南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第5回「イガラシくんから見て、キャプテン谷口さんってどこがすごいの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 この野球講座も、五回目を迎えました。今回も前回に続き、「キャプテン」「プレイボール」ファンの方からの疑問や質問に答えて……って、大丈夫なんでしょうね。前回みたいに、野球と関係のない話は、ちとカンベンして欲しいんスけど。

 

 うーむ、しょうがないですね(汗)。ではさっそく、今回のテーマを……

イガラシくんから見て、キャプテン谷口さんってどこがすごいの!?

 

 なるほど。前回よりは、だいぶマシですね(安堵のため息)。

 

 でも谷口さんのことなら、ぼくより丸井さんの方がいいんじゃありませんか。あの人は、誰よりも谷口さんを崇拝してますし。谷口さんのことを聞かれちゃ、喜んでしゃべってくれるでしょうよ。

 

 えっ、丸井さんだと時間がかかりすぎて、収拾がつかなくなる? ま、たしかにそれは言えてますね(笑)。といっても、ぼくだって上手く話せるか自信はないスけど。それで良ければ……

 

 

1.キャプテン・谷口タカオのすごさ

 

 谷口さんのすごさを、一言でいうとすれば……周りをその気にさせる力だと、ぼくは思うんスよ。

 

 「キャプテン」「プレイボール」読者のみなさんも、谷口さんと言えば“がんばる・がんばる”“努力の人”ってイメージですよね。

 もちろんそれも、あの人の優れた点なんスけど。ぼくが、ほんとうにすごいなって思うのは……周りの人間を「(谷口さんの)がんばりに応えなきゃ」って気持ちにさせることじゃないかって。

 

 よく言われる「背中で語る」とか、「率先垂範」ってことなんでしょうけど。そんな言葉が陳腐に感じられてしまうくらい、あの人の努力というのは……いやもう、修行・鍛錬って言い換えてもいいくらい、凄まじいものがありましたからね。

 

 ま……練習量に関して言えば、ぼくも谷口さんに負けないつもりスけど(笑)。でも、あれだけ周りの人間の心を動かすってのは、ぼくにはマネできませんね。ええ、そこはもう素直に認めますよ。

 

 読者の方なら、ぼくが墨二中の一年生の時の、神社でのエピソードを覚えているでしょう。練習が厳しすぎると、抗議に行ったナイン達が、谷口さんとお父さんのあの特訓を見て、すっかり改心させられてしまったんですから。

 

 かくいうぼくも、青葉との再戦前に、あの人がピッチャーを始めるなんて言った時は、さすがに呆れましたよ。ピッチャーなんて、ほんの一月ばかり練習したところで、できるようになるものじゃないですし。まして、相手はあの青葉ですよ。

 

 ところが……しばらくぶりに、あの人のピッチングを見たら。スピードといい球のキレといい、もう十分青葉を抑えられるレベルに達してたんスよ。ま……残念ながら、試合中のケガがもとで、ピッチングを披露することは叶いませんでしたがね。

 

 しかしほんと、あれにはぼくもたまげましたよ。

 まず試合まで一ヶ月を切った段階で、ピッチャーに挑戦しようなんて発想が、フツウできないですし。もしできたとしても、それを実戦で投げられるレベルまで持っていけるなんて、並の人間には不可能ですよね。

 

 キャプテンのあんな姿を見て、心を動かされない人間はいませんよ。やっぱり、すごいリーダーだなあって、改めて思いますね。

 

 

2.イガラシのレギュラー抜てきが、墨二中野球部の歴史を変えた!

 

 それから、ついでに話しておきたいことがあるんスけど。

  谷口さんがキャプテンになって、墨二中野球部はそれまでの“フツーの部活”から、“勝つことを第一目標に掲げるチーム”へと変貌を遂げたことは、みなさんもよく知ってると思います。

 

 ただ、もっと具体的に、そうなったのが、いつ、どの瞬間だったか、みなさんはお分かりですか? 某テレビ番組風に言うと、「その時(墨二中野球部の)歴史が動いた!」ってやつです(笑)。

 

 実はそれ――谷口さんが、ぼくをレギュラーとして抜てきした瞬間なんです。

 

 あ、カン違いしないで下さいね。ぼくがレギュラーになったおかげで強くなれたって、言いたいわけじゃないですよ(笑)。

 

 谷口さんが入部する前……いや、谷口さんがキャプテンになってからも、しばらく墨二野球部は“フツーの部活”だったわけですよ。先輩後輩の上下関係がしっかりあって、練習もそこそこ頑張って、っていう。

 

 その象徴が、あの「一年生はどんなに上手くても試合に出さない」というルールです。

 

 先輩が言ってましたけど、当時の墨二中野球部は“チームワークが第一優先”だったわけですよ……その是非は別にして、ね。

 で、たしかにチームワークを最優先にするなら、野球部のルール・文化を知らない一年生を試合に出さないというのは、確かに筋は通っています。

 

 ところが谷口さんは、当時一年生だったぼく……まして先輩にもずけずけとモノを言う、チームワークを乱しかねない存在だったぼくをレギュラーに抜てきすることで、“チームワークが第一優先”だった墨二中野球部のルール・文化を、根底からひっくり返したわけですよ。

 

 あの瞬間、墨二中野球部は、試合に勝つことを第一の目的とする集団に生まれ変わったというわけです。もっともそのことに気付いたのは、当時のぼくも含めて、ほとんどいなかったと思いますけどね。

 

 自分で言うのもなんですが(汗)、当時の先輩達の言う“チームワークを第一優先”にするのなら、ぼくみたいな人間は一番ジャマです。チームの雰囲気を悪くする、トラブルメーカーでしたから(笑)。

 

 でも……勝つためには、チームが強くなるためには、軋轢(あつれき)を避けては通れないんです。

 

 表面的にチームワークを良くする方法は、カンタンです。みんながチームのルールとか文化をちゃんと守って、言いたいことを言わなきゃいいんです。

 

 でも強くなりたいのなら。ぼくみたいに先輩から嫌われるようなヤツでも、戦力になるのならチームに組み込まなきゃいけないですし。チームを強くするための意見が互いに食い違っているのなら、ケンカしてでもそれを出し合って、擦り合わせていかなきゃいけないんスよ。

 

 その後の墨二中野球部も、軋轢(あつれき)を乗り越えていくことで強くなり、本当の意味でチームワークを深めていくことができました。

 

 次の丸井さんがキャプテンの代には、あの近藤をどうやってチームに組み込んでいくか(汗)。ぼくがキャプテンの時には、苛烈な練習に反発する松尾の母親を始め、周囲の大人達とどう折り合いを付けていくか。

 

 軋轢(あつれき)から逃げることなく、立ち向かい、克服する。それこそがチーム強化だといっても過言じゃありません。

 

 む……何だか今日は、うまくまとまりましたね。やっぱり、野球に関する話の方が、スムーズに進みます。次回もこんな感じで頼みますよ。では、また……

 

 【関連リンク】

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