昨日(令和3年12月14日)、地元のテレビ局で、『未来へ』『Best Friend』等の名曲で知られる沖縄出身の女性デュオ・Kiroro(キロロ)のボーカル・玉城千春さんの最近の活動についての特集が放送されていた。
玉城さんは現在、沖縄県内の小中学校を回り、「命の大切さ」を子ども達に伝える活動を行っているという。その中で、とても印象的だった彼女の言葉があったので、紹介させていただきたい。
―― 逃げてもいいから、自分を諦めないで。
ただでさえ長らく不況と言われてきた日本社会。とりわけ沖縄は、貧困家庭の比率が高く、大きな問題となっている。さらに近年、不登校の児童生徒数が増加してきたことも知られている。そこへ追い打ちをかけるように、コロナ禍が襲ってきた。
私は一人の大人として、子供達には大きな夢を抱いて欲しいと願っている。もちろん社会はそう甘くない。しかしそれを知るのは、大人になってからでいい。せめて子供達には、純粋に自分の将来を明るく希望を持って見据えて欲しい。そんな世の中であるべきだと思う。
しかし現実には、子供達でさえ生きづらさを感じさせてしまうのが現状だ。いじめ等、学校における問題だけでなく、家庭の事情から、進学や自分の希望をする進路を諦めざるを得ない子供達、若者も少なくないと聞く。
だからこそ、玉城さんの言葉は胸を打つ。
誰しも運が悪ければ、本人の努力だけではどうにもならないほどの、辛い現実にぶち当たる可能性がある。無責任な周囲は、逃げることを「恥」だの「負け犬」だのと嘲笑うかもしれない。だが、無理にその場に踏み止まろうとして、それで心身を壊してしまったら最悪だ。そうなった時、周囲は誰も責任を取らない、取れない。
もちろん逃げることには、後ろめたさが付きまとう。「もう少し頑張れなかったのか」と、真面目な人ほど自分を責めてしまいがちだ。そして、つい自暴自棄な行動を取ってしまうかもしれない。
だから玉城さんは言う――逃げてもいいのだと。その上で、逃げたことで自分の人生を諦めることはないのだと。
本当に人の心、人の痛みと向き合わなければ、出てこない言葉である。
Kiroroの曲は、心のひだにそっと触れるような、繊細で優しい歌詞のものが多い。学生時代、私も随分励まされた。このコロナ禍の厳しい世の中だからこそ、今一度多くの人に味わってもらいたいと思う。