南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

大阪桐蔭強し! ~第94回選抜高校野球・大阪桐蔭vs鳴門~

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 注目カードの名にふさわしい、好ゲームだった。

 

 まずは敗れた鳴門ナインを讃えたい。

 大会屈指の好投手・富田を中心とした堅い守りで、大阪桐蔭打線を3点に封じた。とりわけ富田-土肥のバッテリーは、徹底してインコースを突く強気の投球。昨秋公式戦のチーム本塁打17本という強力打線に、一歩も引かない姿勢は見事だった。

 

 打っては、七回表にツーアウトランナーなしからの三連打で一点を返す。他にも何本かヒット性の当たりがあった。彼らの強気な姿勢は、攻撃面でも変わらなかった。

 

 どうしても大阪桐蔭のような強豪に対すると、腰が引けて普段通りのプレーができなくなってしまいがちである。しかし鳴門ナインは、怯むどころか強気で立ち向かった。富田投手の力投を始め、気持ちで負けないことの大切さを、彼らの健闘ぶりから改めて感じた。

 

 だが――それでも、大阪桐蔭は強かった。

 

 富田のコントロールが僅かに乱れた三回裏。その隙を見逃さず、谷口と海老根の適時打で2点。その後は立ち直った富田に抑え込まれたものの、1点差に迫られた後の八回裏、相手守備の乱れに乗じて得たチャンスに、星子の鮮やかなスクイズで突き放す。

 

 とりわけ八回裏、大事な場面であっさりスクイズを決めてしまう辺り、大阪桐蔭の揺るぎない強さを感じた。

 

 おそらく大阪桐蔭にとっては、さほど会心のゲームではなかったと思われる。ただ2点を奪った後、終盤まで試合が膠着状態になっても、まるで崩れる気配は感じられなかった。七回裏に二死から一点を失ったのは、鳴門の粘り強さを褒めたいが、それでも決定的な一撃を許すことはなかった。

 

 試合の中では、巧く流れをつかめないこともある。そんな時、流れがくるまでじっと耐えることが必要だ――言葉にするのは簡単だが、高校生のチームがそれをやるのは難しい。しかし大阪桐蔭は、事もなげにやってのけた。

 

 大阪桐蔭強し。接戦ながら、最後にこのことが印象に残る試合だった。