- <はじめに>
- 1.両親の死、利き腕の故障……様々な試練を乗り越えた“不屈のサウスポー”
- 2.厳しさと優しさを兼ね備えた“理想的な指導者”
- 3.野球をするのは「最高のボールを投げるため」と言い切る、孤高の天才投手!
- <次回予告>
- 【関連リンク】
※本エントリーは、ちばあきお「キャプテン」「プレイボール」連載時の時系列をまったく無視しております。あらかじめ、ご了承ください。
<はじめに>
みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。
日本のプロ野球、そして海を越えてメジャーリーグでは、オールスター戦が盛り上がっていますね。それにあやかって……というわけでもないのですが、この講座でもちょっとお祭り的な企画をやってみたいと思います。
というわけで、今回のテーマは……
「イガラシくんが注目する、他作品のキャラクターたち【前編】」
(注:筆者自身、それほど多くの野球を題材にした作品を知っているわけではないので、選に偏りもあるかと思いますが、ご容赦ください。)
1.両親の死、利き腕の故障……様々な試練を乗り越えた“不屈のサウスポー”
一人目は、『MAJOR』(満田拓也作)の主人公・茂野(本田)吾郎です。
彼の何が凄いかって、その不屈の闘志ですよね。ぼくもケガは繰り返しましたが、さすがに利き腕が使えなくなるほどの重傷は、経験したことがありません。普通なら、その時点で野球を諦めても不思議じゃないですよ。
でもそこで挫けることなく、サウスポーに転向。その上ジャイロボールなんて凄まじい威力の速球を生み出し、強豪・海堂高校と激闘を繰り広げた末、海を渡ってメジャーにも挑戦。
ほんとに……こうして記述するだけでも、改めて凄い男ですよね。人並外れたバイタリティと闘争心、何より逆境に負けない不屈の心がなければ、あのような生き方はできないと思います。
えっ、ぼくと対決したらどうなるかって? 打ち砕いてやるに決まってるじゃありませんか(笑)。彼の生き様は称賛するにしても、打席での勝負は別ですから!
2.厳しさと優しさを兼ね備えた“理想的な指導者”
二人目は、同じく『MAJOR』より、横浜リトル監督の樫本修一です。
作中では厳しさと優しさを兼ね備えた理想的な指導者として描かれていますが、ぼくはとにかく、主人公側のチーム・三船リトルと戦った時の、樫本監督の言葉が、とにかく印象に残ってるんですよ。
まず初回にカーブを多投して大量失点した先発投手には、「なんだあの幼稚なピッチングは。おれは全力で叩きのめせと言ったはずだが」と痛烈な一言。
格下チームに打たれたから、じゃないんです。カーブを捉えられていると分かって、それでも余計なプライドでカーブを多投したからこその叱責。キツイ言い方ですが、きちんと理に適った“指導”です。
ま……ぼくなら、ベンチに引っ込めるだけじゃ済まないでしょうけどね(ボソッ)。
さらに最終回(六回裏)、まさかの同点打を浴びたことを「完全な俺の采配ミスだ。申し訳ない」と、選手達に素直に詫びてましたよね。あれ、カンタンにできることじゃないんですよ。やっぱり自分のメンツとか考えちゃいますから。
またそれに対して、選手達も「いいんですよ、すんだことは」「監督が弱気になってどうするんですか」と、逆に樫本監督を励ましてましたよね。何気ないですけど、日頃の信頼関係が伺えるシーンでした。
そして何より忘れられないのが、敗戦後の帰りのバスのシーンです。
格下と目されていた相手にまさかの敗戦を喫し、ショックでうなだれる選手達に、次の言葉を掛けるんですよ。
ここはもう、ぼくの感想を挟むのも野暮な気がするので、そのまま載せておきます。
―― いい試合だったな。よかったよ。最高のゲームを見せてもらった。
恥じるな、胸をはれ! 今日の悔しさを忘れず、明日からまたがんばろうぜ!!
3.野球をするのは「最高のボールを投げるため」と言い切る、孤高の天才投手!
三人目は、児童小説『バッテリー』(あさのあつこ作)の主人公・原田巧(はらだたくみ)。学年は、ぼくが『キャプテン』に初登場した時と同じ中学一年生です。
ピッチャーとしては、ものすごい才能を持ってます。なにせ真っすぐだけで、強豪野球部への進学が内定している二つ上のスラッガーを、三振に仕留めるほどの実力ですから。
ただまあ、ぼくが言うのもなんですが、けっこうクセのある性格で(笑)。野球部のルールである丸坊主を拒否したり、顧問の先生に「全国制覇の監督にしてやる」とか大口を叩いたり。
いやほんと、ぼくもよく“生意気”だの“血も涙もない”だのって色々言われてきましたが、さすがに彼ほどの自己主張はしたことありませんよ。だってぼく、墨二中野球部に入部した頃、ブツクサ言いながらも、ちゃんと草むしりやバット磨きをしてたでしょう(笑)。
えっ、けっきょく似た者同士だろうって?
ま……それは否定しませんがね(笑)。ただ、原田とぼくとでは、性格は多少似通ってたとしても、決定的にベクトルがちがってるんですよ。
みなさんも知ってのとおり、ぼくは「チームが勝つこと」を最優先に考えます。
一方、この原田は「(自分が)最高のタマを投げること」が大事……というか、それしか考えてないようですね。
もちろん原田とて、負けることはイヤなようですが、彼の場合は「自分が最高のタマを投げさえすれば負けはしない」と思ってるようです。確かにピッチャーが点をやらなければ、負けはないわけですから、その通りなんですが……しかしスゴイ自負ですね。
ただ思えば、あの近藤も原田ほどではないにしても、チームの勝ちより自分の投げたいタマを投げることを優先しがちでしたよね。井口も……あの決勝戦で、点差を広げられるリスクを承知で、最後はぼくとの勝負を選びましたし。
そんな原田達の気持ち……ぼくにはちょっと、理解しがたい部分があります。
ぼくも小中とピッチャーをしてましたけど、極端な話、自分がノーヒットに抑えたとしても、味方のエラーで点を取られて負けたら、やっぱり悔しいですし。試合後にはピッチングのことより、どうして点を取れなかったかを考えちゃうでしょうから。
ただそれは、ぼくが強く望んでピッチャーをしたわけじゃないからかもしれません。ぼくは“ピッチャーもできたから”チームにとって必要な時にピッチャーをしたという感じなので。根っからのピッチャーというわけじゃありませんし。
たぶんこの原田は、ほんとうに“ピッチャーをやるため”に生まれてきたヤツなんでしょうね。それが彼にとって幸せなことなのか、それとも重荷なのかは、それは分かりませんがね。
で……ぼくがこの企画で取り上げた人物は、ほぼ「戦ってみたい」と思う相手なんスけど。この原田巧だけは、同じチームでプレーしてみたいですね。ぼくが上級生になった時の後輩でもいいですし、もっと歳を重ねて指導者になってからの生徒でも面白いかもしれません。
別に彼を指導してみたいとかじゃなく、彼と同じ時間を過ごした時、どんな景色が現れるのか見てみたいんスよ。墨二中や墨高のメンバー達と過ごす時とは、また違う景色が見られそうで。それもまた面白そうじゃありませんか。
<次回予告>
長くなりましたので、今回はここまで! 次回は、高校野球漫画の代名詞ともいえる“あの漫画”や、近年のリアル高校野球漫画の金字塔とも言われる“あの作品”の登場人物まで、バラエティ豊かなキャラクターが登場します。どうぞお楽しみに!
【関連リンク】