南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

一本のクリーンヒットよりも……  沖縄尚学、まさかの準々決勝敗退(※2019年7月7日リライト)

(2019年7月7日・追記)

※ この記事を書いた後も、沖縄尚学の苦難の道は続く。

 

 同年秋の大会では優勝したものの、続く九州大会において準々決勝で敗退し翌年の選抜出場を逃す。

 さらに翌2018年夏には、北山にまたも準々決勝で敗退。もはや沖尚が4強に入れないのは、そう珍しいことではなくなってしまった。

 

 追い打ちをかけるように、秋には何とか4強入りできたものの、準決勝で沖縄水産に何とノーヒットノーランで敗れるという屈辱を味わう。この試合も観戦したが、沖水の投手が凄かったというより、沖尚各打者の雑なバッティングが目に付いた。

 

 さらに翌2019年春には、準々決勝でまたも北山に敗れ、シードすら逃してしまう。迎えた夏の大会、初戦はコールド勝ちを収めたが、打力だけでなく投手力に不安を残す。

 順調に勝ち進めば、三回戦で秋に苦杯を喫した沖縄水産とのリベンジ戦である。

 

 もっとも、1年生大会では美里工業をハイレベルな熱戦の末下すなど、圧倒的な力を見せ付け優勝。復活の兆しも見せつつある。今年こそ、沖尚の復権なるか注目したい。

 

 

 夏の甲子園大会を目指す沖縄県大会・準々決勝で、大波乱があった。第1シード・沖縄尚学が、準々決勝で敗れたのだ。

 

 相手は糸満。強豪とはいえ、今大会はノーシード。秋季大会は三回戦、春季大会は初戦で敗退。決して前評判の高いチームではなかった。

 

 下馬評では、圧倒的に沖尚が有利。ところが、21で迎えた八回表。スクイズとホームスチールで2点を奪われ逆転を許した。八・九回の反撃も散発に終わり、春の優勝校が四強にさえ勝ち残ることができなかった。

 

 沖尚の敗因は、何だったのか。私は、強打と呼ばれるチームの“落とし穴”に嵌ったせいではないかと考える。

 

 春の県大会・準決勝で、沖尚はライバル私立校・興南を53で下した。ただその試合から、すでに弱点が見えていた。

 

 外角の際どいボール、特に変化球への対応である。

 

 沖尚の各打者は、「甘い球を確実に捉える」力はかなり高い。興南戦でも、相手投手が制球を乱した終盤に集中打を浴びせ、3点ビハインドをひっくり返して見せた。

 

 だが——もし相手が、リリーフ投手を用意していたら。あるいは終盤になっても制球を乱さない、ハイレベルな投手が相手だったら。

 

 特に、甲子園大会で上位を狙うような好投手は、外角いっぱいのコースに、変化球でストライクを取ることができる。

 

 甘く入った球を狙って出塁し、得点圏へ走者を進めるまでは行けるだろうが、ピンチを迎えると相手バッテリーも慎重な配球になる。好投手であれば、ピンチの場面でまず失投することはないだろう。そうなると、ますますヒットの確率は低くなる。

 

 とはいえ……際どいコースに投げ込まれた精度の高い変化球を捉えることは、よほどの好打者でもない限り難しい。ただ、捉えられなくとも、対応する方法はある。

 

 ファールに逃げるのである。

 

 ファールは何球打っても良い。そうして球数が多くなれば、バッテリーは他の球種に切り替える。また、その打席では打ち取られたとしても、相手投手のスタミナを奪い、終盤の攻略につなげることもできる。

 

 沖尚の試合を見ていると、各打者が際どいボールをカットする、ファールに逃げる場面が、他の強豪校と比べ極端に少ないように感じられる。現チームに限らず、これは歴代のチームに共通する。

 

 なまじ好打者を擁するため、一打席で仕留める自信があるのかもしれない。ただ相手投手のレベルや試合の状況によっては、無理にヒットを狙わず、球数を放らせるという打席もあって良いと思う。

 

 今のままでは、勿体ない。もう少し粘っこい攻撃ができるようになれば、夏の甲子園大会でも上位を狙えるのに……と、いつも歯がゆく思っている。

 

 これで沖尚は、三年連続で県予選敗退となった。彼らにしてみれば、力を出し切れなかったという思いだろう。

 

 新チームの練習は、是非「外角の変化球をファールにする」練習を取り入れて欲しい。繰り返すが、必ずしもきれいに捉える必要はない。

 

 一本のクリーンヒットよりも、粘って粘って四球という方が、投手に与えるダメージは大きい。沖尚に限らず、強打と称されながら肝心の試合で点が取れないチームは、状況に応じてバッティングの形を変えるということも、一つの手ではないかと思う。