南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第33回「イガラシくんの考える”エースの条件”とは何か!?」ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より>

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<はじめに>

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今回も視聴者(?)の方から質問が届いていますので、それに答えていく形で、講座を進めて行こうと思います。

 ペンネーム「墨谷商業」さんより。

―― イガラシさんはじめまして。長年高校野球ファンを続けている者です。最近は、一人のエースに任せるのではなく、複数の投手で戦うチームも増えてきました。しかし、それでもエース番号「1」を与えてらえるのは、たった一人です。

 そこで、イガラシさんの考える“エースの条件”というものがあれば、教えて欲しいです。

 

 フフ、なかなか興味深い質問ですね。実はぼくも、それを考えたことがあります。というわけで、今回のテーマは……

 

「イガラシくんの考える“エースの条件”とは何か!?」

 

1.イガラシの考える”エースの条件”

 ぼくの出した結論は、至ってシンプルです。

 高校野球はブロック予選等を除いて、基本的には一発勝負のトーナメント戦ですよね。最後まで勝ち残るチームは、たった一つ。他のチームは、すべてどこかで負けるわけですよ。

 

 ということで、ぼくの考える“エースの条件”とは――そいつが打たれて負けたら仕方がないと、チームメイトに思わせられる存在であることです。

 

 ですから、ピッチャーとしての能力が高いことは言うまでもありませんが、普段の練習やその他の場面での振る舞いでも、他のチームメイトに一目置かれる者であることが望ましいですね。

 

 名前を出してしまうと悪いのですが――ぼくが墨二中でキャプテンを務めていた頃の後輩・近藤。ぼくもピッチャーをしていましたが、サードも兼任だったので、ぼくは背番号「5」にして、近藤にエースナンバー「1」を与えても良かったわけですよ。ピッチャーとしての能力は、申し分ないですし。

 

 けど……当時のチームメイト達、もし近藤が打たれて負けていたら、納得できていたと思います?(苦笑) まあ結果として優勝できたから、そこが問われることはなかったわけですが。なので当時の近藤には、まだエースナンバーを与えるには早かったんですよ。

 

 あ、もちろん今は違いますよ。現チームでは、明らかにピッチャーとしての能力はずば抜けてるので。よっぽど練習をさぼりでもしない限り(笑)、もし近藤が打たれて負けても、後輩達は納得すると思います。ま、あいつも何だかんだ成長してきてたので、最後の大会がどうなるか、個人的には楽しみにしています……そうイガラシさんが言っていたと、どなたか伝えてもらえますか?(笑)

 

2.複数の主戦級投手がいても、大事な場面でマウントに立てるのは一人だけ!

 そういえば最近、「特にエースを設ける必要はない」とか、「(背番号は別として)左のエース、右のエース」という考えも出てきているようですね。

 まあ各校のチーム事情というものがあるので、それについてどうのこうの言うつもりはありませんが……ぼくだったら、そういうことはしません。

 

 どうしてかって? さっき高校野球は、一発勝負だと言いましたよね。例えば――同点の九回裏、ノーアウト満塁のピンチを迎えたとします。

 いくら主戦級の投手が何人いても、一度にマウンドに立てるのはたった一人なんですよ。そんな時、みんな能力的にはそんなに変わらなくても、何となく「こいつはプレッシャーに負けそうだな」とか、「こいつなら抑えてくれるかもしれない」とか思うじゃないスか。

 

 なぜなら今までの試合での実績、普段の練習も含めた振る舞い。要するに、そいつのすべてを……チームメイト達は見てきているわけですよ。となれば、ああいう大ピンチの場面では、一番信頼の置けるやつにマウンドに立っていて欲しいと思うのが人情ですよね。

 

 ですからぼくは、エースというものは自分が名乗るものでも指導者が指名するものでもなく、最終的にはチームメイト達が見て決めるものだと思っています。

 

 今の墨高で言えば、夏の大会では松川さんや井口の登板機会も多いかもしれませんが、やっぱりエースは谷口さんですよ。あの人ほどチームメイトからの信頼を集めている者はいませんから。あの人が打たれて負けるのなら、たぶんほとんどのメンバーは納得するでしょうね。

 

<終わりに>

 ぼくはどう思うかって? そうだなあ……やっぱりぼくは負けるのが大嫌いなので、誰が打たれて負けようと、嫌なものは嫌ですね。たとえ最後のマウンドに立っていたのが谷口さんだろうと、誰だろうと。

 

 もし谷口さんが打たれて負けたら、きっと「援護点を取れなかった」ことを悔やむでしょうね。え、もし自分が打たれて負けたら? そりゃもう……手の甲が腫れるまで、マウンドを殴り続けるかもしれません(苦笑)。

 

 うーむ、やっぱり本音を言います。ぼくは端から、負けることなんて考えていません! どんな苦しい展開を強いられても、最後の最後まで足掻き続けるつもりです。

 それで負けるようなら……たぶんボロボロになっているので、悔しいとか悲しいとか、感情を出すこともできなくなっているでしょうね。

 

 どこまで勝ち続けるつもりかって? そりゃもちろん……あの深紅の大旗を握るまでですよ!!