南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

<雑記帳>対照的な『ドカベン』と『キャプテン』『プレイボール』

【目次】

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1.『ドカベン』の魅力は、“各キャラクターの魅力”

 昨日、書庫に眠っていた『ドカベン』を数冊引っぱり出し、読んでみたのだが、やっぱり面白い。「あまり好きではない」(※個人の感想)と失礼なことを書いてしまったが、やはりロングセラーになるだけの魅力はあると思った。

 

 何かと言えば、やはり“キャラクターの魅力”である。

主人公の寡黙ながら「大仏のような大きな男」(by殿馬)・山田太郎。その山田とバッテリーを組む「小さな巨人里中智。意外性の“秘打”が魅力な殿馬。悪球打ちでガサツながら人情味溢れる“男”・岩鬼。普段ニコニコしているが、やる時はやる男・微笑三太郎。

 また卒業生の山岡、監督も務めた土井垣将らも印象的だ。

 

 味方の明訓だけで、これだけ魅力的なキャラクターが揃っている。さらに敵側にも、打倒・明訓に執念を燃やし・あの「ハエが止まる」超遅球を生み出した白新高・不知火守を筆頭に、印象的なキャラクターが多い。他にも横浜学院の土門や、土佐丸高校の犬飼兄弟、不気味な隻眼の犬神。……全員を挙げていけば、それだけでページが埋まりそうなほどだ。

 

2.あまりにも『ドカベン』と対照的な『キャプテン』『プレイボール』

 そして、この『ドカベン』と比較してみて、改めて思うのだ。

 ある意味で、『ドカベン』と双璧ともいえる野球漫画の名作『キャプテン』『プレイボール』の作者・ちばあきおが、非常に稀有な作家であるということを。

 

 (どっちが良い悪いではなく)『ドカベン』のキャラクターの魅力は、ハッキリ言って“野球込み”である。野球を引いたら、キャラクターとして成立しない。

 しかし、『キャプテン』『プレイボール』のキャラクターは、“野球選手”というより、そこら辺にいる“たまたま野球をやっている”中高生という印象が強い。

 

 料理に例えれば分かりやすいだろうか。『ドカベン』が豪華な材料を集めてきて作ったデラックス弁当だとすれば、『キャプテン』『プレイボール』は冷蔵庫に残ったあり合わせの品で作った“ふつうの”弁当だ。しかし、この“ふつうの”弁当が意外にクセになる。

 

 ただ言えるのは、『ドカベン』あれだけの魅力的なキャラクターを考えるだけでも大変なのに、よくもあれだけ鮮やかに操ったものだということである。

 

 一方、一見して地味に見える『キャプテン』『プレイボール』も、キャラクターの魅力では負けていない。野球を抜いても、各キャラの普段の生活が浮かぶということは、それだけ深く作り込まれているということだ。

 

3.根底で共通する“野球への愛”

 このように、あまりにも対照的に思える両者だが、実は根底の部分は共通している。言うまでもないだろう――それは、“野球への愛情”だろう。

 

 二人とも野球を深く愛した。それは物語の一ページ一ページから、十分伝わってくる。そして、“こんな展開が見たい”という読者の期待に応えてくれたり、あるいは読者の期待をも上回る物語を生み出してくれたりした。

 

 野球への愛がないと、できないことである。

 

 本当に惜しいことに、野村克也氏に続き、水島新司氏までもが、野球の魅力を語れる人物が、またしても鬼籍に入ってしまった。残念でならないが、野球の魅力を伝えていくという作業は、残された人材でやっていくほかあるまい(本当に微力ながら、私も協力できればと思っている)。

 

 改めて。水島新司氏の魂と、消えることのない名作の数々に、合掌。