南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第9回「イガラシくん、都内のライバル校を斬る!!」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 いよいよ夏の甲子園出場を賭けた地方大会が、各地で開幕しますね。今回はそれに関連しての、読者のみなさんからの質問を取り上げることにします。

 

 ペンネーム:itouさんより。「都内の学校で、甲子園で活躍できそうな学校はいくつありますか? その学校と墨谷との力関係はどうでしょうか?」とのことです。

 

 えっとですね……都内の強豪校と、ぼくらとの力関係については、誰かさんが書いてる小説の方を読んでいただくとして(笑)。甲子園で勝てそうかどうかってことだけ、答えさせてもらいますね。

 

 というわけで、今回のテーマは……

イガラシくん、都内のライバル校を斬る!!

 

 

1.筆頭は、やはり“あの二校”!!

 

 甲子園で活躍できるってのは、つまり「全国優勝をねらう力がある」って意味で捉えてよろしいんですかね。

 

 その意味でなら……やっぱり一番手は、あの谷原(やはら)じゃありませんか。

 

 ぼくらも春先に練習試合で戦って、その強さを肌で感じましたけど。あれはもう……ちょっとレベルが違いすぎましたね(汗)。

 

 なにせ、あの谷口さんのタマが、何を投げてもコースを突いても、ことごとく打ち返されてしまうんですから。バットコントロールの技術、パワー。そして状況に応じたケースバッティング。おまけに駿足揃い。ほんと、どれを取っても別格でした。

 

 さらにエース村井。本格派の左腕投手で、威力ある真っすぐ、切れ味鋭いカーブ、シュート。おまけにコントロールも抜群とくりゃ、どんな強豪であっても、そう簡単には打ち崩せないでしょうね。

 

 あれだけの力があるし、すでに春の甲子園での実績もある。もし夏も出てきたら、間違いなく優勝候補の一角として挙げられるはずです。

 

 ただね……その谷原にも、当然弱点はあります。

 

 分かりやすいのは、投手層の薄さです。

 エースの村井と二番手の野田は、ちょっと力の差があり過ぎますよね。今まで、ほとんと大量点で勝ってきてるから、それほど問題になることはなかったんでしょうけど。もし村井に何かあれば……案外脆いのかもしれません。

 

 あと、今の時点では……まだ仮説なんスけど。

 谷原のように強打のチームって、対戦チームのピッチャーは大抵、アウトコース中心の投球になりがちなんです。もちろん谷原は、アウトコース打ちの技術が高いので、それだけじゃ抑えられないんですけど。

 ひょっとして……思いきってインコース、あるいは得意コースに投げこんだりしたら、かえって戸惑うんじゃないかって。

 

 ま、これはやってみなきゃ分かりませんがね。とにかく谷原に勝つためなら、なんだって試す価値はあると思います!

 

 個人的には、ひょっとして谷原以上に優勝に近いんじゃないかって思うのが、あの佐野を擁する東実です。

 

 先輩の加藤さんから聞いた話スけど、東実は佐野を頼みとして、青葉学院出身のメンバーが集結してるんだとか。半田さんや新聞部の人達の情報によれば、佐野とバッテリーを組んだキャッチャー村野、昨年のエースだった倉田は、すでにレギュラー入りしたらしいですよ。

 

 ま……いくら中学で活躍したからって、すぐに高校でも通用するとは限りませんけど。

 

 しかし少なくとも、佐野と倉田。投手陣の実力は、折り紙付きです。連戦になれば、力のある投手を複数抱えるチームの方が、どうしたって有利ですからね。

 

 強いて東実の不安を挙げるとすれば、打線でしょうか。昨秋のブロック予選決勝で、谷口さんにシャットアウトを許しちゃいましたから。

 

 ただあれから、半年以上近く経ってますし。冬場に徹底的に鍛えれば、もともと良い素材が揃ってますし、打力アップを図るのはそう難しくないんじゃありませんか。

 また四月には、有望な一年生も入ってきたでしょうし。もはや秋に戦った時とは、まったくべつのチームだと思った方が良いと思いますよ。

 

 

3.どこか物足りない“対抗馬”の二校

 

 今言った二校が本命だとして。対抗馬は……まず挙げなきゃいけないのは、川北ですかね。

 川北も東実や谷原と並ぶ、都内の甲子園常連校ですしね。毎年、力のある投手を揃えてくるし、控え投手も充実してるって話を聞きます。

 

 ただ川北も、見かけほど打線が強くなさそうなんスよ(※:この野球講座は、夏の大会の開幕前に収録しております)。おととし谷口さん達と戦った時も、谷口さんがリリーフ登板して、倉橋さんのリードで苦手コースを徹底して突いたら、パタッと打てなくなったそうじゃありませんか。

 

 甲子園で勝ちたいのなら、苦手コースに投げ込まれても打ち返すぐらいの力量が必要スよ。その点、川北はまだ物足りないスね。

 

 それと例年であれば、昨年うちと戦った専修館も、候補に入ってこなきゃいけないはずなんスけど。どうもエース百瀬を始め、昨年までの主力がごっそり抜けてから、ピリッとしませんよね。秋の大会でも谷原に完敗して、シード漏れしてますし。

 ま……いくら名門でも、毎年強いとは限りませんから。今年は新入部員次第ってトコでしょうかね。

 

 

4.イガラシくんのライバル校“辛口評”

 

 あといくつかの有力校についても聞きましたし、自分でも調べてみましたけど。しょーじき……そこまで脅威になるかと言われると、ちと微妙スね。

 

 たとえば大島工。打力があるって評判スけど、過去の戦績を見たら、そのわりに点が取れてないですよね。昨年うちに零封されてもいますし。谷口さんに聞いたら、途中でカッカして、振り回し始めたんだとか。あーいう、すぐ感情的になるチームは、ダメですね。

 

 強いて言えば、エースがシュートを得意としてるそうなんで、それを打ち崩せるかどうかですけど。シュート打ちの練習なら、いくらでもできますし、さほど問題にはならないんじゃありませんか。

 

 あと聖稜。大島工と同じく、強力打線って評判なんスけど。

 実際偵察へ行ってみたら……相手が格下ってのもあったんでしょうけど、コース構わず強引に振り回すバッターばかりで。

 あれじゃ少し良いピッチャーに当たれば、パタッと打てなくなるでしょうよ。昨年うちと戦った時だって、谷口さんがリリーフ登板してから、ほぼ完ぺきに封じられたそうじゃありませんか。

 

 言っちゃ悪いスけど、この二校に関しては、ハッキリ言って“見掛け倒し”なので。今度うちと当たったら、力でねじ伏せるくらいじゃないと、谷原や東実と当たるところまで辿り着けないスよ。

 

 

5.意外なダークホースは!?

 

 あと、個人的に……ひょっとしてダークホースになりそうだなって思うトコが、いくつかあるんスけど。

 

 一つは、昨年うちが完敗した、明善です。あれだけ大差が付いたのは、もちろん激闘に次ぐ激闘で、ナイン達にかなり疲労がたまっていたからというのはあります。

 ただそれを差し引いても、明善ってイヤなチームだなと思いました。

 

 何がイヤかって…強豪校なのに、じっくり相手を研究してくるんですよ。オマケに大差が付いても、最後まで油断する様子は見られなかったそうですし。

 

 昨年度のうちは、まだまだ戦力的に充分整ってなかったんですけど、それを半田さんを中心に、対戦相手のことを研究することで、その差を補ってたんスよね。

 

 ところが、同じことを相手にやられちゃ、うちのアドバンテージが消えちゃいますよね。もっとも……昨年は専修館を研究するのに手一杯で、明善のことを調べる余裕もなかったそうですが。

 

 さらに攻撃パターンも豊富で、小ワザに機動力も使ってくる。また得点圏打率も高い。勝負所での集中力がある証です。そして守備も硬い。

 

 その明善が、なかなか甲子園に出られない理由は、ただ一つ投手力です。そこまで悪いわけじゃないんスけど、谷原の村井や東実の佐野のように、飛び抜けたピッチャーがいないんで。最後は投打の戦いで力負けしてしまうんスよ。

 逆に言えば……もし一人でも、村井や佐野クラスの投手が加われば、明善はますます恐ろしい存在になると思いますよ。

 

 それと、今すぐ脅威になりそうってわけじゃないスけど……城東が少し気になってます。

 長らく“野球の城東”って言われてたのに、二年前に谷口さんが入部したばかりの墨谷に大敗してから、ピリッとしませんよね。聞けば昨年にも練習試合で対戦して、そん時は一イニングもたなかったとか。

 

 

 でもね……元々力のあるチームが、こういう悔しさを味わった後って、大化けする可能性があるんスよ。ぼくらが墨二中時代、一度敗れた青葉を再試合で下したようにね。

 

 そうそう。今城東にいる松下さんは、まさにぼくらがどうやって青葉を倒したか、身をもって体験してるじゃありませんか。先輩だからってワケじゃありませんけど、あの人の“最後の意地”にも期待したいですね。

 

 それと聞いた話じゃ、ぼくらと同年代の有望選手が、何人か城東にも進学したらしいですし。今年はノーシードですけど、大会が始まってみれば、案外面白い存在になるかもしれませんよ。

 

 

6.墨高野球部の目標は、ただ一つ!!

 

 ぼくの話は、こんなトコですが。え……肝心の墨谷のことが聞けてない? あのー、大会前にそういう具体的な話、あまり細かくしたくないんスけど(※この講座は、夏の大会開幕前に収録しています)。

 

 じゃあ……ほんの少しだけですよ。当然、言えない話もあるんで、そこはカンベンしてくださいね!

 

 ええとですね。しょーじき、うちの都内での立ち位置は、よく分からないんですよ。

 

 事実でいえば、昨夏そして昨秋と続けて8強入りしてる。強いほどではないが、力を抜いて勝てるほどの弱小でもないってトコでしょうかね。

 

 ただ……秋の大会から半年以上も過ぎてますし、うちも含めて、各校とも新入部員が数多く入ってきてるのでね。それでなくても、ひと冬越して、まるでべつのチームのようにパワーアップしてるなんてケースは、よくある話ですからね。

 

 ただ、これだけはハッキリ言わせてもらいます。

 

 ぼくら墨高野球部の目標は――この都大会を優勝して、甲子園に出場することです。ぼく個人としては「甲子園優勝」と言ってもいいと思ってますがね(笑)。

 

 さて……今ぼくの言ったことが、ただのホラ吹きになるのか。それとも有言実行になるのか。みなさんもぜひ、楽しみにしてくださいね!! それでは~。

 

 

 【関連リンク】

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