<はじめに>
みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。
先週末より日本列島に台風が接近しているようで、各地とも荒れ模様の天候ですね。ということで……本講座でも、『キャプテン』ファンの間で議論を呼んだ“あのテーマ”について、語っていくこととしましょうか(ニヤリ)。
では、さっそく。今回のテーマは……
「イガラシくんは、なぜ後任キャプテンに近藤を指名したのか!?」
この話、墨二中の同級生や後輩やもちろん、野球部以外のヤツやメディア関係の方達まで、色々な人に聞かれましたよ。
ただ、答えは弟の慎二に言ったとおりです――ほかに誰がいます!?
さすがに慎二達は、よく分かってましたよ。
牧野じゃ部内の雰囲気がピリピリしすぎるし、曽根や佐藤じゃ神経が細かすぎて、あいつら自身が参っちまいます。そしてあの三人じゃ、「前年度優勝校」という重圧に耐えられません。
となると……消去法ですが、近藤しかいないってことになるじゃないスか。
近藤なら、「前年度優勝校」という重圧なんて、どこ吹く風でいられるでしょうね。なにせ全国大会出場の懸かった江田川戦で、全国大会に出られないことよりも殴られることの方を恐れてたぐらいスから(笑)。
1.イガラシが最も懸念したこと
ついでに言いますとね。ぼく、近藤が率いる一つ下の世代に、大した期待は持ってないんですよ。連覇して欲しい気持ちなんて毛頭ありませんし、全国大会出場、いや地方予選の準決勝辺りまで進めば御の字じゃありませんか。
えっ、冷たすぎる? まあまあ、もう少しぼくの話を聞いてくださいよ(真顔で)。
要するに、ぼくはこの一年間、最低限「チームとしての体を成してくれりゃいい」と思ってるんです。それさえできれば、たとえ大会の結果は芳しくなくとも、次の代でいくらでも取り返しはできますから。
……どうやらみなさん、まだピンときてないようですね(笑)。
ですが会社で例えれば、よく分かるんじゃありませんか。成功を収めた創業者の次の代で、事業が上手くいかなくなって、あっという間に会社が傾く……なんて話は、世の中にいくらでも転がっているじゃありませんか。
そして実は、墨二中野球部でも、過去に似たことがあったんですよ。
墨二の歴代キャプテンで、まず大きな成果(青葉撃破)を出したのは、谷口さんです。その谷口さんが卒業して、丸井さんがキャプテンになり、部内で何が起こったか……みなさんもおぼえているでしょう?(苦笑)
なのでぼく、どこかの機会で言いたいんスけど……丸井さんがキャプテンに就任した頃、部内が少しゴタゴタしてしまったのは、丸井さんだけのせいじゃないと思ってるんですよ。誰がキャプテンでも、あの頃はちょっと難しい時期だったんです。
話を戻すと……ぼくが卒業した後も、同じようなことが起こるんじゃないかって心配したわけです。
牧野にしても曽根にしても佐藤にしても、キャプテンに指名すれば、一所懸命やったでしょうよ。しかしぼくと同じことをすれば「イガラシさんの真似をしている」、ぼくとちがうことをして失敗すれば「イガラシさんならこうしたのに」と、言われがちなんスよ。
これが続けば、キャプテンと他の部員と双方に、ストレスが溜まっていく。そうしてチームが空中分解してしまうのを、ぼくは最も懸念しました。
その点、近藤なら失敗を重ねるのはみんな織り込み済みなので(笑)、ヤツが変な方向へ進んでいこうとするのを、みんなして話し合って修正していけば何とかなるんじゃありませんか。それだけの知恵のあるメンバーは揃ってますし。
こんなふうにしていけば、何だかんだチームはまとまっていくと思いますよ。
そして三年生が引退を迎えた時に、「近藤のせいで苦労したぜ」「なんでワイのせいなんや」とか笑って終われたら、御の字じゃありませんか。
2.近藤世代の強み
ただね……今言った話は、あくまでもぼくの“想定”です。しかし物事というのは、想定“外”のことが起こるから、面白いじゃありませんか!(楽しそうに)
みなさん気づいてるかどうか分かりませんが。実は近藤達の世代、たった一つだけ、ぼくらの世代よりも優れた点があるんですよ。
それはですね――メンバーに全国優勝経験があるという点です。
この経験は大きいですよ。ぼくらにはそれがなかったので、練習メニューを組むにしても何にしても、すべて手探りでしたから。
しかし一度優勝経験を手にしたことで、昨年度に取り組んだことで必要だったこと、あまり必要じゃなかったことを整理して、より効果的なチーム強化が図れるはずです。
そして何より、ぼくが楽しみにしているのは……近藤自身のことです。
弟の慎二の話じゃ……佐々木でしたっけ? JOYってあだ名の。かなり有望な新入生らしいですが、話を聞く限り、これまであまり真剣には野球に取り組んでこなかったらしいですね。
ということは、墨二でしばらく鍛えれば、一気にその才能が開花するかもしれません。それこそ、近藤を脅かすくらいにね。
佐々木だけじゃありません。近藤のヤツ、投手育成を大事にして、例年より多くピッチャーを育てているそうですが。その中から、ほんとうに自分のエースナンバーを奪いかねない人材が出てきたら、アイツどんな顔するでしょうね(笑)。
近藤って、基本的に努力ギライの印象があるでしょう? でも、江田川に井口が出現した時、ヤツの速球に負けまいとかなり奮起して、必死に練習してたじゃありませんか。
考えてみりゃ、近藤って今までレギュラーを奪いっこした経験がないんスよ。
でももし、そういう相手がチーム内に、しかも後輩に現れたら、きっとあの時以上に必死になると思います。そしたら、もう一段も二段も成長した近藤の姿が見られるかもしれません。
そうなったら……今年の大会も、案外面白いことになりそうじゃありませんか。
現チームの目標は、今年じゃなく“来年に強さのピークを持ってくること”だそうですけれど。無欲のチームというのは、結構手強いですからね。
ということで。読者のみなさんも墨高だけでなく、近藤達の墨二中の戦いぶりも、ぜひ注目してあげてください!! それでは、また次回~。
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