<はじめに>
俳句を始めて、早くも二年が経つ。
当初は一句人選入りするのに四苦八苦していた私も、今ではどうにかコンスタントに複数人選入りを達成できるようになった。
だが、良くも悪くもこなれてきた感があり、今後どのように句作を続けていけばよいのか、少々行き詰まりを感じ始めてもいる。
そこで――今年(2020年)に詠んだ句について、いま一度振り返る意味で、自選30句を選んでみることにした。なお下記の句は、すべて「俳句ポスト365」「俳句生活―よ句もわる句も―」「青嵐俳壇」いずれかの入選句である。
1.動物
蝉が鳴く子らの歪な千羽鶴
蛙鳴く水より重きクロロホルム
病棟のソファはざらつく遠蛙
翡翠来七人の子が消えた山
翡翠の抉り取る水面の吾の目
消毒は死骸のにほひ蟇(ひきがえる)
十日目の教育実習小鳥来る
小鳥来るジャングルジムは使用不可
マリア観音硬く笑ひて法師蝉
断崖の色のヒヌカン寒雀
※青嵐俳談・地選
2.植物
まち針を抜くやうに姫女苑を抜く
姫女苑津波は展望台まで来た
藤の花雲ごと千切るやうに摘む
つねりたい姪っ子のくび彼岸花
二十秒水に潜れた西瓜食ふ
西瓜の香情事はラジオ流しつつ
梅が咲く骨を洗つたやうな白
雲が剥がれる梅の散つてゆく音
からからと風葬の骨シネラリア
どうがらし小さいものは踏むと痛い
3.地理・天文
雪解水誰か笑つた窓の向こう
呼び鈴の♯が取れて雪解水
十五回サヨナラボーク雲の峰
雲の峰吃音の子のロンダート
4.社会に目を向けて
蒲団打つ二回目の流産の予後
旱星憲兵めく「自粛セヨ」の字
三線やアブチラガマに這ふ溽暑
アンケートではいじめなし唐辛子
鵺が鳴く死屍の形のグローバリズム
※青嵐俳談「嵐を呼ぶ一句」入選句
<終わりに>
こうして読み返してみると、やはり“そこそこ”のレベルから抜け出せきれていない(苦笑)。やはり、まだまだ鍛錬が必要なようである。