南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

二匹目のドジョウはいなかった――鹿島らしくない、愚かな失策

 他のクラブなら、笑って眺めていただろう。

 

――何が“勝ち点では1位”だ、何が“(最終節は)本当は1-0の勝ち”だ。肝心なラスト2試合を取りこぼして、ほぼ手中にしていた優勝を逃しておいて。これで何の手を打たないまま新シーズンを迎えたら、低迷するに決まっているじゃないか。

 

 笑えないのは、私の最も好きなクラブだからだ。もはや怒りを通り越して、ただただ悲しい。これがJリーグ最多優勝回数を誇り、他のどこよりも勝つことにシビアに向き合ってきたチーム、あの「鹿島アントラーズ」のやることかよ!と……

 

 ここまで15試合を終え、僅か勝ち点18の第11位。ACLでベスト8に勝ち残っていることを差し引いても、この戦績は褒められたものではない。

 

 下馬評では、予想外の事態だろう。だが、私はまったく驚かない。

 

 昨シーズンの終盤から(特にラスト10試合は)、結果だけでなく内容も、まったく“鹿島のサッカー”ができていなかった。点を防げた場面で失点し、今までなら勝てていた展開で落としてしまう。長く首位に立ってはいたが、その試合ぶりを見れば、とても優勝にふさわしいチームとは思えなかった。

 

 この失態から立ち直るには、監督交代が不可欠だった。どうしても現体制でというなら、せめて優秀なヘッドコーチを置くべきだった。

 

 ところが、Jリーグクラブで最も「勝つことにシビア」だったはずの鹿島フロントは、いずれの手段も採らなかった。現状のままでいけると確信した理由があるのか、と僅かな望みもあったが、それは今季開幕直後の数試合で、跡形もなく消し飛んだ。

 

 まったく鹿島らしくない。本当に愚かな、失策である。

 

 リーグ戦に関しては、もう取り返しが利かないほどの勝ち点を落としてしまった。だが、完全に優勝の可能性がなくなったわけではない。

 

 失策は失策と認めて、チーム内外からの批判は覚悟の上で、具体的な手を打って欲しい。今思い付くものを言えば、次の2点である。

 

大岩剛監督を解任する。

 

②国内外問わず、新監督候補を探す。

 

③新監督が決まるまでの間、現コーチ陣から“暫定”監督を選ぶ。

 

 ①、②は説明不要だが、問題は③である。

 

 そもそも昨年末からの体たらくは、鹿島フロントが以前トニーニョ・セレーゾ解任後に石井正忠コーチを内部昇格させ、その結果成績が向上した再現を狙ったことに起因すると私は見ている。事実、石井監督解任後、大岩新体制の下で再びチームは持ち直したが、そう何度も“二匹目のドジョウ”が釣れるわけではない。

 

 監督は、そもそも“クビを切られる”ポジションである。だから、その対価として高額が支払われる。成績が悪くなれば、監督解任はやむを得ないのだが、安易に内部昇格を繰り返せば、あたら貴重な人材を流出させてしまう。

 

 だから、あくまでも“暫定”である。間違っても、選手達の人望があるからと、例えば柳沢敦コーチ辺りを正式な監督に据えてはならない。

 

 こんな素人目にも分かるような判断の誤りを、百戦錬磨の鹿島フロントが犯してしまったことに、驚きを禁じ得ない。繰り返すが、失策は失策と認めて、新たな行動を取らなければ、鹿島は単なる勝ち負け以上の、もっと大きなモノを失うことになるだろう。