南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

”強力打線の条件”とは何か!? ~第94回選抜高校野球より~

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 突然だが、“強力打線”とはどのような打線を指すのだろうか。

 

 チーム打率が高い? 本塁打数が多い? 長打率や連打率が高い? どれもすべて当てはまりそうだが、それらは相手投手との兼ね合いが大きい面もある。実際、地方大会では低打率だったチームが甲子園では打ちまくったり、逆に“強力打線”の触れ込みだったチームが、甲子園ではさっぱり……といったケースもある。

 

 私は次のように考える――長打で試合の流れを変えられる打線、と。

 

 対戦した投手のレベルが低ければ、打率や本塁打数等は自然と増えていく。またそういう相手との試合は一方的な展開となるだろうから、そもそも「試合の流れを変える」ことの必要性はない。

 

 本当に底力を試されるのは、相手との力関係がほぼ互角だった時。あるいは劣勢ないし拮抗した試合展開となった時である。

 

 例えば83年夏。“事実上の決勝戦”と言われた池田-中京の一戦は池田・水野、中京・野中の投手戦となり、1-1で九回を迎えたが、試合を決めたのは七番高橋の一発だった。

 また98年夏。あの横浜-PL学園の一戦で、0-3と劣勢だった横浜にまず流れを引き寄せたのは、キャプテン小山の追撃の2ランだった。

 

 相手より力量で勝っている時、あるいはこちらに流れがきている時の長打は、甲子園に出てくるようなチームなら打てる。しかし劣勢あるいは拮抗した試合展開において、長打で流れを変えるとなると、話は別だ。

 単純なパワーやミート力だけでなく、甘い球を見逃さない集中力、難しい試合展開でも平常心を失わないといったこと等、メンタル面の強さも求められる。

 

 相手からすれば、これほど怖い打線はない。

 こちらがリードしていても、あるいは拮抗した展開に持ち込んでいても、たった一球で流れを変えられてしまうのである。相対するバッテリーは、常に“少しまちがえばやられる”というプレッシャーを感じながらの投球となる。

 

 今大会(第94回選抜高校野球大会)でいえば、鳴門の好投手・富田から長打とスクイズで3点を奪った大阪桐蔭や、二試合続けて試合序盤に本塁打を放っている浦和学院は、やはり“強力打線”と見て良いと思われる。この二校に加え、勝負強い印象のある九州国際大附属、近江辺りが、優勝に近い所にいるのではないかと推測するが……果たして。