南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第27回「「イガラシくんって野球で忙しいはずなのに、どうやって学年十位以内に入れたの!?」」~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~>

 

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<はじめに>

 こんにちは、墨高野球部のイガラシです。前回(第26回「イガラシくんって、どんなヤツ!?」)は、ちょっと妙な感じになっちゃいましたが、今日はぼく一人なので、ホッとしています(笑)。テーマも今回は、ちゃんと事前に教えてもらってますし。

 では早速、今日のテーマを発表します。

 

「イガラシくんって野球で忙しいはずなのに、どうやって学年十位以内に入れたの!?」

 

 これも色んな人に聞かれるんですよね。実際、部活と勉強の両立に悩んでる中高生も多いみたいですし。でもぼく、そんな特別なことをしてるわけじゃないスよ。

 

 えっ、家に帰ってから猛勉強してるのかって? まさか(笑)。さすがに練習が終わると、ぼくだってクタクタですよ。あと毎日じゃありませんが、店(イガラシの実家は中華そば屋)が忙しい時には、おやじとおふくろの手伝いをすることもありますし。ま……やるとしても、寝る前にさらっと教科書やノートを見返すくらいです。

 なので、家ではテスト前の部活休止期間を除いて、ほとんど勉強してないスね。

 

 あれ、信用できない? そんなんで学年十位以内に入れるわけがない? ぼくが特別アタマがいいだけ? いやいや……ま、人より少し勉強ができることは認めますけど、自分ではそんなにアタマがいいとは思ってませんね。

 

 いや、謙遜じゃないですって(苦笑)。ぼくの小学校からの知り合いで、医者を目指してるヤツがいるんですけど、そいつはもう宇宙人レベルですからね。なにせ塾も行かずに、自分で中学の勉強は終わらせて、家では高校の問題を解いてるとか言ってましたから。そいつは中学卒業後に、都内でもトップの進学校へ行きましたけど。

 

 比べる対象がおかしい? まあ、そうかもしれませんね(笑)。たしかにガキの頃から、医者を目指してるようなヤツですから。ぼくのような“凡人”とは違います。

 え、それは嫌味かって? いや、そういうつもりじゃないんスけど……(苦笑)

 

1.イガラシ流勉強法!!

 まあいいや。じゃあ、ぼくが勉強をどんなふうにしてたのか、言いますね。といっても、納得してもらえる自信はないですが……

 

 答えは――授業をしっかり受けること。

 

(会場:「えー」という声と溜息が入り混じる)

 ほら、やっぱりこういう反応になると思いましたよ(苦笑)。でも考えてもみて下さいよ。さっきも言ったとおり、家ではほとんど勉強する時間は取れないんスよ。だったら、授業をしっかり受けるしかないでしょう。

 

 うーむ……ひょっとして、「授業の受け方」が、周りのヤツと少し違うかもしれませんね。よく居眠りしたり、先生に隠れてこっそり落書きしてるようなヤツいますけど。よくそんなヒマあるなって思いますよ。

 

 えっ、ぼくが何をしてるかって? まあ……参考になるか分からないですけど、それをちょっとお話しさせてもらいましょうか。

 

 だいたい学校の授業なんて、先生が板書しながら説明して、時々何人かに指名して発表させて、あとは先生の板書をノートに写すっていう形じゃないスか。

 ぼくはそれだけだとつまらないので。板書を写し終えても、ノートにスペースが残るってことあるでしょう? ぼくはそこに、自分で問題を考えて、それを書いてるんスよ。

 

 たとえば数学で、二次方程式を習うとするじゃないスか。まずノートには、先に先生の板書を写して、余った時間に類似問題を自分で作って、解いていくんですよ。

 えっ、難しい? そんなことないでしょう。だって、単に数字を変えるだけですよ?(笑)

 

 国語でも理科でも英語でも、同じことをやるだけです。大体、何度もテストを受けてりゃ、どんな問題が出るか予想できるじゃないですか。それを余った時間に書いていく。

 これをやると、別の得もあるんですよ。ほら、学校の成績って単にテストの点数だけじゃなく、授業態度も見て評価するでしょう。そうやって自分で問題を書いてたら、先生達は“熱心な生徒”だと思って、多少テストで失敗しても、評価は下げないでくれたりするので。

 

2.“受け身”で授業を受けるな!

 え、自分で問題を作るのはフツウ簡単じゃない? それはぼくがアタマがいいからできることじゃないかって? ああ……たしかに勉強が苦手なヤツにとっては、そうかもしれませんね。

 

 だったら、先生の板書で、大事そうな所をもう一回書けばいいんじゃないスか? 数学なら全く同じ問題を書いたり、国語なら漢字の練習とかもできるでしょう。英語なら、英単語とその意味とか。

 

 とにかく……“受け身”で授業を受けたら、ダメですよ! どのみちテストでは、自分の力だけで問題を解かなきゃいけないですし。だったら普段の授業から、「ここがテストに出そうだな」とか、「これは今で暗記しとこう」とか、自分なりに課題を持って臨まないと。

 

 これって、野球でもそうじゃないスか。ただ漫然と決められた練習メニューをこなすヤツより、自分なりに「今日の練習ではここに気を付けよう」と思って臨むヤツの方が、ずっと上達するのも早いでしょう。もちろん野球だけじゃなく、他のスポーツでも習いごとでも、何でも一緒だと思いますよ。

 

<終わりに>

 というわけで、今日の講座は以上です。

 そういえば……あ、これは関係ない話スけど。不思議なのが、丸井さんなんですよ。あの人、野球では谷口さんと同じかそれ以上に努力できる人なのに、なんで勉強となるとサッパリなんですかね。

 ウワサじゃ、授業中よく居眠りしてるみたいですし。あと、最近の定期考査で赤点を三つも取っちゃったと笑って話してたんスけど……それ笑いごとじゃないでしょうよ(苦笑)。せっかく苦労して、編入試験に合格して墨高に入れたというのに。

 しかも中学と違って、高校ではあまり成績が悪いと「留年」ってこともあり得るんですけど。その辺、あの人ちゃんと分かってるのかなあ……

 

<完>