南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

<考察>谷口キャプテン引退後、墨高野球部がすべきだったこと ー『キャプテン2』よりー

 

 

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<はじめに>

 

 GJにて『キャプテン2』の続編(“谷口監督・丸井キャプテン編”)が連載されている。一応、その内容も目を通してはいる。しかしそれは一旦脇に置いて、墨高をリアルな野球部だと考えるなら、谷口引退後――谷原に惜敗してから何が起こるのか、何をすべきだったのかを私なりに考察してみたい。

 

1.チームの方向性をどうするのか

 

 墨高が、谷原や東実のような甲子園常連校なら、こんなことは考えなくていい。しかし彼らは、元々が「普通の野球部」だったのである。

 それが谷口タカオという、ある意味“特異な人間”が入部したことで、チームは強くなり、有望選手も入ってくるようになった。

 

 だが、墨高野球部のチームの性質自体は、変わっていない。谷口が引退したことで、彼らが元々「普通の野球部」だったという事実は、否応なく露わになるはずだ。

 

 そこで、二つの選択肢が出てくる。

 

 一つは谷口入部以前の、気楽に取り組んでいた時期に戻すことだ。まあ、練習中に焼き芋を後輩に買いに行かせるような怠惰な部活にまで堕ちなくとも、できるだけ一生懸命練習はするが、それ以上は望まない。要するに普通の部活以上のことはしないということ。

 

 もう一つは、やはり谷口が作った“強豪野球部”としての土台をさらに積み上げ、谷原や東実、川北といった甲子園常連校と対等に戦い、はっきりと「甲子園出場がねらえるチーム」を完成させることである。

 

 この問題について、墨高野球部は谷口引退後、残った部員全員で即話し合いを持つべきだったと思う。そこが曖昧だったから、過酷な練習に付いていこうとする部員と、付いていけない部員とに分裂してしまったのだ(もちろん素手で硬球ノックを受けさせたことが大問題であることは、言うまでもない)。

 

 墨二中時代、すべて谷口のマネをしようとして失敗したのとは、原因が違う。チームとして今後どうしたのかをはっきりさせなければ、先へは進めない。

 

 もし「普通の野球部でいい」という意見が多数ならば、丸井はそれに従うか、そういう考えの部員を懇々と諭す必要がある。

 

 あるいは「(谷口の意思を継いで)甲子園を目指したい」という結論が出たのならば、その目標を達成するためには厳しい鍛錬が必要なこと、ある程度何かを(例えば余暇の時間等)犠牲にしなければならないことを伝え、その意思をチーム全員で統一しなければならない。

 

 それをしなければ、キャプテン丸井がどんな考えを持っていようと(正しくても正しくなくても)、チームがバラバラになることは避けられない。

 

 

2.監督・谷口との役割分担

 

 もしかしたら、1よりもこちらの方が難しいし重要かもしれない。

 今まで墨高野球部には、監督というポジションを置いたことがなかった(責任者として部長はいたが)。

 

 監督を置くということは、今までの墨高野球部と決定的に変わることがある。すなわち、チームの意思決定をする者が、キャプテンでなくなるということだ。練習方法にしても、試合におけるサインや選手交代にしても、そのすべてではないにしろ、その役割をキャプテンではなく監督が担わなければならない(故にこの作品、『キャプテン2』という題名はおかしいと思う)。

 

 だから丸井は、“監督”谷口とよくコミュニケーションを取り、どこまでが自分の役割で、どこからが監督の仕事なのかを区別しなければならない。またそうして決まった役割分担を、チームメイトによくよく周知する必要がある。

 

 でないと、部内に“権力の多重構造”が生じ、あっという間にチームが崩壊してしまうだろう。

 

 

3.チーム強化をどうするか

 

 仮に「甲子園出場を目指す」という目標を設定したとする。そうなれば、あとは具体的に何をすれば良いのか。つまり練習方法や日程、対外試合の調整等、チーム強化をどのように進めていけば良いのかを決めていくだけである。

 

 ただ、ここで避けて通れないことがある。それは「なぜ昨年度、谷原に勝てなかったのか」を分析することだ。

 

 ここだけは、ハッキリと指摘しておく。谷原に勝てなかった原因は、「対策練習の不足」と「投手陣のローテーションの組み方のミス」である。

 

 あの試合、二番手の野田から3点先取したはいいが、その後リリーフの村井を八回までまったく打てなかった。大敗した練習試合から三ヶ月近く間があり、スピードに慣れる等の練習時間は十分に取れたはずだ。話を読む限り、谷原の村井を意識しての対策は取らなかったのだから、打てなくて当然である。

 

 さらに投手陣。まるで判で押したように、毎試合四人の投手を登板させていたら、みんなコンディションが悪くて当然である。前年度(原作)のように、投手陣のローテーションをきっちりと組み、谷原戦に登板させる投手は温存させ万全のコンディションで臨ませていたら、十分勝てたはずだ。

 

 あまり語られていないが、松川はあの谷原を七回まで無失点に抑えていた。あの後、コンディションの良い投手をリリーフ登板させていたら、初回の三点で逃げ切っていた可能性は高い。あの時点まで、谷原は明らかに墨高をナメていたのだから、そこに付け込む隙はあったはずである。

 

 その反省から、一大会を勝ち抜くのに必要な投手の枚数、ローテーションの組み方、大会へ向けて投手陣強化の方法について考えなければならない。それをやらないと、来年もまた「惜しかったね」で終わってしまう。

 

 

<終わりに>

 

 ここまで述べてきた事項は、墨高野球部が取り組むべきことの、ほんの一部に過ぎない。

 残念ながら、私は『キャプテン2』の作者ではない。物語が今後どのように進んでいくかということに対し、予想や感想は述べられても、制作に立ち入ることはできない。

 私も一読者として、同作がどのように展開していくのか、静かに見守っていきたいと思う。