南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

”史上最弱世代”と自覚したことから始まった、沖尚の復活劇!――2019年・秋季沖縄県大会

【目次】

 

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1.沖尚前主将・水谷君の印象深いツイート

 

 夏の県大会終了後、沖縄尚学の主将・水谷留佳の以下の「史上最弱世代の主将」というハッシュタグの付いたツイートが流れてきた。

 

 誰が言い始めたのかは分からないが、彼は自らを「史上最弱世代の主将」と称していた。個人的には、まったくそうは思わないのだが、この時腑に落ちたのだ――ああ、キャプテンがこういう意識だったから、夏の沖尚は、あれだけの戦い方ができたのだな、と。

 

 ご周知の通り、今年の秋季沖縄県大会・準々決勝は、大荒れの展開となった。沖縄水産が嘉手納に3安打完封負けを喫したばかりか、美里工業も具志川に逆転負け。たった一日で、シード校が二つも敗退することとなる。

 

 しかし、沖尚は勝ち残った。

 

 相手に恵まれたわけではない。そもそも本部はシード校であり、新人大会では興南を下している。実際、沖尚は苦戦を強いられた。

 

 武器であるはずの守備が乱れ、また打線も思いきりよく攻めてくる本部高の投手陣を打ちあぐねる。さらに、エースの永山蒼が本調子でなく、リリーフ登板後に2点を失った。沖尚の比嘉公也監督自身「負けてもおかしくないゲーム」だったと認めている。

 

 それでも、結果的には勝ち切った。中盤に3点を奪い逆転すると、一点差に迫られたその裏、もう一点を追加し突き放す。永山も、最後は締めた。

 

 さらに――今日(2019.9.29)の、準決勝である。

 沖縄水産が僅か3安打に抑えられた嘉手納投手陣から、沖尚は五回までに15安打11得点を奪った。これは偶然ではない。

 

2.“史上最弱世代”と自覚した時から始まった、沖尚の復活劇

 

 その違いは、どこから来るのかと考えた時、冒頭の水谷のツイートを思い出した。

 

 史上最弱世代――そう称した裏には、間違いなく、自分達の無力さを感じた瞬間があったのだろう。その悔しさに、何度も歯噛みしたかもしれない。

 

 しかし、自分達は「弱い」と自覚した時点で、彼らは覚悟が定まったはずだ。自分達には何ができて、何ができないのか。さらには、勝つために何をすべきなのか。

 

 その一つの形が、“逆方向へのバッティング”だったのだと思う。

 

 おそらく、さほど多くの人の印象には残らないであろう、二回戦の浦商戦――私は正直、鳥肌が立った。

 

 沖尚の各打者が、明らかに右方向への意識を持ったバッティングに徹している。その結果、打ち損ねてもファールになる打球が増え、さらに内野フライが目に見えて減少した。

 

 もっとも、この打ち方は、すぐに結果が出るものではない。球威のないピッチャー相手には、かえって好きな球だけ狙って、振り回した方が、点は取れるかもしれない……実際、沖尚は準々決勝まで、さほど点は取れなかった。

 

 それでも……上のレベルで勝つためには、必要なのだ。好投手は、そう簡単に打ちやすいボールを投げてこないから、厳しいボールでも打ち返す術を身に付けなければならない。

 

 正直、沖尚には難しいと思っていた。なぜなら、彼らが県内では比較的、有望選手の集まるチームだからである。能力がある選手ほど、「自分の形」を持っている。そういう選手達にチームバッティングを要求するのは、きっと簡単なことではないのだろうと。

 

 だが……沖尚ナインは、それをやってのけた。もともと個人能力の高い集団が、あえて自分の得意型は脇に置き、勝つためのバッティングを躊躇なく行うようになった。これで、強くならないはずがない!

 

3.沖水と美里工の両チームは、負けの悔しさをエネルギーに変えろ!

 

 一方、前評判の高さを謳われながら、敗退した沖水と美里工の両チームは、さぞ悔しかったろう。しかし問題は、まさかの敗戦をどれだけ「悔しがれるか」ということ。

 

 もし、本気で悔しいと感じ、これから何をなすべきかを見出すことができたのなら、そのチームはまだ巻き返せる。夏の沖尚が、そうだったように。

 

―― 負け試合の悔しさで夜中に目が覚める……そんな思い、したことあんのか?

 勝つってのはそういう思いの結果なんだよ。

中原裕ラストイニング』(第1巻より))

 

 個々の能力、あるいはチーム戦術“だけ”を見れば、この2チームと沖尚は、どうにもならないほど大きな差があるとは思えない。普段の練習とて、高い意識を持って日々取り組んできたものと思う。

 

 ただ……「勝つために」何をすべきなのか。これを見出し、実行できるよう体に沁み込ませていく。そこまでの経験は、チームの歴史が浅い分、彼らはしてこなかった。沖尚との違いは、実はそれだけなのだと思う。

 

4.沖尚は、とにかく勝ち続けること!

 

 今日の勝利で、二年ぶりの九州大会出場を決めた沖尚。

 

 プレーに関しては、ほとんど言うことはない。日によって多少の好不調はあるだろうが、トータルで大崩れさえしなければ、九州でも良い戦いができるだろうと思う。

 

 あとはもう……とにかく勝ち続けること、そこに尽きる。どんなに良いプレーをしても、どんなに素晴らしい試合・好勝負を演じても、勝たなければ自信というものは付いてこない。

 

 今の沖尚は、少しずつ自分達のチームに手応えを感じ始めた段階だろう。これをより、確かなモノにするためにも、県決勝、さらには九州大会。最低でもあと三つ、必ず勝って欲しい。そうなれば、手応えは自信へとなり、さらに強いチームへと変貌していくはずだから。

 

 狼煙を上げろ。そして、燃え盛れ! 今こそ沖縄高校野球、復活の時である!!

 

 

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 ※小説も書いています!

<「続・プレイボール」~ちばあきお原作『プレイボール』もう一つの続編~>

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