南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第16回「体は小さくても、プロ野球選手として活躍できるか!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今日も読者の方からのお便りを紹介します。今回は特に、多くの野球少年達に伝えたい話なので、どうか最後まで聞いて下さい。

 まずお便りを読みます。

 

ペンネーム:たかしさんより

―― イガラシさん、はじめまして。ぼくは今中学2年生で、野球部に所属しています。新チームからレギュラーに選ばれ、3番ショートを任されています。

 ぼくの将来の夢は、プロ野球選手になることです。でも、ぼくは身長が165センチしかありません。同級生に身長を次々に追い越されたり、どこかで「体の小さい子は、体の大きい子よりも伸びしろがない」という話を聞いたりして、時々自信がなくなってしまうことがあります。

 体つきで負けても、野球の実力で負けずに、夢を叶える方法はあるでしょうか。

 

 ということで、今回のテーマは……

体は小さくても、プロ野球選手として活躍できるか!?

 

 うーむ。ぼくにとっては、何だか懐かしい話ですね。

 ぼくもかなり最近まで、さすがに味方には言われませんけど、相手チームとかに「あのチビ」だの何だのって言われてましたから。

 ま……そう言ったヤツら全員、叩きのめしてやりましたけど。え……あっ、もちろん“物理的に”じゃないスよ(汗)。野球の実力でってことです(笑)。

 

 それはともかく、たかしくん。キミの夢である、プロ野球選手として活躍することができるかどうかという質問ね。結論から言えば――活躍できますよ!

 

 

1.“小さな名選手”なんていくらでもいる!

 

 ぼくがまだ高校生だから、そう断言されても説得力がないって思うかもしれないけどね。でも事実して、現役のプロ野球選手に、“小さな大打者”とか“小さな大エース”って言われてる人、結構いるだろう。

 いやプロ野球だけじゃない。もっと体格差がモノを言いそうな大相撲の世界だって、活躍してる小兵力士も少なくないじゃないか。

 

 ただね……やっぱり、体が小さいことのハンデはある

 キミはおそらく、小学校の低学年の頃からスポーツ万能で、同級生の中では誰にも負けなかったはずだ。ところがそんなキミでも、体格の大きい上級生には、さすがにケンカしたら勝てなかったはずだ。やっぱり体が大きいというだけで、どうしても腕力はちがってくるからね。

 

 だから誰よりも知恵を絞って、工夫しなきゃいけない。

 

 もう一度、プロ野球の話に戻そうか。

 各チームには、助っ人外国人選手が何人かいる。体格だけなら、日本人より外国人の方が大きいから、毎年ホームラン王は外国人選手が獲っててもおかしくないだろう。

 でも、現実はそうじゃない。

 ちゃんと自分の体をよく知って、自分の体に合ったスイングの仕方をすれば、日本人だって外国人よりもたくさんホームランを打てるんだ。

 

 たとえばぼくも、自分の体が小さいことは自覚してた。

 でも自分なりに研究して、一番ボールをミートしやすくて、なおかつ一番ボールを飛ばせる打ち方を身につけたんだ。

 165センチの体で、チームの3番打者を任されたキミなら、きっとぼく以上の努力ができるはずだよ。

 

 

2.自分の体に合わせたスイングを!

 

 あ……ついでに言うと、ぼくは墨二中のキャプテンだった頃、チームメイトには基本的に「わきをしめてシャープに振る」というアドバイスしかしないようにしてた。

 

 もっと細かく言えば、両足の幅とか、バットの構え方とか、タイミングの取り方とか色々あるんだけど、それはもう一人一人の体つきとか感覚によるから、そこまで口を出すべきじゃないと判断したんだ。みんな身長も体つきもちがうからね。

 

 だから、ただ一点「わきをしめてシャープに振る」ことだけを、チームとして徹底した。万人すべてに当てはまる理想のスイングはないけれど、やはり押さえなければならない基本というものはあるからね。

 

 話を戻すと、要するに体が大きい人には大きい人なりの、そして体が小さい人には小さい人なりのスイング・打ち方がある。キミは今までそれを追求してきたのだろうから、その努力をこれからも続けて欲しい。

 

3.偏見という”もう一つの敵”

 

 ただね……もう一つ、キミには戦わなければならない“敵”がいる。

 

 それは、キミ自身も耳にしたように、「体の小さい選手は大きい選手に敵わない」という偏見だ。ぼくのように、そういう声を鼻で笑える人間ならいけれど(笑)、真面目な子ほど気にしちゃったりするからね。

 

 問題は、そういう考えを指導者が持っている場合だ。

 体の小さい選手はダメだと思っている指導者のチームなら、試合でアピールするチャンスすら与えてもらえないかもしれない。

 

 見分け方は簡単だ。実際に、そのチームの試合を見に行けばいい。ただし練習試合じゃなく、公式戦を見るんだ。公式戦で、体の小さな選手も活躍しているチームなら、そのチームの指導者はちゃんと体つきでなく実力で選手を見ている証拠だ。

 

 

4.誰にも負けない突出した武器を身につけよ!

 

 とは言っても……指導者が、体の大きな選手を起用したくなる気持ちは、分からなくもないんだ。

 

 ぼくはピッチャーもしているから分かるけれど、体の大きなバッターというのは、それだけで威圧感があるからね。打率が同程度なら、ぼくでも体の大きな選手を起用するかもしれない。

 

 だから最後に、キミには厳しいことを言わせてもらう。

 

 打撃でも、守備でも、脚力でも何でもいい。そのチームじゃ誰にも負けない、それも突出した武器を身につけて欲しい。キミのその武器で試合の流れを変える、チームを勝たせられるくらいのモノを習得するんだ。

 

 だいぶキツイことを言ってしまったかもしれない。でも、それぐらいの気迫と覚悟がないと、厳しい勝負の世界で生きていくことはできない。

 

 さて、たかしくん。お便りによると、キミはぼくの二つ下だ。ということは、お互い甲子園に出られたら、そこで対戦することがあるかもしれないね。

 たかしくん。キミが、キミのチームが手強いライバル校として、ぼくら墨高の前に立ちふさがることを、楽しみにしているよ! もちろんその時、勝つのはぼくらだけどね。

 

 道のりは険しいかもしれない。だけど、キミならきっと大丈夫。いつか同じグラウンドで、ともに戦おうじゃないか!!

 

 

 

 【関連リンク】

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