南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

漫画『JC、殺人鬼やめました』を読んで思い出した、23年前の”重大事件”

 

<はじめに>

 最近、ネット配信されている洋介犬氏の『JC、殺人鬼やめました』という漫画にはまっている。この物語は、過去26人もの命を奪った殺人鬼であった女子中学生・赤麻田羊(あかまだよう)が、今では「禁煙感覚で」(!)殺人鬼をやめ、普通の中学生としての日常を綴っていくという内容である。

 

 この漫画を読むと、思い出さずにはいられない。ちょうど私が中学生の時に発生した、あの重大事件――神戸連続児童殺傷事件、いわゆる“酒鬼薔薇事件”のことを。

 

1.事件の要因として挙げられた、様々な“珍説”

 あの事件は、殺された男子児童の首が中学校の正門前に置かれていたという猟奇性や、犯人が何とその中学校に通う14歳の男子生徒だったという点で、連日のようにメディアでセンセーショナルに報じられた。

 

 ただ、それと同じくらい印象的だったのは、メディアで事件の要因として挙げられた、様々な“珍説”である。

 

 曰く、ニュータウンというきれい過ぎる環境で育ったことが、かえって狂気を育んでしまったとか。曰く、学校の管理教育や受験戦争が悪いとか。曰く、ホラー映画等で猟奇的なシーンを見たことが原因とか。

 

 が……少年の供述が明らかになると、それらがすべて的外れであったことが分かった。読者の気分を害しそうなので、詳細を書くことは避けるが、要するに殺人という行為によって、少年は性的興奮を覚えていたというのである。何とも見も蓋もない話だ。

 

 今改めて思い出すと、この事件があれだけ騒がれた一番の要因は、犯人が“14歳の中学生”だったという点だろう。当時、すでに学級崩壊が社会問題として報じられ始めていたが、まだ大人達の間で「子供は純粋である」という認識が残っていた時代だったと思う。

 

 だが、それは幻想でしかなかったのだ。子供は“純粋だからこそ”残酷にもなるし、中学生くらいの年齢にもなれば、悪知恵も働く。平気でオトナを騙そうともする。

 

 そして――件の少年のような狂気は、年齢も社会的立場も関係なく、巣食う者は巣食う。子供だろうが大人だろうが、社会的地位の高い人だろうが低い人だろうが。そして、どんな教育を受けようが。残念ながら、ある一定の割合で、心に狂気を潜ませた者は生まれてしまう。そんな残酷な現実を、あの事件は我々に突きつけたのである。

 

 

2.誰にでも狂気は巣食う”可能性はある”

 漫画の主人公・赤麻田羊は、女子中学生である。女子中学生といえば、大人から見ればまだまだ子供で、庇護しなければならない存在……のように思える。だがら人によっては、この漫画の設定は荒唐無稽なように思えるかもしれない。

 

 だが、私はあの酒鬼薔薇事件を知っている。彼女のような少女が実在しても、決して不思議ではないのだと思う。実際、その“酒鬼薔薇”を崇拝する高校1年生の女子生徒が、同級生を殺害するという事件も起きている。

 

 ある話で、赤麻田羊は言っている――気づけばそう(殺人鬼に)なっていた、と。

 狂気は、誰の心にも巣食う“可能性がある”。彼女は、彼女自身が望むと望まざるとに関わらず、気づけば狂気を心の中に巣食わせていたのだ。

 

<終わりに>

 改めて――この『JC、殺人鬼やめました』という漫画について。

 ストーリー自体はコミカルで、深く考えずとも楽しく読める。まあ……多少、グロテスクな表現がないわけではないが、それも人物の絵柄が可愛らしいため、あまり気にならない。

 主人公の赤麻田羊も、普段はごく普通の女子中学生だ。中学生らしい日常も描かれており、ついほっこりしてしまう場面もある。

 だが、やはり彼女は“元”とはいえ、殺人鬼である。元・殺人鬼らしいダークな彼女の台詞に、思わずゾクッとしてしまう。

 それらも含めて、この漫画のユーモラスさとブラックを併せ持つ魅力を、読者の皆さんにも是非味わっていただきたい。

 

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