南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

未だ底は見えず——アルビレックス新潟2-4鹿島アントラーズ<戦評>

 もちろん褒められた内容ではない。

 

 選手達に慢心があった、とも思わない。ただ、相手は最下位。しかも、厳しいと言われていた八月を終え、ようやく暑さも和らぎ始めた。また、昌子源植田直通は、重圧の掛かる代表戦の後で心身ともに見えない疲労が蓄積していたかもしれない。

 

 そうした諸々の要素が、僅かな隙を生んだのだろう。そこを突かれる格好となった。前半立ち上がりと終了間際の、どこかエアポケットに入ったような失点。相手からすれば、あまりにも見事に決まったカウンター2発だった。

 

 上位チームが、やや力の落ちると対戦した時に起こりがちではある。エンジンの掛かり切らない試合序盤、相手の後先考えない攻勢に受けに回ってしまい、あっさりゴールを割られてしまう。

 

 鹿島アントラーズは、特にこの傾向が見られる。序盤は相手をじっくり観察し、攻略ポイントを見出していくのが彼らの強みではあるのが、相手の特徴を把握する前に先制パンチを浴びてしまうという落とし穴もある。

 

 例えばブラジルなどは、格下と戦う際には立ち上がりから猛攻を仕掛け、相手の戦意を喪失させてしまう——という伝統があると言われている。この方法が必ずしもベストだとは思わないが、鹿島は下位チームに苦戦を強いられることが少なくないから、もう少し格下相手の戦い方も工夫した方が良いかもしれない。

 

 ただ02とされても、あまり負ける気はしなかった。前半は得点こそ挙げられなかったものの、サイドから何度か良い形で崩せていたから、十分点は取れるだろうと。さすがに勝てるどうかは、五分五分だと思ったが。

 

 後半立ち上がりに1点を返せたことで、先の展開をますます楽観することができた。これは十分に、逆転できると。

 

 ギアを上げた鹿島の攻勢を凌げるのなら、新潟はこんな順位にはいない。1点リードを残り40分以上も保ち続けるのは、今の彼らには荷が重すぎる。必ずどこかで破られるだろうと——事実、その通りの展開になった。

 

 1点差として以降は、まさに“力の差”を見せ付けたと言って良いだろう。自陣に人数を割き、ゴール前を固める相手の僅かな間隙を突き、いずれも短いパス交換からレアンドロがさらに2得点。終盤には、金崎夢生がPKを決めてダメ押し。

 

 できれば、さほどエネルギーを使うことなく20くらいで勝てたら理想的だった。前半の2失点は、チームとして反省する必要があるだろう。

 

 それでも「強くなったな」と感じた。以前の鹿島なら、このような形でビハインドを負うと、最後までずるずるいってしまうケースが少なくなかったのだ。それが最近は、先制されても「早い時間に追い付けば何とかなるだろう」と思える。実際、今季の逆転勝ちはこれで4度目だ。

 

 どんな展開になっても、最後は勝つ——これこそ強者の証だろう。

 

 もちろん課題はある。前述したように、相手に合わせすぎて受け身になりがちな戦い方は、少し修正した方が良いだろう。またセンターバックサイドバックともにDF陣の層の薄さは、やはり気になる。

 

 ただ、同時に思うのだ。課題がありながら、それでもこのチームは勝ち続けている。これはつまり、まだまだ強くなれる余地があるということではないか。

 

 残り8試合。いや、天皇杯もある。ただ、昨年に続く連覇ということ以上に、鹿島がどう変わっていくのかが見たい。結果だけでなく、どこまで伸びていけるのか。

 

 このチーム、未だ底が見えない。何だかとてもワクワクしてしまう。