ぐ」だと思って打ちにいくと、球が外に逃げて空振りするか、引っかけて内野ゴロを打たされてしまう。途中までは直球と同じ軌道だから、きちんと見極める必要がある。

 

 当然、このことは沖尚の選手達も分かっていたはずだ。おそらく対策として考えたのだろう――彼らは皆、打席に入るとベース寄りに立った。それは、小野の外角の変化球に対応しやすくする目的だったと思われる。

 

 狙いとしては悪くない。だが、その後が問題だった。沖尚はここで、“2つのミス”を犯してしまう。

 

 1つ目は、内角の際どい球に手を出してしまったことである。

 聖愛バッテリーは、沖尚の各打者が踏み込んで打ってきたためか、目線を逸らそうと内角も思い切り良く突いてきた。ベース寄りに立つと、当然体の近くでもストライクになる。これを嫌ったのだろうが……結果として詰まらされ、凡フライや内野ゴロに仕留められるシーンが目立った。

 

 では、どうするのが正解だったのか。答えは簡単で、真ん中より内側は「捨てる」のだ。

 

 本ブログで何度か書いてきたことだが、高校野球レベルでは「外角低め」付近への出し入れと、変化球を織り交ぜた「緩急」で勝負する投手が大半だ。

 

 たとえ内角へ投げ込もうとしても、半分程度は外れてボールになるか、甘く入ってむしろ打ちやすい球になってしまう。「内外角の厳しいコース」を自由自在に突ける投手というのは、ほんの一握りである。

 

 内角を捨てて構わないというのは、そういう意味なのだ。どうしても見逃しが嫌なら、せめて思い切り「引っ張って」ファールにすれば良い。とにかく、全てのコースも完璧に打とうとするのが間違いなのだ。

 

 2つ目は、外角の際どいコースの球をファールにできなかったことだ。

 

 試合を通じて、沖尚の各打者は外角のボール球を見逃すことはできていた。しかし、小野は「外角低めいっぱい」でストライクを取る技術が長けていた。だからボール球を見逃すだけでは、相手バッテリーに何らプレッシャーを与えることはできないのだ。

 

 実際、小野は外角低めへの直球や変化球で、易々とカウントを稼いでいた。2ストライク取られた後は、少々ボール気味でも手を出すしかなくなる。結果は、内角の直球を強引に打った時と同じである。

 

 そこで、「ファールにする」技術が必要なのだ。際どいコースをファールにし、球数を放らせれば、相手は他のコース・球種を投げざるを得なくなる。

 

 後は自分の打ちやすい球か、相手のコントロールミスを待てば良い。昨日の試合で言えば、「真ん中より外側の直球」と「甘く入った変化球」である。

 内角は捨て、外角の際どい球をファールにする。この2つができれば、よほどハイレベルな投手でない限り十分攻略できる。

 

 しかし、沖尚打線はそのどちらもできなかった。一方、聖愛の各打者はコンパクトなスイングを心掛け、ファールで粘りながら甘い球を狙い打ちしてきた。スコアこそ3-4と僅差だったが、安打数は5対12と倍以上である。両者の間には、決して小さくない差があった。

  

 もっとも、今日の沖尚の戦いぶりについては、彼らなりの「事情」があったのだと私は思う。

 

 沖尚は、言わずと知れた県内屈指の強豪校である。毎年のように、攻守両面において細かなプレーを様々に組み合わせた、非常にレベルの高い野球を展開する。ただ打撃面に関してだけは、ほぼ選手の能力にいつも託しているように思える。

 

 個々の能力が高い選手達を擁し、敵を正面から撃破する。まさに“強者の野球”である。これがハマった時の威力は凄まじく、それは2度の選抜制覇という実績にも表れているのだが……そうでない時は、意外とあっさり敗退してしまう。

 

 当然、この戦い方はリスクも高い。相手がこちらの力量を上回る時は、どうしても苦しい展開を強いられてしまう。今回も、その「伝統的な」負けパターンだった。

 

 ここから先は推測だが……おそらく沖尚の比嘉公也監督は、あくまで選手達の力を信じたかったのだと思う。だから、打撃面では統一した指示を出さず、個々人の判断に任せたのだろう。

 だから、結果だけで監督と選手達を責めるのも、詮無きことだと思う。

 

 沖縄尚学ナインは、最後まで“強者の野球”を貫き、そして敗れ去った。その堂々たる姿勢と、選抜大敗の衝撃からここまでチームを立て直した監督と選手達の努力に、今は拍手を送りたい。

 

 休む間もなく……もう来月には、来年の選抜出場が懸かる秋季大会が始まる。幸い、新チームには山城大智を始め、今大会で活躍した2年生も数多く残る。1つの勝ちと、1つの負けと……この貴重な経験を糧に、また甲子園の舞台へ帰ってきて欲しい。

 

※以上、過去記事より

 

 

3.当時との考えの比較

 

 あれから六年。沖尚に対して、当時と見方が変わった部分、変わらない部分とがある。

 

 まず、当時と変わらない部分について。沖尚のバッティングスタイルが、良く言えば選手個々人の特性を生かした、悪く言えば“個人技頼み”だという点。世代が変わっても、基本的に沖尚は“同じ野球”を展開している。

 

近年は、それが上手く嵌らないことが多く、実に四年間に渡り春夏の甲子園大会から遠ざかっただけでなく、過去二年間は夏大の4強にさえ残れなかった。

 

 一方で、大きく変わった部分もある。

 

 当時、私は沖尚が「個人技頼みの野球をしているから勝てない」と思っていた。

 対象的なのが興南である。興南は、基本的にはどの打者も大振りせず、コンパクトなスイングを徹底している。こちらは、巧いが「怖さがない」と感じることもある。ただ、全国レベルでは好投手が多いので、興南の方が“夏向き”だとは思っていた。

 

考えが変わったのは……近年、その興南が「勝てなくなった」からである。

 

4.今年のチームは、“力を磨く機会”が与えられた

 

 そこで、ここ数年の興南と、かつての沖尚と何か似通った点がないか、比較してみた。その結果……ただ一つ、共通項が見つかった。

 

 ライバルの“不在”である。

 

 過去、沖尚が夏の甲子園出場を果たした年、いずれも県内には強力なライバルが存在しなかった。ほぼ沖尚の“一強”状態で、スコア上の接戦はあっても、「少し間違えば負けるかも」というほどの切迫感はなかったはずだ。

 

 そして甲子園大会で、県大会とはレベルの違う相手に対応しきれず、力負けした。能力的には、上位校と比べても遜色なかったと思うのだが、ライバル校との激闘を経なかった為、力を磨く機会がなかったのだ。

 

 さて……沖尚、今年の夏は? 言うまでもない、興南と延長十三回の死闘を経験している。今回は、力を磨く機会が与えられたのだ。

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 さらには、前回出場時に「二勝目の壁」は突破しており、殊更プレッシャーに晒されることもない。

 

 だから、案外「行けるんじゃないか」と、個人的には思っている。

 

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