1.丸井刑事(デカ)<その1>
(とある下町にて。おにぎりの形をした顔の男が、電柱の影より小道の向こうを伺う。グレーのジャケットにネクタイの姿)
※「太陽にほえろ!」のBGMにて
丸井(心内語):俺の名前は丸井。墨谷署の刑事だ。署の連中は“おにぎり刑事(デカ)”なんて呼びやがる。ショージキ気にいらねーが、ま、それはどうでも良い。とにかく今日も、街の平和のため、汗水流して駆け回っている。
(ドタドタと足音。大柄だが妙に愛嬌のある顔の男)
近藤:丸井はん、アンパンと牛乳買うてきました!!
丸井:バカ! 張り込み中に、でけぇ声出すんじゃねぇっ。(ゲンコツぽかり)
近藤:いててて……
丸井:気ぃつけろ、バーロイ。ま……買い出しご苦労(袋を受け取る)。ほれ、オメーも今のうちに食っとけ。(自分のアンパンと牛乳を取り、袋を返す)
近藤:おーきに。
丸井(心内語):コイツの名前は、近藤。俺の部下だ。
もうコンビを組んで三年目になる。当初はかなり使えねーヤツで、何度もゲンコツを喰らわせた。今でもちょいちょいヘマをやらかすが、それなりに刑事(デカ)として格好はつくようになった。
出会った頃は、顔を見るのもイヤだったのだが、なんやかんや慕ってくれるコイツを、俺もだんだんカワイイと思うようになってきたのは、内緒だ!!
近藤:(アンパンを頬張りながら)せやけど丸井はん。本当にこんなところで、青葉組の取引があるんでしょうか?
丸井:ああ、谷口署長からの情報だ。まちがいない。お……シッ、来たぞ!
(小道の角にて、二人の男が姿を現す)
青葉組の若い衆(以下“若い衆”):おい、例のモノは持ってきたか?
取引相手の男(以下“男”):そう凄むなよ。ここに、ちゃんとある(トランクを開けると、中には拳銃が数本入っている)
丸井&近藤(心内語):け、拳銃……!?
若い衆:では、いつもの報酬だ(封筒を手渡す)
男:全額あるんだろうな?(封筒から札束を取り出し、数え始める)ふむ……確かに! フフフ、さすが天下の青葉組、いい取り引き相手だ。
若い衆:くくっ、お主もワルよのう。
若い衆&男:(お互い顔を見合わせ)フフフフフ……
丸井&近藤:(二人の前にバッと飛び出し)動くな、警察だ!(警察手帳を突き出す)
男:なっ警察!? し、しまった……
若い衆:(少しも慌てず)ふふん、墨谷署の丸井だな。現れる頃だと思ったよ。見られちまったのなら仕方ねぇ。気の毒だが、生きて帰れると思うなよ(おもむろに指をパチンと鳴らすと、角に潜んでいた組員が四、五人、姿を現す)。
丸井:けっ。数にモノを言わせりゃ、どうにかなると思うなよ! いくぞ近藤!!
近藤:オウヨ!!
(しばし集団が入り乱れての格闘。さすがに丸井と近藤のコンビは息が合っており、次々に組員を倒していく。やがて全員がのびて、路上に転がった)
丸井:ハァハァ……ど、どうだ参ったか。テメーらが隠れて悪事をやろうとも、お天道様は見てるんだい。いつまでも、好き勝手できると思うなよっ。
(どこかから不敵な声):これはこれは……さすがのお手並みだ。噂通りだよ、丸井刑事。
丸井:なに!? うわっ……
(ズキューンと拳銃の音。弾丸が、丸井の靴をかすめる。悠然と姿を現したのは、小柄ながらシルクハットを被った鋭い眼光の男)
丸井:き、きさまは……青葉組の売り出し中のスナイパー、佐野!!
佐野:(銃を構えたまま近づいてくる)フフフ、これはこれは。お見知りいただいたとは、光栄ですなぁ。で、申し訳ないが……この件から手を引いていただきたい。わが組にとって、なにせ重要な取り引きなのでね。
丸井:け、刑事相手に、図々しいことを抜かすな!! (ジャケットの中から、こちらも銃を抜こうとする)
佐野:やめたまえ。こんなところで銃撃戦を始めたら、どうなるか分かるだろう?
丸井:なんだと? はっ……(学校のチャイムが聴こえた。ほどなく、下校する子供達の声がしてくる)
佐野:フフフ。丸井刑事は、正義の味方だからなぁ。未来ある子供達を、銃撃に巻き込むようなマネ、できるはずあるまい。ククククク……
丸井:くっ……
(佐野はさらに近づき、とうとう三メートルの距離に縮める)
佐野:分かったら……そこに拳銃を置いて、両手を上げて、少しずつ下がっていくんだ。さ、いい子だから。私の言うことを聞きたまえ。クククク……
(丸井刑事、絶体絶命。その時である!)
近藤:それっ!
佐野:なに……ぐあぁっ! (なにかが佐野の右手を直撃し、拳銃が地面に落ちる。丸井はそれをすばやく蹴飛ばす)
丸井:な、なんだ? あ……(地面に、野球のボールが転がっている)
近藤:丸井はん、今です!
丸井:お……オウヨ! うおおお……!!(佐野へ突進して、タックルする)
佐野:く、くそうっ。はなしやがれ!!
丸井:佐野! 銃刀法違反の現行犯で、逮捕する!!
(ガシャン。後ろ手に手錠)
佐野:ちきしょう、やられたか……(ガックリとうなだれる)
丸井:こ、近藤。いまの……おまえか?
近藤:そうです。
丸井:すげぇな。至近距離とはいえ、手首にドンピシャ当てられるとは。
近藤:ワイ昔、野球のピッチャーをやってたんです。
丸井:どうりで……しかし奇遇だな。実は俺も昔、野球やってたんだぜ。
近藤:へーっ、初耳です。どこのポジションやったんですか?
丸井:セカンドだ。すばしっこい動きは、そん時に身につけたのさ!
(ファンファンファン……パトカーのサイレンの音)
丸井:む……まさか近藤、おまえが応援を呼んでくれたのか?
近藤:え、ええ。さっき買い出しに行った時。狡猾な青葉組のことやし、こうなることもあるんじゃないかと思いましてね。
丸井:(無言で、近藤の右胸を軽く小突く)
近藤:ウップ、なにしますの。
丸井:……近藤、きさま。いつの間に成長しやがった。
近藤:おーきに。ほな、行きましょか。“おにぎり刑事”!
丸井:(すかさずポカリとげんこつを喰らわせる)
近藤:テッ!
丸井:ばーか、調子に乗んなっ。きさまが俺をアダ名で呼ぼうなんざ、百年早いんだよ!
近藤:はっ、ドウモ……
―― こうして二人の活躍により、今日も下町の平和は守られた。しかし、今なお暗躍する悪を成敗するため、丸井刑事(デカ)の戦いは続く。ガンバレ、丸井刑事!!
2.墨田二中、とある日の休み時間
―― 九月。部活を引退した三年生は、来る受験の日に備えて勉強に勤しんでいる。しかし中には不届きな輩もいるようで……)
(階段の踊り場にて)
いじめっ子三人組(以下、三人組のA男・B男・C男):ほら、カネ出せよ(足蹴にしつつ)。
いじめられっこD君(以下、D君):やだよ。塾に行く前、パンを買うお金なんだ。
A男:あ? 塾なんて行かせてもらえるおぼっちゃまなんだから、カネぐらい、いくらでも出せるだろ。ほりほり、いつか返してやるから。
D君:や、やだったら。
B男:ほう。言うこと聞かない、悪い子は……どうなるか教えてあげねーとな。(三人ともこぶしをポキポキ鳴らす)
C男:フフフフ、覚悟しなっ。(殴りかかろうとする)
―― その時、背後から「なにしてんだっ」と怒鳴るものがいた。
A男:(振り向き)い、イガラシ……
イガラシ:(理科室への教室移動の途中)きさまら、こんな所でカツアゲか? みっともないマネしやがって。
B男:けっ、正義の味方気取りかよ。
C男:ま、まてっ。センコーにチクられでもしたら、内申やばくなるぞ。
イガラシ:ごちゃごちゃうっせーんだよ。きさまらのこたぁ、どーでもいいから、そいつを離してやりな。
A男:な、なにぃ……!
イガラシ:今なら見逃してやる。そいつから手を離して、どこへでも行きやがれ。この腐れチンピラどもめ。
B男:こんニャロ。い、言わせておけば……
C男:アタマにきた。やっちまおうぜ!
A男&C男:おうっ!
(約五分後、理科室にて。まだ授業開始前)
イガラシ:(右肩をさすりながら)ちーっ、イテテテ。まだ大会の痛みが取れないってのに、ちと無茶しちまった。後で湿布薬、塗らないとな。
久保:(隣の席で心配そうに)あれイガラシ、ちょっと口元が腫れてるようだけど。どこかにぶつけたのかい?
イガラシ:うーむ、いや……ちょっとな。大したことねーよ。
(ガラッと理科室の扉が開き、別の男子生徒が息を切らして駆け込んでくる)
男子生徒:お、オイ。A男、B男、C男の三人が、そろって階段の踊り場でのびてんだけど、誰か何があったか知らねーか?
生徒達:えーっ、あのチンピラ三人組が……(ざわめく理科室内)
イガラシ:ふあぁ……(欠伸を一つして、素知らぬ顔で)さて、今日はどこのぺージだっけ。(教科書をめくる)
3.もしもキャププレ登場人物が戦国武将だとしたら……
倉橋:打てぬなら焼き芋食うなホトトギス
半田:打てぬならアイス買ってねホトトギス
井口:打てるなら守備はいいからホトトギス
佐野:打てぬなら二軍へ行けよホトトギス
(※フォロワー様より)
イガラシ:打てぬなら特訓三倍ホトトギス
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