南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

”ほんらいの良さ”を取り戻しつつある興南の現チーム(2021年・秋)

 

 先月末に行われた秋季沖縄県大会準決勝・興南vs沖縄水産の一戦。結果はご周知の通り、延長十四回タイブレークの末、興南が8-7と激戦を制し、九州大会出場を決めた。

 

 この日――私は興南の試合を見て、久しぶりに胸を打たれた。

 

 試合は終始、沖水のペースだった。このところ県内各校の非力ぶりが気になっていたが、沖水各打者の振りは鋭く、少しでも甘く入ったタマは見逃さず打ち返していた。コロナ禍で練習時間はあまり取れなかったろうが、打線の破壊力はもう“全国レベル”に達していたと思う。要所で守備が乱れ、勝ちを逃したことだけがもったいなかった。

 

 一方の興南は、投打ともに終始押されていた。先発の安座間君が2点を失い、一度は追いついたものの、リリーフの平山君が2点を勝ち越され、九回表には失策絡みでもう1点を失った。2-5,3点差。通常ならここでジ・エンドとなる展開だが、その裏の集中打で追い付き、試合を振り出しに戻して見せた。

 

 この九回裏、そして十三回裏。いずれもビハインドを追い付いたシーンで、私は興南現チームの底力を感じる場面があった。

 

 各打者とも、バッティングの基本の形を崩さなかったのである。こういう時は、焦ってついボール球に手を出したり、大振りしてしまいがちである。

 

 しかし興南の各打者は、この逆境の場面で、普段練習している基本の打ち方を忘れることがなかった。この集中力の高さに、凄みを感じた。

 

 興南といえば、春夏連覇した2010年のイメージが強い。ただ私の中では、中部商・沖尚を連覇してきた浦添商を延長11回・再試合の末に破った2007年決勝、選抜優勝の沖尚を最後まで苦しめ抜いた2008年のチームも印象深いものがある。

 

 そう、興南って“こういうチーム”じゃなかったか。個人能力で上回る相手にも、その力をかわし、喰らいつき、相手のミスにつけ込んで勝機を見いだす。名門でありがなら、いわゆる「泥臭いプレー」も必要とあらば実行できるのが、興南というチームほんらいの強みではなかったか。

 

 そしてつい一昨日、興南は九州大会初戦で日章学園(宮崎)を完封で破り、初戦を飾った。新聞報道でしか読んでいないが、1年生投手の平山君を始め、各選手がそれぞれの持ち味を発揮した良い勝ち方だったという印象である。

 

 そして今日。ついに選抜出場の懸かった大事な一戦・準々決勝だ。好投手を擁する難しい相手だが、今の興南なら、少なくとも一方的にやられることはないだろう。願わくは、相手の好投手を打ち崩し、勝って選抜出場を当確させて欲しい。

 

 大舞台を経験し、さらに自信を付ければ、今のチームは大きく化ける可能性がある。昨年の具志川商業がそうだったように。

 勝って結果を出し、自信を付けよ。そうすれば、君達はもっと強くなれる。