南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

沖縄県大会、準決勝・決勝の展望

【第一試合】興南糸満

 準々決勝における糸満の沖尚撃破は、今大会のサプライズの一つだった。強打者揃いの相手に投手戦へと持ち込み、12とリードを許しても崩れることなく、足を絡めて2点を奪い取った。個人能力で上回るチームと対する際の、まさにお手本のような戦いぶりである。

 ただ、準決勝で対戦する興南は、沖尚とは特徴が違う。

 今年の沖尚は、やや攻撃に偏ったチームだった。そのためか、ロースコアの展開に持ち込まれると、意外に脆さを露呈してしまった(秋季大会三回戦はコザに23、春季九州大会は秀学館に13といずれも敗れている)。

 一方の興南は、ロースコアの展開に強い。逆に言えば、4点以上を奪われると彼らのペースではなくなる(秋季沖縄県大会決勝で美来工科に14、秋季九州大会一回戦で大分商業に27、春季沖縄県大会の準決勝で沖尚に35、三位決定戦で美来工科に1017で敗戦)。

 準決勝、興南の先発は川満大翔が予想される。今大会の読谷戦、春季大会の沖尚戦を見る限り、彼は時折球が高めに浮く傾向がある。その二試合では、高めの球を狙われ連打を浴びる場面があった。

 糸満も、同様にして畳みかけたい。できれば一イニングで2,3点一気に奪えれば、試合を優位に進めることができる。

 ただ興南は、今大会から1年生左腕・宮城大弥が頭角を現しつつある。また春季大会では不調だった上原麗男も、準々決勝の宮古戦では好投した。短いイニングとなれば、川満も初回から全力投球してくるかもしれない。これを高い集中力で攻略できるかが、勝敗のカギを握る。

 投手陣以上に警戒すべきは、興南の打線だろう。

 今大会、大量点こそ奪えていないが、甘く見てはいけない。読谷戦(32)、逆転を許した直後の同点打、八回裏の決勝スクイズ宮古戦(30)、好投手・長嶺の出鼻をくじく序盤の集中打。“ここぞ”という場面では確実に得点を奪ってきている。

 もっとも往年に比べると、やはり破壊力には欠ける。糸満としては、序盤から23点のリードを奪い、逃げ切るという展開が理想的だろう。逆に、興南の投手陣が2点以内に抑えられれば、彼らに分があると見る。

【第二試合】美来工科八重山農林

 八重山農林の快進撃は、今大会における最大のサプライズといって良いだろう。とりわけ、八重山(一昨年の秋季県大会優勝校)、浦添商業(夏の甲子園大会四度出場)という実績あるチームを破ったことは、その活躍が決してフロックではないことを証明している。

 ただ、準決勝はさすがに苦戦を強いられるだろう。

 それだけ美来工科のチームとしての完成度は、勝ち残った4チームの中でも際立っている。ここまでの四試合、いずれも310点を奪って快勝しており、安定した戦いぶりだ。

 特に打線は、間違いなく全国レベルだと思う。具志川商業戦(83)を観戦したが、各打者がセンターから逆方向へ鋭い打球を弾き返していた。これは単にパワーだけでなく、確かなバッティング技術が備わっている証である。

 投手陣は、主戦・山内慧が安定した投球を続けている。登板した試合では、すべて1失点以内に抑えている。準々決勝の宜野座戦(31)では、九回裏に1死二・三塁と一打同点のピンチを招いたが、後続を連続三振に仕留めた。苦しい場面でも、崩れないタフさを見せられたことは、今後の戦いに向けても大きい。

 八重山農林に勝機があるとしたら、2点差以内で終盤を迎え、山内の疲労に付け込むことができた場合だろう。宜野座戦も、終盤得点圏に走者を背負う場面があった。ここであと一本出れば——そういう状況を作ることができるかどうか。

 逆に言えば、山内にはそういう場面を作られても、少なくとも「タイムリーヒットは許さない」投球を身に付けて欲しい。

 一試合で、百球以上投げることになる。中には失投したり、相手の技術が上回ったりして、打たれることも当然ある。しかし、“ここで一本打たれたら負ける”……そういう場面で抑えられる投手になれるか。それが、全国で勝てる投手の第一条件である。

 個人的には、シード校同士の決勝を見たい。

 興南は、秋季決勝・春季三位決定戦と、立て続けに美来工科に敗れている。リベンジしたい気持ちも強いだろう。1年生が加わり、戦力的には春までと違う——1点勝負を勝ち切れるチームになってきた。

 一方、美来工科にとって、興南はやりにくい相手だろう。

 何せ、二度勝っている。しかも難しいのが、秋・春ともに、九州大会出場を決めた後だった。もし決勝での対戦が実現すれば、初めてお互い負けられない状況で当たることになる。その時、先勝している方がプレッシャーを受けるかもしれない。

 ただ、そのプレッシャーを跳ねのけることができれば、美来工科はチームとして一皮剥けることになるだろうと思う。

<私的・勝敗予想>

準決勝  興南 32 糸満    美来工科 52 八重山農林

 決勝  美来工科 31 興南