南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第34回「スクイズは、どうして必要なのか!?」ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より>

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<はじめに>

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今回の講座は、野球の試合で一点が欲しい時に行われるプレー、「スクイズ」についてお話しさせていただきたいと思います。

 野球にあまり詳しくない方のために少し説明しますと、送りバントの応用技だと思って下さい。要するに、ノーアウトもしくはワンアウトでランナーが三塁にいる時、バントでボールを転がして、三塁ランナーをホームインさせるプレーを「スクイズ」と呼びます。

 というわけで、今回のテーマは……

 

スクイズは、どうして必要なのか!?」

 

 

1.リスクの高い「スクイズ」というプレー

 野球の試合を見たことがある人は分かるかと思いますが、「スクイズ」というのは結構リスクの高いプレーです。

 もし相手バッテリーに見破られて、投球を外されたり、空振りしてしまったら、三塁ランナーが飛び出してしまい、挟殺プレーでタッチアウト。せっかくのチャンスが一瞬で潰えてしまいます。また転がしたとしても、ピッチャーや野手の正面だったり、ランナーのスタートが遅れてしまえば、ホームで刺されることもあります。

 最悪なのが、小フライを上げてしまうことですね。捕球された上に、三塁ランナーがベースに戻る前に送球されたら、ダブルプレーを取られてしまいます。

 

 なので見る人によっては、「普通にヒッティングの方がいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。いや、ぼく自身も他のチームの試合を見ていて、「ここでのスクイズは悪手じゃないか」と感じることもあります。

 

2.スクイズは相手との“駆け引き”に使えると望ましい

 じゃあ、どうして「スクイズ」という戦法を使う必要があるのか。ぼくが考えるに、大きく分けて二つ理由があります。

 

 一つは、相手投手のレベルが高くなればなるほど、打ち返すのも難しくなるからです。

 以前もお話ししましたが、ランナーを得点圏に背負うと、バッテリーはより慎重に投球してきます。簡単にヒットにできるようなタマは、ほぼ投げてこないと思った方がいいでしょう。

 しかし……バットに当てて転がすくらいなら、ヒットを打つよりはまだ易しいです。もちろん好投手のボールは、当てるだけでもそう簡単じゃありませんけど、これはもう練習するしかありません。

 

 もう一つは、これも前にお話しさせてもらった「盗塁」と同じで、“スクイズはない”と相手バッテリーに思われてしまうと、今度はバッターとの勝負に集中されちゃうんですよ。逆に“スクイズがあるかも”と思わせるだけで、相手バッテリーは最初の一、二球を外してくれて、ボール先攻でバッター優位のカウントにしてくれるんですよ。

 

 あ、ついでに言っておきますと……“スクイズしかない”って思われるのも、逆に良くないです。つまり、毎回スクイズばかりしていると、相手バッテリーに読まれやすくなっちゃうんですよね。まあ、力量の高いバッターが少ないチームだと、どうしてもそうなりがちですが。

 

 というわけで――「スクイズ」というのは、相手と“駆け引き”しながら使うのが望ましいです。相手内野陣の守備位置やバッテリーの様子を見て、まるで警戒していないようならスクイズ、警戒してサードとファーストが前進してきたらヒッティングというふうに。

 

3.スクイズをしない方が良い場面

 ちなみに、さっきも少し言いましたが、“スクイズをしない方が良い場面”というのもあるんですよ。

 

 これはちょっと考えれば分かると思いますが――例えば、相手投手陣に対して、明らかに自分達の打線の力量が上回っている時。こういう時は、スクイズなんかしないで、さっさと打ち崩して点差を付けた方がいいでしょう。

 また、相手投手がコントロールを乱している時も、あまり得策じゃありませんね。せっかくタダで出塁できそうな時に、スクイズでアウト一つやったら、相手に一息つかせちゃうでしょう。ま、ぼくならバントの構えで揺さぶって、甘く入ったタマをねらい打ちする。そして相手投手のコントロールが良くなってきた頃に、スクイズでトドメを刺します。

 

 それと逆に、相手投手の力量が上回っていて、二点以上のビハインドを背負っている時も、ぼくならスクイズを選択しません。

 これ、結構あるんですよね。一点でも差を縮めたくて、スクイズが決まっても同点に追いつけないのに、ついついやっちゃうってこと。気持ちは分かるんですけど、特に終盤に差し掛かると、相手バッテリーは点差を縮められたことよりも「アウト一つもらった」と、かえって助けられた気分になるんですよね。

 

 ぼくなら結果的に点が取れなくても、できるだけ粘って球数を放らせて、甘く入ったタマだけ狙い打ちします。終盤になると、守備の時間が長くなればなるほど、相手投手の気力や体力を削ることができますから。

 

<終わりに>

 要するに、「この場面で何をすれば相手が嫌がるか」ということや、「ここでの一点はどれくらい勝敗に影響するか」ということを常に考え続け、最も効果的な方法を選べるようになることが重要ってことです。これができるようになるためには、日頃から実践を意識した練習をつみ重ねていくしかありません。

 

 野球というのはイニングごとに、いや一球ごとに状況が変わっていきますから。スクイズに限らず、その状況に適したプレーを選択し実行できるのが、本当に強いチームだとぼくは思います。