南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

イガラシくんの野球講座<第24回「イガラシキャプテンのチーム作りは、正しかったのか!?」> ~ちばあきお『キャプテン』『プレイボール』より~

 

 

f:id:stand16:20190713083954j:plain 

 

<はじめに>

 

 みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。

 本講座は、今回でひとまず最終回としますが、企画者(筆者)はとても気まぐれなので、しれっと再開しているかもしれませんが(苦笑)。

 

 さて。最終回のテーマは、ぼく自身のことです。では、さっそく……

イガラシキャプテンのチーム作りは、正しかったのか!?

 

 これねえ、今でも賛否別れてるんスよね。全国優勝できたから良かったんだとか、いいや結果的に選抜辞退することになったしケガ人も出てしまったんだとか。

 ま……色々言い始めるとキリがないので、結論から言います。

 

 ぼくのチーム作りは、「成功」です。

 

 だってぼく達は、そもそも「全国大会優勝」という目標を立てていたわけですよ。そして、ぼくの指導のやり方にどうこう言う人はいても、ぼくが立てた「全国大会優勝」という目標自体に文句を言う人は、誰もいなかったじゃありませんか。

 

 しかも「全国大会優勝」というのは、ぼくが勝手に言い出したことじゃなく、先代の丸井さんがキャプテンだった頃からの悲願だったわけですよ。

 墨二中野球部の悲願を達成したこと。そのこと自体を非難される謂れはないし、ぼくは今でも誇りに思っています。

 

 ただですね……二つのちがう視点で見てみると、議論の余地はありますよ。

 

 

1.墨二中として“野球部の在り方”をどう考えるか

 

 一つ目は、そもそも墨二中野球部が「全国優勝を目指して良かったのか」という点です。

 

 あの父兄との話し合いで、松尾の母親が「学生の本分は(部活動ではなく)学業だ」と言っていたでしょう。あれ、確かに正しいです(苦笑)。

 

 ちょっと難しい話をしますと――なんであれだけモメたかと言えば、墨二中の“学校の方針”が、はっきりしてなかったからなんです。

 

 例えば青葉や和合なんかだったら、入部の時点で野球漬けの生活になることを、親も本人も覚悟してるでしょう。

 

 でも墨二中は、その辺の方針や体制が中途半端なんですよ。墨二中がそうだとは言いませんけど、よくあるのが「文武両道」とかなんとか。この辺をはっきりさせないから、よく部活動絡みで問題になるわけです。

 

 なので……おそらく校長先生も、ぼくが「全国大会優勝」なんてトンデモナイ目標を立てても、何も言えなかったんじゃありませんか(笑)。

 これが例えば、「部活動は奨励するが、学業に支障があってはならない」とか学校方針に掲げていれば、もっとはっきりぼくらの特訓にノーを突き付けられたし、ぼくらもそれに従わざるを得なかったわけです。

 

 もうぼくは卒業しちゃったんで、何とも言えないんスけど、野球部の在り方は再度議論しなきゃいけないと思いますよ。全国優勝を果たしたおかげで、墨二中は全国区の学校になれたのですが、それをやるには多くの犠牲を払う必要があることも分かったわけですし――ぼくが言えた筋合いはありませんがね(汗)。

 

 ですから墨二中として、いっそ野球部を“学校の看板”として後押ししていくか、それとも学業が本分であるという原点に引き戻すか。そのどっちを選ぶかということになるんじゃないでしょうか。

 

 

2.もっと他に良い方法はなかったのか?

 

 二つ目は……全国優勝したはいいが、もっと他に良い方法はなかったのか?です。

 

 ハイ! これについては、何でも言ってください(汗)。

 ぼくとしては“コレしかない”と思う方法で取り組み、全国優勝という目標を達成することはできましたが、たしかに特訓でケガ人は続出しましたし、野球部以外の学校生活に大いに支障をきたした者もいたでしょうよ。それについては、完全にぼくの責任です。言い訳するつもりはありません!

 

(会場ざわつく)……あれ、なんですその反応は? えっ、ぼくが「あの特訓が間違っていたと認めるとは思わなかった」? いや、べつに間違っていたとは思ってませんよ(笑)。もっといい方法があったんじゃないかと言われれば……そうかもしれないな、と思うだけです。だって、よりよい方法を追求すれは、キリがありませんから。

 

 ただ、ちょっと言い訳……いや(笑)、説明させてください。

 

 ぼくが課した特訓。読者のみなさんには、かなり理不尽に思えたでしょうが……それぞれ理由があったんですよ。

 

 まず至近距離からのノック。

 あれを現役部員はともかく、なぜ一年生にまでさせたのかと随分言われたのですが、ぼくはちゃんと説明したはずですよ――「選抜大会で使える人材を探している」と。

 つまり“今すぐレギュラーになれる人材”を探していたわけで、同じメニューを課すのは当然じゃありませんか。

 

 また至近距離からのノック自体も、ちゃんと意味がありますよ。

 

 読者のみなさんの中には、高校野球ファンの方もいらっしゃるでしょう。甲子園出場校で、打撃がウリのチームの打球、見たことあります? 打ったかと思えば、一瞬でフェンスにぶち当たってたり、ボールが破裂するような音を立てたりするでしょう? あんな打球、やっぱり慣れてないと処理できないですよ。

(※00年の智辯和歌山打線を想像していただければ分かると思います)

 

 次にランニング。よく「野球はそこまで長い距離を走らないから必要ない」という意見を聞きます。ま、ランニングに代わる方法があればいいと思いますが、それさえ必要ないと思う方は、試しに炎天下で草野球でもしてみて下さい。それまで鍛えていれば別ですが、そうでない方は、三打席目辺りで膝が震え出すと思います。

 

 それから、ピッチャーとの距離を縮めてのバッティング。

 あれは今でも、強豪校なんかだと普通に行われている練習です。ま……さすがに三分の一の距離でというのは、やり過ぎだったかもしれませんが(笑)。

 

 あ……それとグラブなしでノックを受けさせるのも、やり過ぎです。そういや最近、硬球のノックを素手で受けさせた高校野球があったそうですね。あれ、フツーに暴力沙汰で訴えられると思いますので、他の指導者のみなさんはやめましょう。

 

 まあ、そういう無意味なキツイだけの練習には、ぼくだって反対です。ただし……キツイ練習を全否定するのは、ちがうと思うんスよ。

 

 よくスポーツで心・技・体と言うでしょう? あれは単なる精神論じゃなく、本当なんですよ。

 

 全国大会での、ぼくらの準々決勝以降の三試合を思い出してみてください。最後までどっちに転ぶか分からない、ギリギリの試合だったでしょう。

 

だからぼくの練習が正しかった、とは言いません。でもの三戦をすべてモノにできたのは、ぼくらに「心・技・体」すべてが備わっていたからということは確かだと思います。

 

 とはいえ……当時のぼくが知らなかっただけで、ほかにチーム強化のもっと良い方法が、探せばあったでしょうね。そういえば、元ノンプロだったという近藤のオヤジさん辺りに聞けばよかったかな。そしたら、ピッチャーの練習がもっと厳しくなったかもしれませんけどね(笑)。

 

 

<終わりに>

 

 さて……全部で24回に及んだぼくの野球講座も、一旦最終回となります。みなさん、少しでも楽しんでいただけたでしょうか。

 では、ぼくは墨高の甲子園初出場に貢献できるように、がんばってきます。次は、みなさんと甲子園で会えることを楽しみにして、しばらくお別れしたいと思います。

 それじゃ、また近いうちに~!!

 

 【関連リンク】

stand16.hatenablog.com