南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』小ネタ集③ -「丸井刑事(デカ)」&「もしもキャププレ登場人物が戦国武将だったら」ほか-

 

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1.丸井刑事(デカ)<その1>

 

 (とある下町にて。おにぎりの形をした顔の男が、電柱の影より小道の向こうを伺う。グレーのジャケットにネクタイの姿)

 

※「太陽にほえろ!」のBGMにて

 

丸井(心内語):俺の名前は丸井。墨谷署の刑事だ。署の連中は“おにぎり刑事(デカ)”なんて呼びやがる。ショージキ気にいらねーが、ま、それはどうでも良い。とにかく今日も、街の平和のため、汗水流して駆け回っている。

 

(ドタドタと足音。大柄だが妙に愛嬌のある顔の男)

 

近藤:丸井はん、アンパンと牛乳買うてきました!!

 

丸井:バカ! 張り込み中に、でけぇ声出すんじゃねぇっ。(ゲンコツぽかり)

 

近藤:いててて……

 

丸井:気ぃつけろ、バーロイ。ま……買い出しご苦労(袋を受け取る)。ほれ、オメーも今のうちに食っとけ。(自分のアンパンと牛乳を取り、袋を返す)

 

近藤:おーきに。

 

丸井(心内語):コイツの名前は、近藤。俺の部下だ。

もうコンビを組んで三年目になる。当初はかなり使えねーヤツで、何度もゲンコツを喰らわせた。今でもちょいちょいヘマをやらかすが、それなりに刑事(デカ)として格好はつくようになった。

 出会った頃は、顔を見るのもイヤだったのだが、なんやかんや慕ってくれるコイツを、俺もだんだんカワイイと思うようになってきたのは、内緒だ!!

 

近藤:(アンパンを頬張りながら)せやけど丸井はん。本当にこんなところで、青葉組の取引があるんでしょうか?

 

丸井:ああ、谷口署長からの情報だ。まちがいない。お……シッ、来たぞ!

 

(小道の角にて、二人の男が姿を現す)

 

青葉組の若い衆(以下“若い衆”):おい、例のモノは持ってきたか?

 

取引相手の男(以下“男”):そう凄むなよ。ここに、ちゃんとある(トランクを開けると、中には拳銃が数本入っている)

 

丸井&近藤(心内語):け、拳銃……!?

 

若い衆:では、いつもの報酬だ(封筒を手渡す)

 

男:全額あるんだろうな?(封筒から札束を取り出し、数え始める)ふむ……確かに! フフフ、さすが天下の青葉組、いい取り引き相手だ。

 

若い衆:くくっ、お主もワルよのう。

 

若い衆&男:(お互い顔を見合わせ)フフフフフ……

 

丸井&近藤:(二人の前にバッと飛び出し)動くな、警察だ!(警察手帳を突き出す)

 

男:なっ警察!? し、しまった……

 

若い衆:(少しも慌てず)ふふん、墨谷署の丸井だな。現れる頃だと思ったよ。見られちまったのなら仕方ねぇ。気の毒だが、生きて帰れると思うなよ(おもむろに指をパチンと鳴らすと、角に潜んでいた組員が四、五人、姿を現す)。

 

丸井:けっ。数にモノを言わせりゃ、どうにかなると思うなよ! いくぞ近藤!!

 

近藤:オウヨ!!

 

(しばし集団が入り乱れての格闘。さすがに丸井と近藤のコンビは息が合っており、次々に組員を倒していく。やがて全員がのびて、路上に転がった)

 

丸井:ハァハァ……ど、どうだ参ったか。テメーらが隠れて悪事をやろうとも、お天道様は見てるんだい。いつまでも、好き勝手できると思うなよっ。

 

(どこかから不敵な声):これはこれは……さすがのお手並みだ。噂通りだよ、丸井刑事。

 

丸井:なに!? うわっ……

 

(ズキューンと拳銃の音。弾丸が、丸井の靴をかすめる。悠然と姿を現したのは、小柄ながらシルクハットを被った鋭い眼光の男)

 

丸井:き、きさまは……青葉組の売り出し中のスナイパー、佐野!!

 

佐野:(銃を構えたまま近づいてくる)フフフ、これはこれは。お見知りいただいたとは、光栄ですなぁ。で、申し訳ないが……この件から手を引いていただきたい。わが組にとって、なにせ重要な取り引きなのでね。

 

丸井:け、刑事相手に、図々しいことを抜かすな!! (ジャケットの中から、こちらも銃を抜こうとする)

 

佐野:やめたまえ。こんなところで銃撃戦を始めたら、どうなるか分かるだろう?

 

丸井:なんだと? はっ……(学校のチャイムが聴こえた。ほどなく、下校する子供達の声がしてくる)

 

佐野:フフフ。丸井刑事は、正義の味方だからなぁ。未来ある子供達を、銃撃に巻き込むようなマネ、できるはずあるまい。ククククク……

 

丸井:くっ……

 

(佐野はさらに近づき、とうとう三メートルの距離に縮める)

 

佐野:分かったら……そこに拳銃を置いて、両手を上げて、少しずつ下がっていくんだ。さ、いい子だから。私の言うことを聞きたまえ。クククク……

 

(丸井刑事、絶体絶命。その時である!)

 

近藤:それっ!

 

佐野:なに……ぐあぁっ! (なにかが佐野の右手を直撃し、拳銃が地面に落ちる。丸井はそれをすばやく蹴飛ばす)

 

丸井:な、なんだ? あ……(地面に、野球のボールが転がっている)

 

近藤:丸井はん、今です!

 

丸井:お……オウヨ! うおおお……!!(佐野へ突進して、タックルする)

 

佐野:く、くそうっ。はなしやがれ!!

 

丸井:佐野! 銃刀法違反の現行犯で、逮捕する!!

 

(ガシャン。後ろ手に手錠)

 

佐野:ちきしょう、やられたか……(ガックリとうなだれる)

 

丸井:こ、近藤。いまの……おまえか?

 

近藤:そうです。

 

丸井:すげぇな。至近距離とはいえ、手首にドンピシャ当てられるとは。

 

近藤:ワイ昔、野球のピッチャーをやってたんです。

 

丸井:どうりで……しかし奇遇だな。実は俺も昔、野球やってたんだぜ。

 

近藤:へーっ、初耳です。どこのポジションやったんですか?

 

丸井:セカンドだ。すばしっこい動きは、そん時に身につけたのさ!

 

(ファンファンファン……パトカーのサイレンの音)

 

丸井:む……まさか近藤、おまえが応援を呼んでくれたのか?

 

近藤:え、ええ。さっき買い出しに行った時。狡猾な青葉組のことやし、こうなることもあるんじゃないかと思いましてね。

 

丸井:(無言で、近藤の右胸を軽く小突く)

 

近藤:ウップ、なにしますの。

 

丸井:……近藤、きさま。いつの間に成長しやがった。

 

近藤:おーきに。ほな、行きましょか。“おにぎり刑事”!

 

丸井:(すかさずポカリとげんこつを喰らわせる)

 

近藤:テッ!

 

丸井:ばーか、調子に乗んなっ。きさまが俺をアダ名で呼ぼうなんざ、百年早いんだよ!

 

近藤:はっ、ドウモ……

 

―― こうして二人の活躍により、今日も下町の平和は守られた。しかし、今なお暗躍する悪を成敗するため、丸井刑事(デカ)の戦いは続く。ガンバレ、丸井刑事!!

 

 

2.墨田二中、とある日の休み時間


―― 九月。部活を引退した三年生は、来る受験の日に備えて勉強に勤しんでいる。しかし中には不届きな輩もいるようで……)

 

(階段の踊り場にて)

 

いじめっ子三人組(以下、三人組のA男・B男・C男):ほら、カネ出せよ(足蹴にしつつ)。

 

いじめられっこD君(以下、D君):やだよ。塾に行く前、パンを買うお金なんだ。

 

A男:あ? 塾なんて行かせてもらえるおぼっちゃまなんだから、カネぐらい、いくらでも出せるだろ。ほりほり、いつか返してやるから。

 

D君:や、やだったら。

 

B男:ほう。言うこと聞かない、悪い子は……どうなるか教えてあげねーとな。(三人ともこぶしをポキポキ鳴らす)

 

C男:フフフフ、覚悟しなっ。(殴りかかろうとする)

 

―― その時、背後から「なにしてんだっ」と怒鳴るものがいた。

 

A男:(振り向き)い、イガラシ……

 

イガラシ:(理科室への教室移動の途中)きさまら、こんな所でカツアゲか? みっともないマネしやがって。

 

B男:けっ、正義の味方気取りかよ。

 

C男:ま、まてっ。センコーにチクられでもしたら、内申やばくなるぞ。

 

イガラシ:ごちゃごちゃうっせーんだよ。きさまらのこたぁ、どーでもいいから、そいつを離してやりな。

 

A男:な、なにぃ……!

 

イガラシ:今なら見逃してやる。そいつから手を離して、どこへでも行きやがれ。この腐れチンピラどもめ。

 

B男:こんニャロ。い、言わせておけば……

 

C男:アタマにきた。やっちまおうぜ!

 

A男&C男:おうっ!

 

(約五分後、理科室にて。まだ授業開始前)

 

イガラシ:(右肩をさすりながら)ちーっ、イテテテ。まだ大会の痛みが取れないってのに、ちと無茶しちまった。後で湿布薬、塗らないとな。

 

久保:(隣の席で心配そうに)あれイガラシ、ちょっと口元が腫れてるようだけど。どこかにぶつけたのかい?

 

イガラシ:うーむ、いや……ちょっとな。大したことねーよ。

 

(ガラッと理科室の扉が開き、別の男子生徒が息を切らして駆け込んでくる)

 

男子生徒:お、オイ。A男、B男、C男の三人が、そろって階段の踊り場でのびてんだけど、誰か何があったか知らねーか?

 

生徒達:えーっ、あのチンピラ三人組が……(ざわめく理科室内)

 

イガラシ:ふあぁ……(欠伸を一つして、素知らぬ顔で)さて、今日はどこのぺージだっけ。(教科書をめくる)

 

3.もしもキャププレ登場人物が戦国武将だとしたら……

 

倉橋:打てぬなら焼き芋食うなホトトギス

 

半田:打てぬならアイス買ってねホトトギス

 

井口:打てるなら守備はいいからホトトギス

 

佐野:打てぬなら二軍へ行けよホトトギス

 

(※フォロワー様より)

イガラシ:打てぬなら特訓三倍ホトトギス

 

 

 

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