南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第22回「イガラシくんが注目する、他作品のキャラクター【後編】」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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 ※本講座は、ちばあきお「キャプテン」「プレイボール」連載時の時系列をまったく無視しております。

 

<はじめに>

  みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 高校野球の地方大会も、そろそろ佳境に入りつつあるようですね。また日本のプロ野球、そして海外のMLBではオールスター戦が終わり、いよいよ後半戦のスタートとなります。

 

 ということで、本講座も前回に続いてお祭り企画、その後半戦です。

イガラシくんが注目する、他作品のキャラクター【後編】

 

(注:筆者自身、それほど多くの野球を題材にした作品を知っているわけではないので、選に偏りもあるかと思いますが、ご容赦ください。)

 

 

1.前人未到の甲子園通算20勝・逆境にこそ力を発揮する“小さな巨人”!!

 

 今回の一人目は、高校野球漫画の代名詞ともいえる名作『ドカベン』(水島新司作)より、明訓高校のエース“小さな巨人こと、里中智(さとなかさとる)です。

 

 里中のエピソードでまず印象的なのは、中学時代、同じチームに小林真司という本格派エースがいて、そのために監督から内野手転向を指示されてるんスよね。

 

 中学生が、指導者にそんなこと言われたら、フツー心折れますよね。でも彼は、それに屈することなく、さらに「自分のストレートでは通用しない」と意地もプライドも捨て、アンダースローの変化球投手として新たな自分のスタイルを決めるわけですよ。

 

 この覚悟、そして実際に変化球を磨き上げ、後に“七色の変化球を操る”と言われる大投手へと変貌を遂げる。その執念には、本当に脱帽です。

 

 ただ……やはり恵まれない体で、相当ムチャな練習も重ねたようですから、何度も肩や肘の故障を繰り返したようですね。それもあってか、野球を諦めることも考えたようですが、厳しいリハビリにも耐え、最後は復活。まさに不死鳥です。

 

 この里中とも、一度戦ってみたいですね。多彩な変化球もそうですが、何よりあの闘志剝き出しの投球スタイル。あの名捕手・山田太郎のリードも併せて、ぼくにどんな投球をしてくるのか楽しみです。

 

 

2.投手に必要なモノは何かを示してくれた、“普通の”好投手

 

 二人目は、今をときめく東大受験漫画ドラゴン桜』の作者・三田紀房の野球漫『甲子園へ行こう』の主人公・四ノ宮純(しのみやじゅん)です。

 

 四ノ宮は、ここまで紹介してきた人物の中では、最も等身大の高校生に近い存在です。

 なにせスピードはそこそこ、おまけにコントロールが悪く、1年生の夏には自らの押し出し四球で逆転負け、3年生の最後の夏を終わらせてしまうんスよ。

……こんな話、結構あちこちに転がってると思いませんか?(笑)

 

 ただ彼の偉かったのは、そこで潰れることなく、“投手”というポジションについてイチから学び直し、本当に実力を付けていったことなんですよ。

 あまり詳しく書くとネタバレになっちゃうので、触りだけにしておきますが、投球フォームの大事なポイントとか、コントロールのつけ方とか、ついつい忘れがちな基本事項について、とても丁寧に描いてくれてます。

 

 そして最後――彼は名門横浜第一の大エース・藤島陽平と戦うことになるわけですが、それこそ高校トップクラスの選手ばかりを集めたチーム相手に、元々は数ある“平凡な投手の一人”であった四ノ宮が堂々と立ち向かっていく姿には、胸を打ちます。

 

 やっぱり世の中、そうそう才能に溢れた人間ばかりじゃありません。しかしたとえ素質に恵まれていなくとも、“正しい努力”をすれば渡り合うことができる。そんな希望を与えてくれる好選手だと思います。

 

3.確実に抑える方法が分からない! “野生育ち”の天才スラッガー!!

 

 三人目は、『ダイヤのA』とその前作『橋の下のバットマン』(寺嶋裕二作)に登場するスラッガー轟雷市(とどろきらいち)です。

 彼は父親が無職という恵まれない環境で、中学の野球部にも所属できず、橋の下で「金のなる木」と書かれたマスコットバットをひたすら振り続けていたそうです。そのバットですが、なんと鉛のような重さで、金属バットが空バットほどの重さに感じたのだとか。

 

 ま……彼の生い立ちに関しては、作品を読んでいただくとして(笑)。試合で対戦するとしたら、正直、彼のようなバッターが一番怖いですね。

 

 例えば谷原のような強豪校のバッターというのは、良くも悪くもある程度“型”にはまった打ち方をしてくるんですよ。アウトコースはおっつけるとか、インコースは押し出すように打つとか。悪いことではないのですが、どのバッターも似たような打ち方をしてくるとなると、対策も立てやすいですよね。

 

 ところが、轟の場合は“彼にしかできないオリジナルのスイング”なので、「こうすれば打ち取れる」というのが、なかなか見つけにくいんスよ。

 

 おまけに描写を見る限り、どのボールもフルスイングしてきますよね。

 これは彼の脅威的なスイングスピードがあってこそ可能なバッティングですが、あんなことをされたら、ジャストミートされればほとんど長打です。うまくタイミングを外すか、ボールの威力で勝つか……理論上は、そのどちらかでしか抑えることはできません。本当に厄介なバッターと言えます。

 

 逆に言えば、味方にすると非常に頼りになりそうですね。どんなハイレベルな投手にも強気で向かっていくあの姿勢は、チーム全体の士気を高めてくれます。また意外に天然で面白そうなキャラなので、チームのムードも明るくしてくれそうですね!

 

 

4.古豪私学を復活へと導いた名捕手!

 

 ラストを飾る四人目は、ぼくが最も“敵に回すと手強い”と感じる相手です。

 “近代高校野球漫画”の傑作ラストイニング』(中原裕作)の主人公チーム・彩珠学院(以下・彩学)の二年生キャッチャー・八潮創太(やしおそうた)ですね。

 

 

 なぜぼくが、八潮をここまで警戒するかと言いますと……彼というか彩学のやり方というのが、ぼくら墨高とよく似てるんスよ。相手を研究し、その長所と短所を見つけ出し、長所を封じ短所を攻めていく。

 

 もちろん、ぼくらも明らかな格下のチームに、研究されたことはあります。でも、あまりに個人能力が違いすぎると、力でねじ伏せることはできるんスよ。

 ところが、彩学はどんなに甘く見ても、戦力的にはぼくらと互角です。

 戦力が互角以上の相手に研究され、短所を徹底的に攻められたら、それは苦しいに決まってます(苦笑)。

 

 また、もう一つ彼を認めなければならないのは、その“探求心”ですね。少しでも疑問に感じたことはすぐに調べ、理解できるまで自分の中に落とし込み、分からなければ監督だろうが相手チームの主力選手だろうが、すぐ聞きに行く。

 

 何といいますか……ぼくはチームが勝つためにどうすべきか考えるのですが、彼は野球そのものを深く理解しようとしている印象ですね。一度うちの部室に招いて、谷口さんや倉橋さん達も交えながら、じっくり野球のことを語り合いたいものです。

 

 【関連リンク】

stand16.hatenablog.com