南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

ちばあきお「プレイボール」に“もし”続きがあったら!?―丸井キャプテン編(その3)― ~ 甲子園三季連続出場を目指す墨高ナインの前に、かつての仲間が敵となって立ちふさがる。そし てついに“あの男”の執念が牙をむく!!~

 

【前回まで】

 夏春続けて甲子園大会4強に勝ち残る快挙を達成した墨高ナイン。

 しかし準決勝で怪腕阪井擁する箕輪に主砲イガラシが3三振を喫するなど、ノーヒットノーランという屈辱を味わう結果となった。

 夏の大会へ向けての強化期間が始まっても、なかなかチームはまとまらず。これは従来のように内外野の連係などチームプレーを重視したい丸井キャプテンを中心としたグループと、ノーヒットノーランにショックを受けもっと個々の打撃をアップしたい井口や根岸らを中心としたグループとの対立であった。一方、イガラシは井口や根岸らの主張を認めつつも「正規の時間外にやればいい」と従来の方針からの変更を認めず、チームはバラバラになりつつあった。

 そんな中、容赦なく夏の都大会の初戦は迫ってきて……

 

 

―夏季高校野球東京都大会― ※原作に合わせ東西は分けていません。

 

1回戦 ※不戦勝

2回戦 ※不戦勝

 

 3回戦

                 R H E

     墨高 5230116  18 20 2

   大島工業 0100000  1 4 3

【墨】松川、片瀬-根岸  【大】※※、※※-※※

本塁打>根岸2、井口、高橋

(戦評)

 初回から墨高打線が爆発。井口、根岸の連続アーチなどで一挙5点を奪うと、その後も長打攻勢で大島工業を寄せ付けず、大量18点を奪う圧勝劇を見せた。しかし、前チームに見られたケースバッティングや小技、走塁は影を潜め、また守備でもエラー絡みで余計な1点を与えるなど、全体的に粗さも目に付いた。

 

4回戦

                    R H E

      城東 000000000  0 1 2

      墨高 16000000×  7 15 0

【墨】松川-根岸  【大】大橋、※※-※※

本塁打>丸井

(戦評)

 地力で勝る墨高は、初回に1点を先制すると、二回には丸井の2ランホームランなどで一挙6点を追加。このままコールド勝ちかと思われた。ところがその後、墨高は再三チャンスを迎えるも、勝ちを意識してか力んだり大振りになったりするバッティングが目立ち、どうしても追加点が奪えない。試合は松川の力投で付け入る隙を与えず完勝に終わったものの、次戦へ不安を残す内容となった。

 

 5回戦

                   R H E

     聖陵 000000000  0 1 0

     墨高 00000022×   4 8 0

【聖】※※-※※  【墨】イガラシ-根岸

本塁打>イガラシ

(戦評)

 シード校同士の対決となったが、墨高の先発イガラシが聖陵打線を内野安打1本に抑える完璧な投球を披露。しかし打線は相変わらずつながりが悪く、中盤まで再三得点圏に走者を進めながら無得点に終わる。それでも七回裏、イガラシが先制2ランを放ちようやく均衡を破ると、続く八回裏にも2点を追加。終わってみれば4-0の快勝を収めが、初戦に続き打線に消化不良感が残った。

 

 準々決勝

                      R H E

     谷原 100210000000  4 10 0

     墨高 300100000001× 5 7 0

【墨】井口、イガラシ-根岸  【谷】野田-※※

本塁打>井口

(戦評)

 前年夏、東京球史に残る死闘を演じた両者の対戦は、再び緊迫した激闘の展開となった。

 初回に谷原が1点先制するも、その裏井口が3ランを放ちすぐさま逆転。しかし谷原も四回表の集中打で同点。その後は両チームとも1点ずつ取り合うと、墨高はリリーフ。ここから試合は膠着状態に陥る。迎えた十二回裏、墨高は丸井の三塁打を皮切りに続く二番島田の犠牲フライにより、昨年に続く熱戦に終止符を打った。しかし井口の乱調、イガラシのロングリリーフによる疲労の蓄積が心配され、またも今後に不安を残す結果となった。

 

 

 準決勝

                     R H E

    明善 200000000000  2 5 1

    墨高 000000002001× 3 6 0

【墨】松川、イガラシ-根岸  【明】近藤-小室

本塁打>近藤、丸井

(戦評)

 墨高は丸井、島田、加藤、イガラシ、久保。明善は小室、近藤、曽根、佐藤。さながら墨二中の同窓会対決となった一戦は、双方の意地と意地がぶつかり合う激闘となった。

 初回、明善は近藤がいきなり先制2ランを放つと、投げては元々の快速球に加えカーブ、フォークまで交えた投球で墨高打線に付け入る隙を与えず。警戒するイガラシと井口は徹底して勝負を避け、チャンスさえ作らせない。

 だが九回裏、今度は丸井が先輩の意地を見せつける同点2ランを放ち、試合を振り出しに戻す。そして十三回裏、近藤が無死満塁からサヨナラ押し出し。ついに力尽きた。

 しかし、勝った墨高も無傷では済まなかった。五回から松川をリリーフしたイガラシが明善打線をノーヒットに抑える快投。しかし、前日からの連騰続きで疲労はピークに達し、決勝戦では登板を回避せざるを得なくなったのである。

 

 

決勝

                 R H E

   東実 510000000  6 10 0

   墨高 000001202  5 12 0

【墨】井口―根岸  【東】佐野-村野

本塁打>佐野

(戦評)

 ここに至るまで、井口攻略に照準を合わせてきた東実の策略が的中する。

 初回、先頭打者に得意のシュートをライトオーバーの二塁打にされると、動揺した井口は続く打者の何でもない送りバントファンブル、三番打者には死球を与えいきなり無死満塁。ここから佐野、村野、倉田に3連打を浴びるなど一挙5失点。続く二回には佐野にホームランを浴び、好投手佐野相手に致命的な6点ビハインドを背負う。

 しかし、井口はここから根岸と打ち合わせ配球を変え、以後は東実打線に追加点を許さない。

 一方、佐野は大量リードをもらいながら、得点圏でのイガラシとは勝負を避けるなど慎重な投球を見せる。だが、今大会初めて劣勢に立たされたことで、ようやく墨高本来の硬軟織り交ぜた野球が復活。六回に1点を返したのを皮切りに、じりじりと追い上げる。

 そして九回裏。1点差に迫りなお一死満塁と佐野を攻め立て、迎える打者はイガラシ。初球を捉えた打球は二遊間を襲うが、と東実セカンドのスーパープレーに好捕されダブルプレー。あと一歩のところで、三季連続の甲子園出場を逃した。

 だがこの敗戦により、チームをさらに強くする方向性が見つかる。そして谷口、丸井の代で達成されなかった甲子園優勝の夢は、やはりこの男・イガラシに託されたのであった。

 

<夏季高校野球東京都大会>

 1回戦 不戦勝

 2回戦 不戦勝

 3回戦 墨高 18-1 大島工業 ※七回コールド

 4回戦 墨高  7-0 城東

 5回戦 墨高  4-0 聖陵

準々決勝 墨高  5-4 谷原  ※延長十二回

 準決勝 墨高  2-3 明善  ※延長十三回

  決勝 墨高  5-6 東実