昨日(令和4年3月20日)、春季沖縄県大会の一回戦・沖縄尚学対首里の試合を観戦した。結果は既報の通り、沖尚が9-0(七回コールド)と完勝を収めた。
正直、点差ほど沖尚が圧倒した試合ではなかったように思う。首里も七回までに6安打を放ちチャンスは作った。先発投手もよく投げていたが、二つのエラーが失点に絡んでしまったのが痛かった。もっともコロナ禍で思うような練習はできなかったはずなので、これは責められない。
一方の沖尚。優勝候補として臨んだ昨年の秋季大会では、準々決勝で敗れるという不覚を取った。この一回戦を見る限り、もう少し打線に迫力が欲しいところではあるが、エース吉山君を中心とした守備力は、やはり県トップレベルにある。たらればの話だが、もし彼らが昨秋の九州大会に出場していれば、選抜出場の切符を勝ち取っていた可能性は大いにあったと思われる。
また今回嬉しかったのは、沖尚が機動力を使った攻撃を見せていたことだ。すべてが得点には結びつかなかったものの、盗塁やエンドランでチャンスを広げていた。
低迷が続く沖縄高校野球の復活の鍵は、まさに“機動力”しかないと私は思う。
最近の高校野球は、よくも悪くも投打共に“パワー偏重”の傾向にある。このパワー野球に対抗するため、沖縄勢もパワー強化に舵を切るべきではないかと私も思いかけたが、昨年の選抜大会で具志川商業が機動力野球を武器に健闘したのを見て、考えが変わった。
機動力野球を駆使すれば、沖縄勢は十分全国で通用する。
ここで断っておくが、パワー野球を否定したいのではない。選手の特性によっては、機動力よりもパワーで押した方が合っているチームもあるだろう。またいくら機動力を使うといっても、まったく長打を打てないのでは怖さがない。
欲を言えば「機動力+パワー」なのだが、それぞれのチームに合った野球で良い。それよりも大事なことは、機動力野球のチームとパワー野球のチームが、大会毎に切磋琢磨し合うことだ。そうすれば、自然と互いに強くなれる。
今年の沖縄高校野球は、沖尚や興南のような機動力野球のチームと、沖水や前原のようなパワー野球のチームが鎬を削る構図になっているのが、面白い。
なお沖尚と興南は、互いに順調に勝ち進めば、三回戦でぶつかる。勝った方が、春から夏にかけての沖縄高校野球をリードしていくことは間違いないだろう。
やはり私学二強のどちらかになるのか。はたまた沖水や前原、北山のような県立校が意地を見せるのか。あるいはKBC沖縄や日本ウェルネスのような新興勢力が大会をかき回すのか。選抜出場校がないのは寂しいが、それでも興味の尽きない春季県大会である。