南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第10回「イガラシくんは、墨高以外の進学は考えなかったの!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

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<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 えっとですね。週末に入ったということもあってか、ぼく個人に関する質問が複数来てるんスよ。いっぺんには答えられないので、何回かに分けて回答させてもらいますね。

 

 ではさっそく。今回のテーマは……

イガラシくんは、墨高以外の進学は考えなかったの!?

 

 これ、読者の方だけじゃなく、中学の同期のヤツとか墨高のチームメイトからも、よく聞かれますね。曲がりなりにも中学の全国選手権で優勝したのに、どうして他の野球名門校へ行かなかったのか?って。

 

 結論から言うと――実は、墨高以外への進学も考えてましたよ。

 

 

1.墨高以外へ進学しなかった理由

 

 うーむ……これ自慢っぽく聞こえるので、あまり言いたくなかったんスけど。

 選手権で優勝したってことで、名前は出せませんが、都内や他府県のけっこう名前を知られている野球の強豪校から、誘いはあったんですよ。

 

 ぼくだけじゃなく、久保や小室も、何校か誘いはあったみたいスよ。なんで行かなかったのかは知りませんけど。せっかく誘われたんだから、行きゃよかったのに。ひょっとして、ぼくを敵に回すのが怖かったんじゃないスか(笑)。

 

 あ……他のヤツはいいとして(苦笑)。実はぼく、誘いがあってもなくても、高校では野球の名門校へ進学するのも悪くないなって思ってたんスよ。

 

 意外ですか? でも名門校って、青葉の佐野や和合の中川みたいなエリートが、わんさか集まってくるんでしょう。そんなヤツらを押しのけて、レギュラーを勝ち取るってのも、痛快じゃないスか(笑)

 

 え、家の事情? いえいえ、うちの両親は「おまえの好きにしろ」としか言わないスよ。学費に関しても、授業料免除とか魅力的な話もありましたし。

 

 ただ、みなさんもよく知ってると思いますけど。あの中学選手権で、おれ……ちとムチャをしすぎちゃいましてね(苦笑)。右肩と右肘を傷めちゃってたんスよ。しかも、けっこう重傷だったみたいで。

 

 選手権の後……実は一ヶ月くらい、茶碗も持てなかったんです。

 いちおう、丸井さんに硬球を一個譲ってもらって、指の感覚だけでも慣らそうとはしてたんですけど。いかんせん肩が回らないわ、肘も曲がらないわ。さすがに……これひょっとして、もう野球はできないんじゃないかって覚悟しましたよ。

 

 なもんで、残念ながら名門校からの誘いは、ぜんぶ断るしかなかったです。野球ができるかどうかも分からないのに、入部するのは先方に失礼じゃないスか。

 

 あ……中にはケガのことも知ってて、回復を待つと言ってくれた学校もあったんですけど、それはさすがに申し訳ないと思ったので。

 

 

2.一つだけ残念なこと

 

 もちろん、その時点で、野球を諦めたわけじゃありませんがね。

 それでも万が一、ほんとうに万が一スけど……野球ができなくなることも覚悟しとかなきゃって思いました。その場合は、さっさと勉学一本に絞ろうと。

 

 でね……考えたわけです。多少出遅れたとしても、少しでもレベルの高い環境で野球ができる。なおかつ、野球ができなくなった場合、ほかの選択肢も考えられる

 この二つの条件を揃えた学校って考えたら……谷口さんや丸井さん達のいる、墨高しかないと判断したわけです。

 

 ま、結果として……思ったより早くケガは治って、出遅れずに済みましたけどね。

 

 それと墨高野球部に入部して思ったのは、思ってた以上に恵まれてましたね。

 墨二中の時みたく、妙なルールに縛られることもないし、何より全員が「谷原を倒して甲子園へ行く」という目標を共有している。さすがに谷口さん、いいチームを作ってます。

 

 ただ一つだけ、ちょっと残念なことがあるんスけどね。

 時々思うんスけど……いつか、谷口さんと戦ってみたいなって。正確に言えば、谷口さんの率いるチームと。高校じゃ、それが叶わなくなっちゃったので。

 

 大学か、社会人か、プロか。あるいは互いに年を重ねて、指導者の道に進んだ時か。いずれにしても……その時まで、あの人には野球を続けてもらわなきゃいけませんね。もちろん、ぼくも。

 

 【関連リンク】

stand16.hatenablog.com