<はじめに>
手放しで称えることはできない。試合は完敗だったのだから、それはかえって失礼というものだろう。
でも、けっして恥じるような試合ではない。再三のピンチを迎えても、動揺して自滅するようなことはなかった。ヒットは結果的に1安打だったが、きちんとボール球を見逃し、ねらいダマをしぼり、相手投手を疲れさせることはできた。
そうはいっても比嘉監督以下、選手達、チーム関係者は悔しかったろう。それでも劣勢に立たされながら、最後まで自分達のやるべきことをやり切った。そのことは、誇りに思って欲しい。
1.沖尚に足りなかったこと
じゃあ、何が足りなかったのか。それはねらいダマを捉えるバッティングの精度と、「必ず打ってやる」という決心である。
盛岡大付の渡辺投手は、敵ながら素晴らしかった。制球力に加え、多彩な変化球と見た目以上に伸びのある速球。県大会レベルでは、なかなかお目に掛かれない好投手である。
全国レベルの好投手に対し、沖尚打線は、“絶対に手を出してはいけない”外のスライダーはことごとく見逃し、球数を費やさせた。
そこまでは良かったのだが、真ん中付近に入った球を捉えることができなかった。TVで見る限り、沖尚は速球に狙いを絞っているように見受けられたが、もっと変化球を積極的に打っても良かったように思う。
少し中に入れば打たれる。そう意識させれば、渡辺投手にもっとプレッシャーを掛けられたかもしれない。
2.コロナ禍の中、できることはやり切った沖尚
ただ、真ん中付近のボールを確実に捉える技術は、練習量と経験値でしか身に付かない。そして今回に限っては、コロナ禍により、練習試合でハイレベルな投手を体感する機会をなかなか得られなかったことだろう。おまけに休校期間もあり、十分な練習時間も得られなかったはずだ。
あらゆる制限の中、できりだけの練習・準備はしっかりやりきって、甲子園で戦えるチームを作ったことは、結果に関係なく賞賛されるべきだと思う。
3.大きな悔しさは、沖尚がさらに強くなるエネルギーとなる!
今年は二回戦進出が精一杯だった。しかし来年はちがうはずだ。新チームはすぐに甲子園を意識したチーム作りができる。
特に前盛捕手ら2年生は、バッティング練習の時、あの渡辺投手をイメージできる。それを全員で共有すれば、今度は渡辺投手と同等以上の力を持つ全国レベルの投手でも、攻略できるだろう。何せ二年前、今プロで大活躍している興南の宮城大弥投手から、8点をもぎ取ったチームなのだから。
今夏の悔しさを晴らすためにも、来月に迫る秋季沖縄県大会と九州大会を勝ち抜き、来春の選抜出場を勝ち取って欲しい。
実力のあるチームにとって、大きな悔しさは、実力をさらに高めるエネルギーとなるはずだから。