南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第14回「イガラシくんは、選手起用をどのように考える!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.選手起用の考え方
  • 2.“野球の実力”って何!?
  • 3.イガラシは自分自身の“実力”をどう見る!?
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 夏の甲子園出場を賭けた地方予選の戦いが、いよいよ本格化してきましたね。さて、今回は高校野球でよく言われる事柄についての質問が届いていますので、紹介することにします。

 けっこう深いテーマですので、よかったらみなさんも一緒に考えてみて下さい。

 

 ペンネーム:ゆきみさんより。

―― 力が同じなら上級生を使うとか下級生を使うとかいう方針がありますが、どう思いますか?

 

 ええと、ゆきみさんという方。かなり野球にくわしいようですね。ちとディープな話になりますが、せっかくなのでお付き合いください。

 

 というわけで、今回のテーマは……

イガラシくんは、選手起用をどのように考える!?

 

 

1.選手起用の考え方

 

 まず前提として、チーム状況とチーム方針の両方を考えなきゃいけません。

 

 これは野球に限らず、学生スポーツに結構あることなんですけど……学年が1~3年生までありますよね。で、実力が学年順になっていれば問題ないんスよ。ところが実際には、上の学年よりも下の学年の方が、実力が上ってことが結構あるんですよね。

 

 この場合、三通りの考え方があります。

 

 一つ目。翌年以降を見据えて、力のある下級生に経験を積ませる。当然、力が同じであれば、下級生を使うということです。

 

 二つ目。上級生のこれまでの頑張りを認めて、たとえ勝てる可能性が低くても、上級生の起用を優先する。もちろん力が同じであれば、上級生を使うことになります。

 

 まあ、それぞれのチーム事情というものがありますし、いろいろな考え方もあるので、どっちが良い悪いという話じゃありませんけど。

 ただ、ぼくは……好きか嫌いかで言えば、どっちの考え方も好きじゃありません。

 

 で、三つ目です。

 

 あくまでも“その年のベストメンバー”を組む。上級生も下級生も関係なく、その年に最も勝てる確率の高いメンバーを選ぶ。ぼくなら、そうします。

 

 えっ、上の二つとどこが違うのかって? 分かります、そろそろ話がややこしくなってきましたよね。

 

 

2.“野球の実力”って何!?

 

 ということで――ここらで、そもそも“野球の実力”って何かということを、今一度考えてみることにしましょう。

 

 野球に限らず、スポーツではよく心・技・体という言葉が使われますよね。

 ぼくはチームメイトや相手選手の力量をはかる時、この心・技・体の三つのモノサシで見るようにしています。

 

 で、分かりやすいのが「技」――技術なんです。しかし、案外「心」と「体」が見落とされがちなんスよ。

 

 抽象的な話が続いたので、ちょっと具体例を出してみましょうか。

 

 例えば、サードのポジションを争っている1年生のA君、3年生のB君という二人の選手がいるとします。二人とも駿足で守備範囲も広く、強肩、難しい打球を捕球するグラブさばきも巧みです。また練習試合での打率も同程度。技術的には、本当に互角と言えます。

 

 ところが――公式戦で二点リードの終盤。炎天下の消耗戦。ノーアウト一・三塁。サード正面へ高いバウンドのゴロ。

 

 この場合、選択肢は複数ありますよね。バックホームか、二塁フォースアウトか、確実に一塁アウトか、ダブルプレーをねらうか。

 

 どれが正解だと、一概には言えません。相手の打力、味方の投手の状態、こっちが追加点を取れそうか取れそうでないか。そういった状況を踏まえて、素早く判断しなければなりません。

 

 そんな時にモノを言うのが、「心」と「体」なんですよ。

 

 ロースコアの接戦で、平常心でいられる「心」。炎天下でも集中力を保ち、普段通りのプレーができる「体」……体力。

こういう、なかなか目に見えない部分も併せて“実力”なんスよ。

 

 ですから――単純に上級生がいいとか下級生がいいって話じゃないと、ぼくは思いますね。ただし、ぼくの経験上、心・技・体を三つとも揃えているのは、やはり上級生が多かったです。

 

 もちろん稀に、下級生でもこの三つを備えたヤツもいますけどね。そんなヤツがいれば、ぼくは迷いなくそいつを試合で起用します。

 

 まあ、なかなか三つを備えたヤツはいませんけどね。技術はあっても心や体力に課題があったり、体力があっても技術が低かったり。なので現実的には、相手や状況に応じて、併用していくことになりますかね。

 

 

3.イガラシは自分自身の“実力”をどう見る!?

 

 え、ぼくの“実力”ですか? うーむ……自分じゃ、三つとも足りないと思いますよ。

 

 みなさんも知ってのとおり、ぼくはかなり短気ですし。体力も、自分なりに鍛えてはきたつもりスけど、ちょっと相手に粘られるとスタミナ切れを起こしちゃいましたし。技術的にも、まだまだ強豪校のエースクラスを打ち崩す力はないですし。

 

 自信がないのか? まさか、そーいうつもりはないスよ。

 

 というより、ぼくにとっての“自信”というのは「今できること」じゃなく、たとえ今できなくても鍛錬を重ねて「いつか必ずできるようにしてやる」ってコトなので。

 

 ですから……東実の佐野だろうが、谷原の村井だろうが、ぼくの前に立ちふさがるヤツは、必ず打ち崩してやりますよ!

 みなさんも、ぜひ楽しみに見ていてください!!

 

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イガラシくんの野球講座<第13回「イガラシくんって、本当はどこのポジションをやりたいの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.イガラシの“いちばん嫌なこと”
  • 2.ついに発見!? イガラシのやりたい“ポジション”
  •  【関連リンク】

 

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※本記事は、原作「プレイボール」最終話時点に合わせています。

 

<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 今回も、読者の方だけじゃなく、チームメイトや周りからよく聞かれることについて、この場を借りて答えていこうと思います。

 

 ということで、今回のテーマは……

イガラシくんって、本当はどこのポジションをやりたいの!?

 

 ええとですね。「キャプテン」読者の方は知ってるかと思いますけど、ぼくは小学校の野球チームで、一通り全部のポジションをやってきたんです。

 そしてみなさんも知っての通り、中学の時は、セカンドとサード、ピッチャー。高校では今のところ、ショートを任されてます。

 

 で……今でも、よく聞かれるんですよ。本当はどこのポジションをやりたいのかって。特に中学の時、みなさんはぼくがずっとピッチャーをしていたイメージがあると思うので、内野手に専念することになって「ピッチャーに未練はないのか?」って。

 ということで、先にもう……答えを言っちゃいます。

 

 ぼく、本当に「どこのポジションでも」いいんスよ。

 みなさん不思議に思われるみたいなんスけど、例えばピッチャーをやりたいとかサードを守りたいとか、全然こだわりはないんスよね。

 

 

1.イガラシの“いちばん嫌なこと”

 

 ついでに言うと、打順も別に何番でもいいんですよ。ま……そりゃ上位とか中軸を任されたら、じゃあ期待に応えられるように頑張ろうとは思いますけど、下位だからってやる気をなくすってこともないですし。

 

 あ……レギュラーから外されたら、さすがにそれは嫌です(笑)。

 

 ただ墨二の一年の時みたいに、妙なルールで試合に出られないならともかく、完全に自分の実力不足でなら、見返してやろうって思うだけスよ。

 うーむ……ぼくみたいに考えるヤツって、珍しいんですかね。

 

 あのですね。ぼくが何より嫌なことって、“試合に負けること”なんスよ。

 

 極端な話、ぼくが全打席ホームランを打ったとしても、試合に負けちゃったら、とても喜べないスね。もっとできることはなかったのかって、ぜったいに考えると思います。

 

 あ……だからって、試合に勝てば自分が活躍できなくてもいいって意味じゃありませんよ。チームの勝利に貢献できなきゃ、そりゃ悔しいに決まってます。

 

 要するに、チームが勝って自分も活躍できないと、ぼくは喜べないスね。む……それもちょっと、ちがうかなあ。試合に勝っても内容が良くないと、不満は残りますし。

 

 えっ、欲ばりですか? ひどいなあ、そんな言い方しなくても(苦笑)。そこは「向上心が強い」と言ってくださいよ(笑)。

 

 

2.ついに発見!? イガラシのやりたい“ポジション”

 

 あ、ちょっと待ってください。やってみたい“ポジション”……たった今、思いつきました。へへっ、どこだと思います?(ニヤリ)

 

 それはね、監督です!!(会場ざわつく)

 

 なんで今まで思いつかなかったんだろうな。考えてみりゃ、ぼく練習メニューとか、チーム強化の方法を考えるのが好きですし。

 

 キャプテンはやらせてもらいましたけど、やっぱり立場は選手なので。選手同士だと、なかなか遠慮して言えない部分もありましたから(会場ヒソヒソ「あ、あれでかよ?」「ウソつけ!!」「コイツ、本気で言ってるのか!?」)

 

 監督の立場だと、どこかの球場とかグラウンドを借りるなりして、練習場所を確保するのもやりやすくなりますし。他の強豪校と交渉して、練習試合を組んだりとかも。あと……ぼくがキャプテンの時みたいに、練習方法のことで父兄が何か言ってきても、もっと強く押し切ることもできそうですし(ウキウキした表情)。

 

 む……みなさん、どうされたんです? そんな青ざめた顔しちゃって。おや、震えてる方も何人かいらっしゃるじゃありませんか。どうも会場のクーラーが効きすぎてるみたいスね。ちょっと温度を上げてきましょうか?

 

(会場の客一同:心の中で「キサマのせいだ!!」)

 

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イガラシくんの野球講座<第12回「強豪校が全国から有望選手を集めるって、どうなの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.強豪校は、“練習に付いてこれる人間”に来て欲しい!
  • 2.入部させたからには、最後まで責任を持て!!
  • 3.有望選手の“飼い殺し”を防ぐには!?
  • 4.大切なのは、諦めないこと!!
  •  【関連リンク】

 

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※本記事は、一部史実の時系列を無視しています。あらかじめ、ご了承下さい。

 

<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 先週より、夏の地方大会が続々と開幕したということもあってか、高校野球ファンの方より数多くの疑問・質問が届いています。今回も、そのうちの一つを紹介します。

 

 ペンネーム:スクイズバントさんより。

―― イガラシさん、はじめまして。

 中学、高校と地元の学校の野球部で活躍されたイガラシさんから見て、強豪私立が全国各地から有望選手を搔き集めているのを、どう思いますか? 私としては、地元の学校に進学して、そこで甲子園を目指すというのが、本来の高校野球のあるべき姿だと思います。

 

 ええとですね。スクイズバントさんだけじゃなく、同様の質問が、他の方からも数多く寄せられています。

 

 ということで、今回のテーマは……

強豪校が全国から有望選手を集めるって、どうなの!?

 

 ひとまず、ぼくの答えを言うとですね――やりたきゃやればいい、です。

 

 

1.強豪校は、“練習に付いてこれる人間”に来て欲しい!

 

 これね、ぼくは入試と一緒だと思うんですよ。

 

 いわゆる進学校って、勉強のできるヤツを集めようとしますよね。

 なぜそうするかというと、勉強のできないヤツっていうのは、その学校の授業に付いていけないじゃないスか。そういうヤツに来られても、教える方も困るだろうし、何より本人が気の毒でしょう。

 

 野球も同じですよ。例えば谷原とか東実とか、名門と言われる野球部は、それこそ血反吐を吐くような練習を日々こなしてるはず。となると……そういう練習に付いてこれるヤツに来て欲しいって思うのは、当然じゃないスか。

 

 一口に“野球をやってる”と言っても、いろいろな人間がいるんスよ。

 

 勉強や友人付き合いを大事にしながら、楽しみの範囲で野球をやりたいヤツ。よく分からないけど、とりあえずモテそうだから野球をやってるヤツ。本気で甲子園を目指して、いずれ大学やプロへ進むという野心を燃やしているヤツ。

 

 え、ぼく? ぼくは、そうだな……今言ったような予定調和を崩すことスかね(笑)。

 

 ともかく強豪校が、全国から有望選手を集めるってのは、要するに「本気で野球をやりたい子は、全国どこからでも来てください」って言ってるってことでしょう。その代わり「練習に付いてこれないヤツ、厳しい練習に耐える覚悟のないヤツはお断り」と、最初から宣言してるようなもんスから。

 そう考えりゃ、これってすごく親切じゃありませんか。

 

 

2.入部させたからには、最後まで責任を持て!!

 

 ただね……一つ付け加えておきたいのが、そうやって「入部させたからには責任を持って面倒を見ろよ」ってことです。

 

 みなさんも聞いたことあるでしょう。

 

 勇んで入部してみれば、部内で上級生から下級生へのいじめが蔓延ってて、とても野球どころじゃないとか。部員数のわりに練習場所や器具に限りがあって、十分な練習量が確保できないとか。監督は取材が来た時だけ指導してるフリをして、あとはほとんどグラウンドに顔を出さないとか……

 

 ひどい話になると、どっかの指導者が、自分とつながりのある高校の部活に教え子を入部させようとして、その子が入部を断ったら、自分のメンツが潰されたからって、裏から手を回して他の学校にも入部させないようにしたとか。

 こんなヤツは、指導者の資格ないですよね。さっさと学生スポーツ界から退場させるべきです(怒)。

 

 ちと話が逸れましたけど、そのスポーツを頑張りたいって入部してきた子だったら、ちゃんとその思いに応えられる環境を用意してあげて欲しいですよね。

 

 その点、ぼくも墨二中時代に忸怩たる思いがありました。

 

 あの青葉との再試合以来、うちの野球部がすっかり有名になっちゃって、部員数が急に増えちゃったでしょう。でも、レギュラーとして集中して鍛えるには、ぼくが見れる人数に限りがありましたし。

 

 けっきょくレギュラー外のメンバーは、空いた場所で完全に別で練習させるしかなくて。あん時は悪いことしちゃったなと思います。

 

 今思えば……近藤のオヤジさん辺りに頼んで、コーチできる人を手配してもらって。そしたら、レギュラー外のメンバーも交替ずつ指導できたのに。そうすりゃ、もっと部員全員を鍛え……って、あれ。なんだかみなさん、顔が引きつってますよ(苦笑)。ぼく今、けっこういいこと言ってません?(会場……引き笑い)。

 

 いくらなんでも、ぼくだってレギュラー外の体力不足のメンバーに、いきなり「特訓三倍」なんて言いませんよ(笑)。あ……ランニングとか筋トレとか、体力強化のメニューは増やすでしょうけど(会場、凍り付く)。って、みなさん。なんで黙るんスか? ま、いいや。

 

 とにかく有望選手を集めるだけ集めて、あとほったらかしというのは、いくら何でも無責任だと思います。そういや学校によっては、ちゃんと「一学年10名」って制限を設けてるトコもあるようですね(※智辯和歌山のこと)。生徒にとっちゃ、それこそ人生が懸かってるので、ちゃんと責任を持って引き受けるべきですよね。

 

 

3.有望選手の“飼い殺し”を防ぐには!?

 

 それと、よくある批判で「あまり選手を集めすぎると、控えメンバーが多くなって選手を“飼い殺し”にしてしまう」ってのがありますよね。

 

 確かにこれは、その通りだと思います。ただ学校にしてみれば、一人でも良い選手を集めたいと考えるのは当然でしょうし、生徒の中にはその学校のユニフォームに憧れて入部してくる子もいます。

 

 なのでいっそ、部員数の多い学校は、複数チームでエントリーできるように変えた方がいいんじゃないでしょうか。墨谷A、墨谷B……みたいにね。実際、サッカーなんかじゃそういう制度もできてきてるようですし。そろそろ他の種目にも、同じような動きが広がっていくんじゃないでしょうか。

 

 

4.大切なのは、諦めないこと!!

 

 あとこれもよく聞くのが、一つの地区に他府県から有望選手を集めた学校があると、他の学校との差が開いて地区のレベルが下がるって話もありますよね。

 

 他は知りませんが……少なくとも、ぼくらは「ちがう」とハッキリ言えます。

 

 なぜなら、ぼくらの地区には青葉という飛び抜けたチームがあったわけですが、ぼくらはその青葉を打ち破ったわけですから。

 

 すると、あの青葉も対抗心を燃やして、自然と互いに切磋琢磨し合えるようになりました。さらにぼくらが墨二の三年時には、そこに井口のいる江田川も加わり、三つ巴のハイレベルな戦いが繰り広げられたわけです。

 

 大切なのは、諦めないことです。

 

 諦めさえしなければ……一つ強いチームがあると、そのチームを倒そうと他のチームがレベルアップします。すると、もとから強かったチームも、負けないようにさらに力を付けようとするはずです。それを繰り返していくと、いつの間にか地区全体のレベルが上がっていくという分けわけです。

 

 何度でも言いますが、やはり諦めないことです。いくら強豪・名門だといっても、相手は同じ中学生、高校生なんですから。

 

 

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イガラシくんの野球講座<第11回「イガラシくんが選ぶ、墨二中時代ベストナイン!!」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.外野手は、チームメイトの3人!!
  • 2.内野手は、絶対に外せない“あの二人”
  • 3.バッテリーは、墨二の前に立ちふさがった“あの強敵”二人!!
  • <まとめ ~イガラシ選・墨二中時代ベストナイン~>
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。今回はですね、ちとムズカシイ質問が送られてきました。

 

ペンネーム:MWRNBさんより。

―― 私からのイガラシ君への質問は「原作キャプテンの登場人物からイガラシ君が選ぶベストナイン」です。

 中1からの墨二のレギュラーで、様々なプレーヤーと関わってきたイガラシ君が誰を選ぶのか興味があります。所属中学や選出理由も教えてもらえると嬉しいです。

 

 ということで、本日のテーマは……

イガラシくんが選ぶ、墨二中時代ベストナイン

 

 

1.外野手は、チームメイトの3人!!

 

 えーっと、これは対戦相手も含めてってことスよね。じゃあ、まず外野、内野、バッテリーの順に発表していきます。

 

 まずライトは、同級生の久保ですね。

 個人的にずっと思ってるんスけど、あいつのバッティングは、おれと同じかそれ以上じゃないかって気がします。

 

 まず選球眼。あの井口との対戦で、真っすぐとシュートをすぐに区別しましたから。さらにスイングが柔らかいし、ミート技術も高い。もちろんパワーもあるし、おれとちがってリーチもある。近藤なんかより、ずっと頼りになりますよ(笑)。

 

 強いて言えば、もうちょい自信を持てばいいのにって思います。時々、ちょっと弱気になったりするんで、そこがもったいないスね。

 あれだけのセンスがあるので、井口や根岸を押しのけて、中学の時みたいにクリーンアップを務めるぐらいになって欲しいですよ。

 

 

 つぎ、センターは……一つ上の島田さんです。

 中学の時はライトを守ってましたけど、外野はどこでも守れます。駿足、強肩。あの人の守備には、何度も助けられましたから。

 それと高校に入って、バッティングもかなり腕を上げてますよね。スイッチヒッターでもあるし、相手バッテリーからすれば、攻め方を考えるのが難しいんじゃありませんか。

 

 あとは……やっぱり、人格者ですよ。

 ぼくが二年生の時の選抜大会で、試合前に近藤のヤツが「ライトを守ってるとこを人に見られたら恥ずかしい」なんて、ぬかしやがったでしょう。あの時は、さすがに島田さんも激怒してましたけど……試合後、エラーを重ねて敗戦の原因になった近藤に「疲れたろう、座れよ」なんて優しく声をかけるなんて。

 

 少なくとも、ぼくにはできませんね。えっ、ぼくならどうしたかって? 何も言わずに、学校に戻って、ヤツ一人にだけ外野ノックを三時間ぐらい続けますかね(笑)。って、冗談スよ。あれ、みなさん……また顔が引きつってますよ(苦笑)。

 

 

 つぎにレフトは、牧野ですね。島田さんと同じく、駿足・強肩。バッターとしても、選球眼に優れた二番打者です。また周りに目配りもできるタイプで、おれが卒業した後は、あの近藤のサポートをがんばってくれてるようですよ。

 ただアイツ、丸井さんに似て、ちと融通に欠けるトコがあるんで。もうちょっと柔軟に考えることができれば、リーダーとしても力を発揮してくれると思います。

 

 

2.内野手は、絶対に外せない“あの二人”

 

 そしてショートは……ぼく(イガラシ)、って言うしかないスかね(笑)。墨二中時代のポジションで言うと、サードかセカンドなんですけど。その二つは、絶対に外しちゃいけない人なんで。

 ついでに言うと、ほんとは曽根を入れたいところなんですけどね。守備はもう言うことないんスけど……バッティングが、まだ少し物足りないかなあ。特に変化球のさばき方、もうちょい練習して欲しいですね。

 

 

 さて、いよいよサード。ここはやっぱり、谷口さんしかいません。

 あの人のすごさについては、今さら語ることもありませんがね。誰よりも懸命に努力する姿、それによって周囲の人間の気持ちさえ変えてしまう力。

 あの人がいなけりゃ、ぼくらの代での選手権優勝はなかったと思います。それだけの影響力をチームに残してくれました。

 谷口さんのことは、ほかの講座で語ってるので、詳しくはそちらをご覧ください。

stand16.hatenablog.com

 

 

 で、セカンド。やっぱり……ここは丸井さんしかいません!

 何と言っても、あの人の負けん気の強さ。そして自身やチームが逆境の時にこそ、一所懸命になれる精神力の強さ。なんだかんだ言って、谷口さんがキャプテンとして指名しただけのことはあります。

 

 それに卒業してからも、選手権前の合宿や練習試合の手配なんかで、ずいぶんとお世話になりました。まあ正直、ちょっとうっとうしいと思う時もありましたけど(笑)。あそこまで面倒見のいい先輩って、そうはいないので。とても感謝してますよ。

 

 ただ……ひとつだけ、言わせてください。ぼくは家に帰って、弟の慎二の前で、丸井さんの自慢なんて一切してません!! そこだけは、強調しておきます(笑)。

 

 

 次にファースト。ここも不動で、加藤さんスね。

 堅守かつ駿足巧打の左バッター。痛烈なライナーやゴロ、ショートバウンドの送球も難なく捕球してくれるので、目立たない所で何度もチームを助けてくれてました。

 あ、そうそう。ついでに言っておきたいんスけど……よく「ファーストは捕るだけ」とか言って、守備のあまり巧くないヤツとか、ファースト経験のないヤツを簡単にコンバートする風潮、どうにかなりませんかね?

 

 ファーストって、すごく重要ですよ。

 いつも捕りやすい送球がくるとは限りませんし、バントの時はダッシュを繰り返さなきゃいけないですし。それに一塁線を破られると、ほぼ長打ですし。

 よく他の学校が、打力があるからって守備の下手なヤツをファーストに着かせたりしますけど。ぼくとしては、ラッキーって思いますね。ちょっと小ワザで揺さぶれば、カンタンに自滅してくれるので。

 

 

3.バッテリーは、墨二の前に立ちふさがった“あの強敵”二人!!

 

 さて……いよいよバッテリーを残すのみですね。

 

 まずキャッチャー。ここは選手権決勝で戦った、和合中の森口を推します。

 和合との決勝戦。うちも満身創痍の状態でしたけど、相手の和合もけっして万全じゃなかったんスよ。後で聞いたら、プレッシャーで体調を崩す選手が続出してたらしいですし。

 

 何より、あの日は雨天で足下が悪くて、相手エースの中川は投げづらそうにしてましたよね。中川のような、長身で投げ下ろすタイプの投手は、足場が悪いとモロに投球に影響が出るんスよ。

 

 しかし、中川がちょっと崩れそうなタイミングで、あの森口がことごとく声を掛けて、その芽を摘み取ってました。おかげでこっちは、終盤までチャンスらしいチャンスを作れませんでしたからね。

 

 いかに強豪校のレギュラーであっても、所詮は中学生です。ぼくらと準決勝で当たった南海中のキャッチャー片岡なんか、近藤の挑発に乗って、退場しちゃったでしょう。やっぱり動揺すると、平静さを保つって難しいんスよ。

 

 ところがあの森口は、動揺する気配すら見せなかったですよね。

 ピンチの時、味方に冷静に指示したり、エース中川が投げ急ぎそうになるのを制したり。監督に対しても、自分の意見を堂々と進言してましたし。まさに“扇の要”。敵ながら、ほんとうに素晴らしいキャッチャーでした。

 

 

 最後にピッチャー。これね……ショージキ、ちと言うのはシャクなんですけど。まあ客観的に見て、認めるしかないので。

 

 ええ、井口源次です。

 

 中学の三年間で、地区予選と全国大会で、色々なピッチャーと対戦しましたけど。やっぱりアイツのボールが一番、威力がありました。

 あの快速球といい、直角に曲がるシュートといい、それらを自由自在にコーナーに決めてくるコントロールといい。とても中学生の投げるタマとは思えなかったですよ。

 

 もちろん井口以外にも、対戦した中で優れた投手は何人かいましたよ。例えば青葉学院の佐野、南海中の変化球投手・二谷、和合中の中川

 

 その中で、なぜ井口を選んだかと言いますとね。

 まず佐野は、前もって対策して、ある程度攻略できたので。それと全国大会で対戦した二谷と中川には、確かに抑え込まれましたけど、あの時はぼくらのコンディションも良くなかった上に、事前に偵察して研究する時間もあまり取れなかったんスよ。

 ところが井口は、ヤツの投球練習も見に行って、対策にかなり時間を割いたにも関わらず、九回までに2点取るのがやっとでしたからね。

 研究してもカンタンに攻略できなかったので、これはもう認めるしかないでしょう。でも今の話、アイツには言わないでくださいよ。調子に乗りやがるんで(笑)。

 

<まとめ ~イガラシ選・墨二中時代ベストナイン~>

   1(二)丸井

   2(一)加藤

   3(遊)イガラシ

   4(三)谷口

   5(右)久保

   6(投)井口

   7(捕)森口

   8(中)島田

   9(左)牧野

 

 

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イガラシくんの野球講座<第10回「イガラシくんは、墨高以外の進学は考えなかったの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

  • <はじめに>
  • 1.墨高以外へ進学しなかった理由
  • 2.一つだけ残念なこと
  •  【関連リンク】

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 えっとですね。週末に入ったということもあってか、ぼく個人に関する質問が複数来てるんスよ。いっぺんには答えられないので、何回かに分けて回答させてもらいますね。

 

 ではさっそく。今回のテーマは……

イガラシくんは、墨高以外の進学は考えなかったの!?

 

 これ、読者の方だけじゃなく、中学の同期のヤツとか墨高のチームメイトからも、よく聞かれますね。曲がりなりにも中学の全国選手権で優勝したのに、どうして他の野球名門校へ行かなかったのか?って。

 

 結論から言うと――実は、墨高以外への進学も考えてましたよ。

 

 

1.墨高以外へ進学しなかった理由

 

 うーむ……これ自慢っぽく聞こえるので、あまり言いたくなかったんスけど。

 選手権で優勝したってことで、名前は出せませんが、都内や他府県のけっこう名前を知られている野球の強豪校から、誘いはあったんですよ。

 

 ぼくだけじゃなく、久保や小室も、何校か誘いはあったみたいスよ。なんで行かなかったのかは知りませんけど。せっかく誘われたんだから、行きゃよかったのに。ひょっとして、ぼくを敵に回すのが怖かったんじゃないスか(笑)。

 

 あ……他のヤツはいいとして(苦笑)。実はぼく、誘いがあってもなくても、高校では野球の名門校へ進学するのも悪くないなって思ってたんスよ。

 

 意外ですか? でも名門校って、青葉の佐野や和合の中川みたいなエリートが、わんさか集まってくるんでしょう。そんなヤツらを押しのけて、レギュラーを勝ち取るってのも、痛快じゃないスか(笑)

 

 え、家の事情? いえいえ、うちの両親は「おまえの好きにしろ」としか言わないスよ。学費に関しても、授業料免除とか魅力的な話もありましたし。

 

 ただ、みなさんもよく知ってると思いますけど。あの中学選手権で、おれ……ちとムチャをしすぎちゃいましてね(苦笑)。右肩と右肘を傷めちゃってたんスよ。しかも、けっこう重傷だったみたいで。

 

 選手権の後……実は一ヶ月くらい、茶碗も持てなかったんです。

 いちおう、丸井さんに硬球を一個譲ってもらって、指の感覚だけでも慣らそうとはしてたんですけど。いかんせん肩が回らないわ、肘も曲がらないわ。さすがに……これひょっとして、もう野球はできないんじゃないかって覚悟しましたよ。

 

 なもんで、残念ながら名門校からの誘いは、ぜんぶ断るしかなかったです。野球ができるかどうかも分からないのに、入部するのは先方に失礼じゃないスか。

 

 あ……中にはケガのことも知ってて、回復を待つと言ってくれた学校もあったんですけど、それはさすがに申し訳ないと思ったので。

 

 

2.一つだけ残念なこと

 

 もちろん、その時点で、野球を諦めたわけじゃありませんがね。

 それでも万が一、ほんとうに万が一スけど……野球ができなくなることも覚悟しとかなきゃって思いました。その場合は、さっさと勉学一本に絞ろうと。

 

 でね……考えたわけです。多少出遅れたとしても、少しでもレベルの高い環境で野球ができる。なおかつ、野球ができなくなった場合、ほかの選択肢も考えられる

 この二つの条件を揃えた学校って考えたら……谷口さんや丸井さん達のいる、墨高しかないと判断したわけです。

 

 ま、結果として……思ったより早くケガは治って、出遅れずに済みましたけどね。

 

 それと墨高野球部に入部して思ったのは、思ってた以上に恵まれてましたね。

 墨二中の時みたく、妙なルールに縛られることもないし、何より全員が「谷原を倒して甲子園へ行く」という目標を共有している。さすがに谷口さん、いいチームを作ってます。

 

 ただ一つだけ、ちょっと残念なことがあるんスけどね。

 時々思うんスけど……いつか、谷口さんと戦ってみたいなって。正確に言えば、谷口さんの率いるチームと。高校じゃ、それが叶わなくなっちゃったので。

 

 大学か、社会人か、プロか。あるいは互いに年を重ねて、指導者の道に進んだ時か。いずれにしても……その時まで、あの人には野球を続けてもらわなきゃいけませんね。もちろん、ぼくも。

 

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