南風の記憶

沖縄の高校野球応援! また野球小説<「続・プレイボール」ーちばあきお原作「プレイボール」もう一つの続編」連載中。俳句関連、その他社会問題についても書いています。

AFCに問いたいアジアカップ「開催時期」の是非と、日本代表の分水嶺となりそうな”ここからの五ヶ月弱”――2019年アジアカップ・UAE大会総括

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 日本代表について触れる前に、一つ言っておきたい――AFC(アジアサッカー連盟)は、なぜアジアカップを一月に開催するのか。

 

 W杯後、半年しか経っていない。日本や韓国を始めとするアジアの強豪国は、新チームが発足して間もない。チーム作りは“これから”という段階である。さらには、国内外のリーグ戦も並行して戦っている。例年になく疲労が蓄積していたはずだ。

 

 案の定、W杯出場4ヶ国のうち、韓国とオーストラリアが早期敗退。日本も決勝までは辿り着いたものの、“ベストパフォーマンス”を発揮できたのは準決勝のイラン戦だけで、あとは低調な出来だった。影響を受けなかったのは、同じ中東のイランだけ。

 

 こういう条件下で「勝った」からといって、何の意味があるのか。

 

 アジアカップで日本や他のアジア列強が苦戦を強いられたり、思わぬ敗戦を喫したりする度、中東諸国を始めとする“アジア脅威論”が言われる。

 

 最近の大会であれば、UAEやサウジアラビア。今回はカタール。一昔前は、(国内の金満クラブが有名選手を次々に獲得していた)中国も当てはまる。

 

 それで……上記の国が、本当に日本や韓国の“ライバル”と呼べるほど、本当にシビアに実力が問われるW杯のアジア最終予選や本大会において、力を発揮してきたか。

 

 中国は? 「強くなる」と言われ続けて十年以上経つが、一向にその気配はない。それどころか、一時無双状態だったACLでさえ勝てなくなってきているではないか。

 

 UAEは? 当時チーム作りが上手く嵌っていなかった日本を最終予選の初戦で下したものの、結局は本大会まで辿り着くことはできなかった。

 

 サウジアラビアは? 結局、南アフリカW杯の本大会には出場していない。続くロシアW杯の最終予選では、オーストラリアの不振に助けられ久々に突破を果たしたものの、本大会の開幕戦ではロシアに大敗するなどグループリーグ敗退。

 

 カタールは? 今回はW杯開催国となり予選免除だから、検証しようがない。

 

 結局、何だかんだいって“世界レベル”で戦えるのは、日本や韓国ら「いつもの国」だけ……という結論に至るのは、もう毎度のことだ。

 

 AFCに言いたいのは、なるべく「どの国もベストに近いパフォーマンスが発揮できる」時期に、大会を開催すべきではないかということ。

 

 個人的には、五輪後の10月頃にして欲しい。そうすれば、アジアカップにてU-23世代とA代表との“融合”が図れる。

 

 U-23世代の選手達にとっては「五輪で活躍してA代表へ」というモチベーションになるし、A代表の選手達にとっては「アジアカップで結果を残さないと若手に取って代わられる」という危機感を持つことができる――そう、あのフィリップ・トルシエ時代のように。

 

 いずれにせよ、この一月という時期は、あまりにもフェアでない。この条件下で“低調期”の日本や韓国を倒したところで、さして意味があるとは思えない。それどころか、「自分達は強くなった」とカン違いしかねない。

 

――前置きが長くなり過ぎた。ここからが本題。

 

 それでも、負けたことは残念。非常に残念……なのだが、結果は結果として受け止めた上で、先へ進んでいくしかないのだろうと思う。

 

 大事なのは、まさに“ここから”なのだ。

 

 サッカー日本代表の最終目標は、「W杯本大会で勝つこと」である。しかも現体制は、本大会で「ベスト8以上に入る」という、史上最も難易度の高いミッションを課されることとなる。

 

 このように捉えるのなら――日本代表のチーム強化において、特に重要と思われるのは、次の一点に尽きる。

 

 すなわち、チームとしての「“ピーク”を4年後に持っていくこと」である。

 

 個人的に、ザッケローニ体制下の2010~11年夏頃までの日本代表は、“史上最強”といっても過言でないほどのチカラを有していたと思っている。

 

 本田圭佑が怪我をする前で最も調子がよく、香川真司に最も“勢い”があった頃だ。ホームでの親善試合とはいえ、アルゼンチンから金星を挙げ、ライバル・韓国をも3-0と一蹴した。

 

 もしも、あの時期にW杯本大会が開催されていたら……と、今でも夢想してしまう。

 

 が……結果は、ご周知の通り。あのチームは、“ピーク”が早すぎた。だから、翌12年以降は徐々に下降していき、本大会時には完全にチームとしての旬を過ぎてしまっていた。

 

 あくまでも、次は“2022年カタール大会”開催時の日本代表が、現体制下で「最も調子の良い時期」でなければならない。まして、本大会まで3年以上もある“今の”チームが最高のパフォーマンスを発揮していたら、かえって先行きが怪しい。

 

 したがって慰めでもなんでもなく、今回のアジアカップで優勝を逃したことは、(残念ではあるものの)チーム強化の観点から言えば、そう悪いことではない。

 

 課題はハッキリと分かった。森保一監督も、ある意味(当分批判に晒されるだろうが)、仕事がやり易い状況になったのではないか。

 

 具体的には、“守備陣の入れ替え”である。

 

 露骨な言い方をすれば――吉田麻也権田修一は、今回である程度見限るべきだと思う。カタール戦の3失点だけでなく、イラン戦も無失点に抑えたとはいえ、二人のコンビネーションのミスから“あわや”の場面を作られていた。

 

 特に吉田は、今大会“たまたま”調子が悪かったわけではない。信じられないようなポカがあるだけでなく、シュートへの寄せが甘い。カタール戦の1点目と2点目などは、彼が「シュートを打ってくるかも」と想像して、もっと厳しく体を寄せていれば、防げた。

 

 結果論で言っているのではない。思い出して欲しい。初戦のトルクメニスタン戦も、同じようにほぼフリーの状態でミドルシュートを打たせてしまい、先取点を奪われたばかりだ。いや、もっと以前から、吉田は「守備が軽い」と指摘されてもいる。

 

 何年レギュラーを張っても改善されない。まして、こんな短期間で同じことを繰り返してしまうのだ。これはもう……彼の“能力の問題”だと言わざるを得ない。

 

 権田にしても、以前より「ミドルシュート」での失点が目立つ。シュートへの予測が足りないのだと思う。かといって、決定的なシーンでさほど好セーブを連発して、チームを救っているわけでもない――権田に限らず、日本代表の試合ではもう何年も、GKの“印象的なセービング”が見られない。

 

 今回のアジアカップにおいて、森保監督がこの二人をほぼ固定で起用したこと自体は、理解はできる。

 

 こんな大舞台で、経験の浅い選手を抜擢することのリスクは確かにある。富安健洋が定着しただけでも、大成功だろう。せめてCB二人のうち一人は、経験豊富な選手を置いておきたいと思うのが普通だ。昌子源の怪我と海外移籍がなければ、また違ったはずだが。

 

 しかし……ここからは違うはずだ。

 

 吉田や権田を「今すぐ日本代表から追い出せ」と言いたいのではない。ただ少なくとも、今回二人は“結果”を出せなかった。であれば、しばらくベンチに置いて、「自分に何が足りないのか」に気付かせる機会とさせれば良い。

 

 あるいは――何なら、次の南米選手権を、二人の“最終試験”の場としても良いと思う。ここで挽回すれば、まだしばらくチャンスを与えるも良し。もし大量失点を喫するようなことがあれば……その時こそ、躊躇なくレギュラーから外すべきだ。

 

 繰り返すが、まさに“ここから”である。とりわけ南米選手権までの五ヶ月弱が、今後の日本代表における分水嶺になるだろうと、私は予想する。