南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

<雑記帳>サッカー漫画「俺たちのフィールド」が教えてくれた、「情熱」というもの

【目次】

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<はじめに>

 少年の頃に好きだった漫画で、『俺たちのフィールド』というサッカーを題材にした作品がある。作者は、『仮面ライダーspirits』等で知られる村枝賢一氏だ。

 この漫画を、私は時々無性に読みたくなり、漫画喫茶に走る(今はコロナ禍で難しいのが残念だが)。何せ“古い”作品だ。同作が週刊少年サンデーに連載されていた当時、日本はまだワールドカップに出場すら果たしていない頃だった。世界大会はおろか、アジアですら勝てるかどうか怪しいと言われていた時期である。

 

 また作者の村枝氏は、サッカー経験者ではなかったそうで、戦術等の細かい描写は見られない。いわゆる“サッカーマニア”の人には、物足りないかもしれない。そんな作品のどこに、私は惹かれたのか。

 一言でいえば――「情熱」である。

 

1.ちゃんと描かれている“現代サッカーでの大事な部分”

 先ほど、細かい戦術用語は見られないと書いた。せいぜい当時言われた“アイコンタクト”や“ダブルボランチ”“オフサイドトラップ”等であろうか。

 

 しかし、現代サッカーでも大事だと言われている部分は、ちゃんと描かれている。

 

 それは一対一のぶつかり合いであったり、相手との心理的な駆け引き(要するに「騙し合い」)たったり、何より「絶対に負けない」というハートの強さであったり。

 これらは現代サッカーでも必要……というより、日本代表のサッカーにおいて“特に足りない部分”と言われる所かもしれない。

 

2.抉り出した当時の日本サッカーの“危うい立場”、そして「あの名言」

 繰り返すが、村枝氏にサッカー経験はなかった。それでも、細かい戦術はともかく、サッカーにおける大切な部分を見つけ出し描くことができたのは、なぜだろうか。

 

 やはり「情熱」なのだと思う。まだ弱かった日本サッカー、さらにサッカーを頑張っている、あるいは別の何かを頑張っている少年少女達に、どうにかして“勇気を与えたい”という強い思いが、この作品には通底していた。

 

 村枝氏の「情熱」は、当時の日本サッカーが置かれた“危うい立場”をも描き出していく。同作の読者ならば忘れられない、日本代表・鹿野監督の名言である。

 

―― 2002年大会の開催国を……日本は「半分」とはいえ引き受けてしまった。そのことにも、大きな責任があるんだぞ。

(中略)サッカーとは……宗教、言語、人種全てを問わず、世界中で理解されている唯一のスポーツだ。

 次のフランス大会に出場できなくとも、日本は、2002年大会に開催国特権で自動的に出場できる。それが、どういう事かわかっているのか!? 今度の予選に勝ってフランス大会に出場しなければ……「弱き国・ニッポンは金の力でワールドカップに初出場した」と、世界中から言われるんだぞ!!

 第一回ならともかく、60年も続いた大会に「開催国初出場」の記録を残す事は……サッカーを愛する人間にとって、永久に消えることのない……恥だ!!

 

 漫画内の台詞であるが、これが現実の日本サッカー界にも差し迫っていたのだから、今考えると関係者の重圧は、大変なものだったと思う。

 

 それにしても、よくこんな大問題を抉り出したものである。やはり「情熱」を……それも、凄まじいまでの熱量があったからこそ、私はこの作品に惹かれたし、大げさに言えば……この作品と一緒に戦っているような感覚さえ覚えた。

 

<終わりに>

 まだ読んだことのないサッカー好きの方は、是非読んでいただきたい。細かい戦術の話がない分、素人の方でも入り込みやすい。

 

 それはともかく……私はこの村枝氏に、もう一度サッカー漫画を描いて欲しいと思っている。戦術ももちろん大事だが、そもそもサッカーとはどんなスポーツなのか、W杯とは何なのか、どうしてそこに世界中の人々が熱狂するのか。そんなことを教えてくれる作品は、数少ないだろう。

 

 そういえば、私が今深く関わっている『プレイボール』『キャプテン』の作者である故・ちばあきお氏も、当初は野球の素人だったらしい。それでも、野球を“それなりに知っている人”でさえ見落としがちな野球、もっと言えば“勝負の本質”というものを、あきお氏は見事に描き切った。その根本にあったのも、やはり底知れぬ「情熱」だろう。

 

 サッカー等、ある種のスポーツ経験がないこと、言い換えれば知識がないことを馬鹿にする向きも見られるが、実は細かいことは枝葉に過ぎなかったりする。「情熱」があれば「名作が生まれる」とは必ずしも言えないが、「情熱」が元々の“知識”を凌駕することがある。

 

 私に初めてそのことを教えてくれたのが、この『俺たちのフィールド』という作品であった。みなさんも是非、ご一読あれ!!

 

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