南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

”強力打線”を抑えるために、やられてはいけないこと ~第94回選抜高校野球より~

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 強力打線を確実に抑える方法は、私には分からない。ただ……とりわけ高校野球において、いわゆる強打のチームにやられてはいけないことなら、分かる。

 

 結論から言うと――試合序盤で、アウトコースの球を打たれることだ。

 

 一般的にアウトコースというのは、打者から遠く打ちにくいコースと言われている。だからアウトコースに投げる時は、“打たれないように”という慎重な気持ちが働いていることが多いはずだ。

 

 それを序盤で打たれてしまうと、後の攻防で後手に回ってしまう。特に、さほど球威のない投手は。

 

 球威があり、二巡目、三巡目以降の投球で、力で抑えられる投手は別だ。しかし、そうでない投手の場合、“慎重に”と思って投げた球を打たれてしまうと、もう投げる球がなくなってしまう。

 

 ならばインコースに投げれば良いではないかと思われるかもしれない。ところが、インコースはより細かいコントロール、何より強い勇気が求められる――内に外れれば死球、外つまり真ん中寄りに外れれば、一発長打の危険があるからだ。

 

 一度打たれた後、思い切ってインコースを突く勇気を奮い立たせることは、簡単なことではない。どうしても腕が縮こまってしまうだろう。そうなると、強力打線を抑えることは一層難しい。

 

 かといって一番マズイのは、アウトコースに球を“集めて”しまうことだ。インコースに投げてこなと分かると、強打線のチームの打者は、どんどん踏み込んで打ちにくる。そうなると、真ん中に投げるのと同じことになり、狙い打ちされやすくなる。

 

 したがってセオリーとしては、先にインコースを攻める方が良い。

 

 もちろん打たれるリスクもあるが、同じ打たれるなら、アウトコースよりもインコースを打たれる方がずっとマシだ。相手打線に「向こうのバッテリーはインコースをどんどん攻めてくる」と印象付けることができるし、そうした上でなら、アウトコースへの投球も(より遠く感じるので)生きてくる。

 

 そして以上の話は、投手にある程度の制球力があることが前提である。150キロ近い球を投げられるなら別だが、そうでなければ、内外角を投げ分けるコントロールがないと、強力打線には歯が立たないことは、言うまでもない。

”強力打線の条件”とは何か!? ~第94回選抜高校野球より~

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 突然だが、“強力打線”とはどのような打線を指すのだろうか。

 

 チーム打率が高い? 本塁打数が多い? 長打率や連打率が高い? どれもすべて当てはまりそうだが、それらは相手投手との兼ね合いが大きい面もある。実際、地方大会では低打率だったチームが甲子園では打ちまくったり、逆に“強力打線”の触れ込みだったチームが、甲子園ではさっぱり……といったケースもある。

 

 私は次のように考える――長打で試合の流れを変えられる打線、と。

 

 対戦した投手のレベルが低ければ、打率や本塁打数等は自然と増えていく。またそういう相手との試合は一方的な展開となるだろうから、そもそも「試合の流れを変える」ことの必要性はない。

 

 本当に底力を試されるのは、相手との力関係がほぼ互角だった時。あるいは劣勢ないし拮抗した試合展開となった時である。

 

 例えば83年夏。“事実上の決勝戦”と言われた池田-中京の一戦は池田・水野、中京・野中の投手戦となり、1-1で九回を迎えたが、試合を決めたのは七番高橋の一発だった。

 また98年夏。あの横浜-PL学園の一戦で、0-3と劣勢だった横浜にまず流れを引き寄せたのは、キャプテン小山の追撃の2ランだった。

 

 相手より力量で勝っている時、あるいはこちらに流れがきている時の長打は、甲子園に出てくるようなチームなら打てる。しかし劣勢あるいは拮抗した試合展開において、長打で流れを変えるとなると、話は別だ。

 単純なパワーやミート力だけでなく、甘い球を見逃さない集中力、難しい試合展開でも平常心を失わないといったこと等、メンタル面の強さも求められる。

 

 相手からすれば、これほど怖い打線はない。

 こちらがリードしていても、あるいは拮抗した展開に持ち込んでいても、たった一球で流れを変えられてしまうのである。相対するバッテリーは、常に“少しまちがえばやられる”というプレッシャーを感じながらの投球となる。

 

 今大会(第94回選抜高校野球大会)でいえば、鳴門の好投手・富田から長打とスクイズで3点を奪った大阪桐蔭や、二試合続けて試合序盤に本塁打を放っている浦和学院は、やはり“強力打線”と見て良いと思われる。この二校に加え、勝負強い印象のある九州国際大附属、近江辺りが、優勝に近い所にいるのではないかと推測するが……果たして。

W杯における躍進の鍵は、”状況に応じた戦い方”ができるかどうか ~サッカー日本代表・7大会連続のW杯へ~

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 まずは森保JAPAN、7大会連続となるW杯出場おめでとう!

 

 何かと批判の多い森保監督だが、個人的には「今すぐ解任すべき」とまで思ったことはなかった。

 

 W杯最終予選の序盤で2敗したのは、五輪本大会直後で準備期間が少なかったことも影響している。また、2敗するまでスタメンを入れ替えなかったのも、不調の選手への信頼を示したかったのだろう。それにハマった時は、五輪のフランス戦や昨日(令和4年3月24日)のオーストラリア戦のように、面白いサッカーを見せてくれる。

 

 ハリルホジッチ監督時代の末期のような、先行きの見えない手詰まり感は、まだ感じられない。またジーコ監督時代のような、人間関係の縺れも今のところ聞こえてこない。

 

 つまり森保監督は、少なくとも今の選手達のポテンシャルを、百パーセントとはいかなくても、それに近いぐらい発揮させてくれてはいると思う。

 

 ただ――それだけでは、W杯では上を目指せない。上手くハマったとしても、せいぜいグループリーグ突破がやっと(それだけでも簡単ではないが)だろう。

 

 過去、日本は6度のワールドカップ出場で、すでに3回はグループリーグ突破を果たしている。これは何を意味するかというと、“日本サッカーの良さ”―走力や組織性、俊敏性等―を出しさえすれば、日本は十分世界の舞台でも戦えるということだ。

 しかし、相手が対策してきたり、何らかの理由でフィジカルコンディションが整わなかったりして“日本サッカーの良さ”が出せなければ、また勝てないということである。

 

 個人的に、森保監督への不満はそこである。流れの良い時はいいのだが、流れが悪い時、選手交代やシステム変更等の采配で、事態を好転させるのを見たことがない――今のところは。

 

 これはもう、海外遠征で格上のチームとの強化試合を組むしかないだろう。格上のチームが相手ならば、必ず良くない時間帯はくる。その時、森保監督がどんな手を打てるかが、今後試されることだろう。

 

 試されるのは監督だけではない。選手達もまた、流れが良くない時、状況を冷静に受け止めて良くないなりの戦い方ができるかどうか、それが求められてくる。

 

 つまり日本がW杯でベスト8以上をねらうためには、“状況に応じた戦い方”ができるかどうか。これを本大会までにできるようになることが、すべてではないかと思う。

”高校生らしい好投手”にご注目あれ ~第94回選抜高校野球より~

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 今大会(第94回選抜高校野球大会)の傾向として、一時期のように150キロ近い球を投げる本格派投手はあまり見られない。それでも、強力打線を堂々と抑える投手は見受けられる。

 

 簡単に言えば「コントロール」と「緩急」が優れた投手ということになるのだが、もう少し具体的に、球威がなくとも抑えられる投手の条件を整理することとしたい。

 

 時々“内外角高低の四隅”に投げることをコントロールが良いと思われる方もいらっしゃるだろうが、それはあまり正確ではない。というより、高校生レベルで四隅に投げられる投手など、ほとんどいないのではないだろうか。

 

 また実際“内外角の四隅”に投げられたとしても、さほど実戦では重要ではないと思われる。それより大事なのは、基本的に低めに球を集められることと、内外角のボールの出し入れ(わざとボール一個分外したり、ぎりぎりストライクに入れたりする)ができることだ。

 

 ちなみに「高めの球」は、内角に限っては吊り球として使えはする。ただ外角高めのストライクは、球威がない投手にとってはねらい打ちされる危険がある。その意味でも、“四隅”に投げられることはさほど重要とは言えない。

 

 話を戻す。とりわけ球威のない投手にとって、大事なのは「内角のコントロール」である。

 試しに、丸椅子の上にでもボールをのせて、体の近く(内角)に置くのと、やや遠く(外角)に置くのと、どっちが当てやすいかやってみていただきたい。まちがいなく、やや遠くに置く方が当てやすいはずだ。

 

 ついでに言うと、強豪校のバッターに対して、普通のピッチャーは外に“逃げたがる”ものである。しかし、これは逆効果だ。踏み込んで打ちにいけば、真ん中に投げられたのと同じである。それに強豪校のバッターは、日頃から「厳しいコースを攻められる」ことを想定して練習に取り組んでいる。球威のない外角の球を打ち返すことぐらい、朝飯前だろう。

 

 だから、思い切って内角に投げ込むことが大切なのである。もちろん死球や一発長打の危険はあるが、内角を突いてくると相手打線に印象付けておかないと、外角に踏み込んで狙い打ちされるだけである。

 

 もう一つ、「緩急」について。

 甲子園での試合で、さほどコントロールは悪くないのに打ち込まれてしまう投手を見ていると、緩急がうまく使えていないケースが多いように思う。

 

 150キロ近い速球を投げられるなら別だが、130キロ前後程度だと、スライダーやスプリット等を混ぜたところで、打者は同じタイミングでスイングできてしまう。ただ曲がるか曲がらないか、あるいはどのように曲がるかの違いだけだ。

 

 一方、速球が130キロ前後でも抑えられる投手は、遅い変化球――スローカーブやチェンジアップ等を、巧く織り交ぜている。我が沖縄勢でいえば、初優勝時の沖縄尚学のエース比嘉公也投手(現監督)や、21世紀枠でベスト4に進出した宜野座の比嘉裕投手が、カーブを巧みに使っていた。

 

 今大会でいえば、浦和学院の宮城投手や、敗れはしたものの大阪桐蔭相手に好投した鳴門の冨田投手の投球は、まさにコントロールと緩急を駆使した、他の球児達にとってお手本になる素晴らしい内容だった。快速球投手の力投もワクワクするが、宮城投手や富田投手のような高校生らしい基本に忠実な投手の活躍も、胸のすく思いがする。

 

 球速や球種だけでなく、コントロールや緩急という観点から投手を見ていくのも、面白い。読者の皆様には、ドラフト注目投手だけでなく、“高校生らしい好投手”にも目を向けていただければと思う。

大阪桐蔭強し! ~第94回選抜高校野球・大阪桐蔭vs鳴門~

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 注目カードの名にふさわしい、好ゲームだった。

 

 まずは敗れた鳴門ナインを讃えたい。

 大会屈指の好投手・富田を中心とした堅い守りで、大阪桐蔭打線を3点に封じた。とりわけ富田-土肥のバッテリーは、徹底してインコースを突く強気の投球。昨秋公式戦のチーム本塁打17本という強力打線に、一歩も引かない姿勢は見事だった。

 

 打っては、七回表にツーアウトランナーなしからの三連打で一点を返す。他にも何本かヒット性の当たりがあった。彼らの強気な姿勢は、攻撃面でも変わらなかった。

 

 どうしても大阪桐蔭のような強豪に対すると、腰が引けて普段通りのプレーができなくなってしまいがちである。しかし鳴門ナインは、怯むどころか強気で立ち向かった。富田投手の力投を始め、気持ちで負けないことの大切さを、彼らの健闘ぶりから改めて感じた。

 

 だが――それでも、大阪桐蔭は強かった。

 

 富田のコントロールが僅かに乱れた三回裏。その隙を見逃さず、谷口と海老根の適時打で2点。その後は立ち直った富田に抑え込まれたものの、1点差に迫られた後の八回裏、相手守備の乱れに乗じて得たチャンスに、星子の鮮やかなスクイズで突き放す。

 

 とりわけ八回裏、大事な場面であっさりスクイズを決めてしまう辺り、大阪桐蔭の揺るぎない強さを感じた。

 

 おそらく大阪桐蔭にとっては、さほど会心のゲームではなかったと思われる。ただ2点を奪った後、終盤まで試合が膠着状態になっても、まるで崩れる気配は感じられなかった。七回裏に二死から一点を失ったのは、鳴門の粘り強さを褒めたいが、それでも決定的な一撃を許すことはなかった。

 

 試合の中では、巧く流れをつかめないこともある。そんな時、流れがくるまでじっと耐えることが必要だ――言葉にするのは簡単だが、高校生のチームがそれをやるのは難しい。しかし大阪桐蔭は、事もなげにやってのけた。

 

 大阪桐蔭強し。接戦ながら、最後にこのことが印象に残る試合だった。