南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第12回「強豪校が全国から有望選手を集めるって、どうなの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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※本記事は、一部史実の時系列を無視しています。あらかじめ、ご了承下さい。

 

<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 先週より、夏の地方大会が続々と開幕したということもあってか、高校野球ファンの方より数多くの疑問・質問が届いています。今回も、そのうちの一つを紹介します。

 

 ペンネーム:スクイズバントさんより。

―― イガラシさん、はじめまして。

 中学、高校と地元の学校の野球部で活躍されたイガラシさんから見て、強豪私立が全国各地から有望選手を搔き集めているのを、どう思いますか? 私としては、地元の学校に進学して、そこで甲子園を目指すというのが、本来の高校野球のあるべき姿だと思います。

 

 ええとですね。スクイズバントさんだけじゃなく、同様の質問が、他の方からも数多く寄せられています。

 

 ということで、今回のテーマは……

強豪校が全国から有望選手を集めるって、どうなの!?

 

 ひとまず、ぼくの答えを言うとですね――やりたきゃやればいい、です。

 

 

1.強豪校は、“練習に付いてこれる人間”に来て欲しい!

 

 これね、ぼくは入試と一緒だと思うんですよ。

 

 いわゆる進学校って、勉強のできるヤツを集めようとしますよね。

 なぜそうするかというと、勉強のできないヤツっていうのは、その学校の授業に付いていけないじゃないスか。そういうヤツに来られても、教える方も困るだろうし、何より本人が気の毒でしょう。

 

 野球も同じですよ。例えば谷原とか東実とか、名門と言われる野球部は、それこそ血反吐を吐くような練習を日々こなしてるはず。となると……そういう練習に付いてこれるヤツに来て欲しいって思うのは、当然じゃないスか。

 

 一口に“野球をやってる”と言っても、いろいろな人間がいるんスよ。

 

 勉強や友人付き合いを大事にしながら、楽しみの範囲で野球をやりたいヤツ。よく分からないけど、とりあえずモテそうだから野球をやってるヤツ。本気で甲子園を目指して、いずれ大学やプロへ進むという野心を燃やしているヤツ。

 

 え、ぼく? ぼくは、そうだな……今言ったような予定調和を崩すことスかね(笑)。

 

 ともかく強豪校が、全国から有望選手を集めるってのは、要するに「本気で野球をやりたい子は、全国どこからでも来てください」って言ってるってことでしょう。その代わり「練習に付いてこれないヤツ、厳しい練習に耐える覚悟のないヤツはお断り」と、最初から宣言してるようなもんスから。

 そう考えりゃ、これってすごく親切じゃありませんか。

 

 

2.入部させたからには、最後まで責任を持て!!

 

 ただね……一つ付け加えておきたいのが、そうやって「入部させたからには責任を持って面倒を見ろよ」ってことです。

 

 みなさんも聞いたことあるでしょう。

 

 勇んで入部してみれば、部内で上級生から下級生へのいじめが蔓延ってて、とても野球どころじゃないとか。部員数のわりに練習場所や器具に限りがあって、十分な練習量が確保できないとか。監督は取材が来た時だけ指導してるフリをして、あとはほとんどグラウンドに顔を出さないとか……

 

 ひどい話になると、どっかの指導者が、自分とつながりのある高校の部活に教え子を入部させようとして、その子が入部を断ったら、自分のメンツが潰されたからって、裏から手を回して他の学校にも入部させないようにしたとか。

 こんなヤツは、指導者の資格ないですよね。さっさと学生スポーツ界から退場させるべきです(怒)。

 

 ちと話が逸れましたけど、そのスポーツを頑張りたいって入部してきた子だったら、ちゃんとその思いに応えられる環境を用意してあげて欲しいですよね。

 

 その点、ぼくも墨二中時代に忸怩たる思いがありました。

 

 あの青葉との再試合以来、うちの野球部がすっかり有名になっちゃって、部員数が急に増えちゃったでしょう。でも、レギュラーとして集中して鍛えるには、ぼくが見れる人数に限りがありましたし。

 

 けっきょくレギュラー外のメンバーは、空いた場所で完全に別で練習させるしかなくて。あん時は悪いことしちゃったなと思います。

 

 今思えば……近藤のオヤジさん辺りに頼んで、コーチできる人を手配してもらって。そしたら、レギュラー外のメンバーも交替ずつ指導できたのに。そうすりゃ、もっと部員全員を鍛え……って、あれ。なんだかみなさん、顔が引きつってますよ(苦笑)。ぼく今、けっこういいこと言ってません?(会場……引き笑い)。

 

 いくらなんでも、ぼくだってレギュラー外の体力不足のメンバーに、いきなり「特訓三倍」なんて言いませんよ(笑)。あ……ランニングとか筋トレとか、体力強化のメニューは増やすでしょうけど(会場、凍り付く)。って、みなさん。なんで黙るんスか? ま、いいや。

 

 とにかく有望選手を集めるだけ集めて、あとほったらかしというのは、いくら何でも無責任だと思います。そういや学校によっては、ちゃんと「一学年10名」って制限を設けてるトコもあるようですね(※智辯和歌山のこと)。生徒にとっちゃ、それこそ人生が懸かってるので、ちゃんと責任を持って引き受けるべきですよね。

 

 

3.有望選手の“飼い殺し”を防ぐには!?

 

 それと、よくある批判で「あまり選手を集めすぎると、控えメンバーが多くなって選手を“飼い殺し”にしてしまう」ってのがありますよね。

 

 確かにこれは、その通りだと思います。ただ学校にしてみれば、一人でも良い選手を集めたいと考えるのは当然でしょうし、生徒の中にはその学校のユニフォームに憧れて入部してくる子もいます。

 

 なのでいっそ、部員数の多い学校は、複数チームでエントリーできるように変えた方がいいんじゃないでしょうか。墨谷A、墨谷B……みたいにね。実際、サッカーなんかじゃそういう制度もできてきてるようですし。そろそろ他の種目にも、同じような動きが広がっていくんじゃないでしょうか。

 

 

4.大切なのは、諦めないこと!!

 

 あとこれもよく聞くのが、一つの地区に他府県から有望選手を集めた学校があると、他の学校との差が開いて地区のレベルが下がるって話もありますよね。

 

 他は知りませんが……少なくとも、ぼくらは「ちがう」とハッキリ言えます。

 

 なぜなら、ぼくらの地区には青葉という飛び抜けたチームがあったわけですが、ぼくらはその青葉を打ち破ったわけですから。

 

 すると、あの青葉も対抗心を燃やして、自然と互いに切磋琢磨し合えるようになりました。さらにぼくらが墨二の三年時には、そこに井口のいる江田川も加わり、三つ巴のハイレベルな戦いが繰り広げられたわけです。

 

 大切なのは、諦めないことです。

 

 諦めさえしなければ……一つ強いチームがあると、そのチームを倒そうと他のチームがレベルアップします。すると、もとから強かったチームも、負けないようにさらに力を付けようとするはずです。それを繰り返していくと、いつの間にか地区全体のレベルが上がっていくという分けわけです。

 

 何度でも言いますが、やはり諦めないことです。いくら強豪・名門だといっても、相手は同じ中学生、高校生なんですから。

 

 

 【関連リンク】

stand16.hatenablog.com