南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

私選・沖縄県高校野球名勝負<ベスト10+5>――県大会編(中編)

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 前回に続き、特別企画「私選・沖縄県高校野球名勝負<ベスト10>――県大会編」を送る。

 

 「中編」となる今回は、好試合ながら泣く泣く選外とせざるを得なかった試合及び衝撃的な結果となった試合を別に5つ選び、<番外編>として紹介したい。こちらもランキング形式で、第5位~1位まで順に発表していく。

 

 

(番外編)第5位

【12年夏決勝】浦添商業8-5沖縄尚学

             <戦評>

 この試合も好勝負だったが、次点とせざるを得なかった。

 初回から両チームに本塁打が飛び出す激しい試合。下馬評では沖尚優位との声が大きく、中盤までは予想通りリードする展開が続いたが、浦商も練習量に裏打ちされた高いバッティング技術で対抗。

 終盤、沖尚内野陣のミスに乗じて浦商が3点を勝ち越し、最後はリリーフの宮里泰悠が締めて逆転勝ち。4年ぶりの選手権切符を手にした。

 その後、浦商は選手権でも2勝を挙げる健闘を見せる。特に一回戦では、当時“ビッグ3”の一人として称された注目左腕投手・濱田達郎擁する愛工大名電を破る殊勲を挙げた。

 

(番外編)第4位

【05年夏準決勝】浦添商業7-5中部商業

              <戦評>

 この頃、県内で猛威を振るっていた“パワー打線”の中部商業。守備の脆さが祟り、ついに全国での一勝を掴むことはできなかったが、打力だけは全国レベルだった。

 その中商に対し、真っ向から打ち合いを挑み、ついに押し切った最初のチームが、この浦添商業である。選抜8強の沖尚を抑え、この大会の第1シードを獲得していた。

 試合は序盤、やはり中商打線が力を発揮。いきなり4点を先取し主導権を握る。ところが……この浦商は、春季大会決勝で初回にいきなり9点(!)ビハインドを負うも、それを引っくり返すという大逆転劇を演じていた。その浦商にとって、4点などさほどのこともない。

 春季決勝と同様、じわじわと追い上げ終盤には逆転。あの中商を打撃戦で破るチームが現れたということが、当時は驚きだった。

 この勝利で、浦商は春季に続き決勝進出。決勝では“タレント集団”沖尚の前に屈するが、群雄割拠と化していた沖縄高校野球界の覇権争いに、堂々と名乗りを上げることとなった。

 

(番外編)第3位

【04年秋三回戦】沖縄尚学21-11中部商業(六回コールド)

               <戦評>

 夏の甲子園出場校と、翌年の選抜8強チームの対戦だったのだが、まさに目を疑うような凄まじい乱打戦。ところで、第4位の試合における「初めて打撃戦で中商を破った」という戦評と矛盾するようだが、この試合はあまりに両先発投手が乱調だったため、打撃戦と呼ぶには当たらないと思う。

 むしろ、この試合は投手以外の「守備力」の勝負だった。

 投手が試合を作れないと、それに同調するかのようにミスを頻発する中商に対し、沖尚は先発投手が何点取られても、一切集中力を切らさない。むしろ再三の好守備で、不調の投手陣をカバーした(それでも11点取られたが……)。

 守備だけでなく、走塁やケースバッティング。沖尚はこのチームから、野球のレベルが1ランクも2ランクも上がった印象。率いていたのは、かつて関西(岡山)を選抜4強へと導いた知将・角田篤敏監督。彼が今も沖縄に残っていたら……と、悔やまれてならない。

 

(番外編)第2位

【03年夏一回戦】本部4-3宜野座

              <戦評>

 21世紀枠による選抜出場で4強入り――あの“宜野座旋風”から二年後。その宜野座が、今度は九州を勝ち上がり自力で選抜出場を果たした時は、かなり興奮したものだ。

 もし宜野座が、あのまま“甲子園常連校”になっていたら……と、未だに夢想してしまう。あの池田高校の再来を思わせるチームが、この沖縄の地に生まれていたのではないかと。

 しかし、現実はそう甘くなかった。選抜大会前、当時の主戦・佐久本匠が故障。代わりに登板した2年生・宜野座貴大の力投むなしく初戦で敗れ去る。

 それでも五月の招待野球にて、宜野座は復活した佐久本の好投もあり、何とあの横浜を撃破。夏へ向けて期待が高まったが……迎えた夏の初戦、マウンドに佐久本の姿はなかった。

 一方、“打倒宜野座”に執念を燃やしていたのが、同じ北部の本部(もとぶ)高校だった。秋に対戦し16三振を喫する完封負け。雪辱を期し、この初戦では全員がバスター打法で揺さぶりを掛ける。守備でも踏ん張り、試合は七回を終えてスコアレスというまさかの展開。

 ようやく八回裏、宜野座が均衡を破る2点を先制。これで勝負アリ、と思われた直後の九回……信じられないドラマが待っていた。

 本部が連続二塁打を含む三連打で同点に追い付き、さらに2点本塁打が飛び出し4-2と大逆転! その裏、宜野座の反撃も届かず。

 なお、この年は準々決勝までにシード校がすべて敗退。“波乱の夏”となった。

 

(番外編)第1位

【08年春決勝】浦添商業10-0中部商業

                <戦評>

 この前日――我が県は、沖縄尚学の選抜優勝の歓喜に沸いていた。

 もちろん沖尚には、夏への期待も高まる。この時、多くの県内の高校野球ファンが思ったことだろう。当然、夏も沖尚。そして県民悲願である「夏の甲子園優勝」「春夏連覇」をと。

 しかし。この時「そうは問屋が卸さない」とばかりに、闘志を燃やす少年達がいた。

 あの日「沖尚優勝」の浮かれ気分のまま、春季決勝の北谷球場へと足を運んだ私は、「ウソだろ……」と度肝を抜かれることとなった。

 そこでは、秋季大会の二回戦で沖尚相手に涙を飲んだ浦添商業ナインが、異次元の強さを見せ付けていた。同大会で準優勝。九州で惜しくも4強入りを逃した、こちらも実力校のはずの中部商業が、まるで相手にならない。最終スコア、10-0。……

 「俺達を忘れるな」と言わんばかりの、浦商ナインの咆哮が聴こえた気がした。

 これで勢いに乗った浦商は、チャレンジマッチで凱旋の沖尚をも8-1と圧倒。これ以上ない“打倒沖尚”の狼煙を上げた。

 

 今回は、ここまで。エントリー記事を書き上げてみると、つい「この試合は本選に入れるべきだったかな」という後悔さえもたげてくるほどの、印象的な5試合だ。言うまでもないが、ここに書けなかった好勝負・名シーンは、まだまだ沢山ある。

 

 次回は、いよいよ「名勝負」ベスト3を発表する。