南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

逆方向へのバッティングは、なぜ必要なのか!? ~第94回選抜高校野球より~

f:id:stand16:20190707211434j:plain

 

 プロ野球だけでなく、高校野球でもレベルの高い試合になると、いわゆる“逆方向へのバッティング”が重要と言われている。念のために説明すると、右打者が右方向へ、左打者が左方向へ打ち返すことが「逆方向」である。

 

 そもそも、なぜ“逆方向へのバッティング”が重要だと言われてるのか。

 もちろんヒットエンドラン等、作戦で使うということもある。だがそれ以上に、現代のピッチャーはほとんどが横に曲がる球、すなわちスライダーを持ち球としていることが、逆方向へのバッティングが重要とされる理由である。

 

 一般に、右打者及び右投手が多い。右打者から見て、右投手のスライダーは外へ逃げていく軌道になる。実際に打ってみれば分かると思うが、逃げていくボールは引っ張り込んで打つと引っ掛けてしまい、ゴロになりやすい。引っ張るのではなく、おっつけるようなスイングの方が、芯で捉えてライナー性の打球を打ち返しやすい。

 

 だから私は、試合観戦においてチームの打撃のレベルを計る時、打球方向を見る。

 どんなに長打が多くても、引っぱった打球ばかりのチームは、好投手と当たればきっと抑えられるだろうと推測する。一方、さほど長打は多くなくても、逆方向へ打ち返せるチームはどんな投手からでも得点できると思う。

 

 ただし――ここで一つ断っておかねばならないのは、“引っぱり”のバッティングがダメというわけではない。むしろ、引っぱって速い打球を打つことができない打者が、逆方向へ打てたとしても、それは単なる手打ちか振り遅れの場合が多い。

 

 やはり基本はフルスイングなのだ。フルスイングで長打の打てるチームが、相手投手のレベルや状況に応じて、逆方向にも打ち返せるから、効果的なのだ。最初から長打を捨てているチームなど、まったく怖くない。インコースに速球を集めれば、簡単に詰まらせられる。

 

 もし不器用で、引っぱりしかできないバッターでも、対応策はある。要するに、アウトコースの逃げていく球を捨てればよいのだ。

 

 捨て方は二通りある。一つは「見逃せば半分以上はボール球」と割り切って、手を出さないこと。もう一つは、ファールで逃げる技術を身につけることである。

 

 どんなにコントロールが良い投手でも、全球アウトコースの厳しいコースを突ける投手というのは、そうはいない。どれかは内寄りに入ってくるはずだ。その内寄りにきた球をねらえばよい。

 

 なんだかんだでピッチャーにとって怖いのは、一発長打のあるチームである。“力と技”とはよく言ったものだが、技を磨くのはもちろん大切なことだが、それにより力を捨ててしまうと、持てる能力の半分しか出せなくなってしまう。

 

 バッティング一つとっても、引っぱりか逆方向かという二者択一ではなく、「どうすれば勝つ確率を上げられるか」という視点で、各チーム及び各選手には、日々の練習に取り組んでもらいたい。